遊園地で迷子!? 3
何度か勘違いをされながらもいろいろと遊んだ。コーヒーカップ(ティーカップ)にメリーゴーランド、ボートと、遊園地にあるもの大体の物に乗った。途中でお昼もとり、もうすぐ夜。意外と帝さんとは会わなかった。いったい、帝さんはどこを探しているんだか。
仕方がないので最後に再会出来たら乗ろうと思っていた観覧車の前で待つことにした。閉園近くまでは居ようと思うけど、それじゃ、ただの変人だよね。うーん。そうだな。
あ、そういえば携帯見ていなかったな……。電源切っていたんだっけ。つけるか。
連絡手段はあるにしても本当は見つかるまで使いたくはなかったんだけど仕方ないよね。
電源を入れる。しばらくして画面が映しだされる。着信数七十二件。メールの数、十通。うーん。これを見る限り、連絡していたんだな……まずはメールのほうを確認する。お兄ちゃんは電話しかしないからね、それを我慢してまずはメール。……帝さんからは無いか。その代わり知らないアドレスから二件、メールが届いている。一つは件名に夏恋と書かれていた。夏恋さんから。もう一つは帝先輩の同僚です、となっている。これって、いつも公務員向かないなって思っていた人からかな? 帝さん、人の携帯のメールアドレス教えないで欲しいな。
と、そこに新しく着信が入った。帝さんからだった。
出るべきかな……うーん。どうしよう……。
『もしもし、道瑠ちゃん!』
出るとなんかスゴイな、勢いよく電話の応対をされたのですが、これはどうでたらいいものでしょうか。
話したくないな。うーん。でも、話さないとな。
『道瑠ちゃんだよね?』
すごい不安がっているな。
「はい。そうです」
『よ、よかった。道瑠ちゃん、どこに居るの?』
テンパっているのかな? 嬉しそうな声のトーンではないよね。
「遊園地の中に居ますよ。帝さんはどこですか?」
『俺も何だけど……』
そりゃ、彼女を置いて外に出るとかありえませんよね。私達は追いかけっこをしているんですから。
『ねぇ、どこに居るの?』
それ聞いちゃうのですか。でも、これは言いたくないな。そうだな、それじゃ、こうしよう。
「ヒント。恋人同士が夜景を見るため乗るものまえです。その時は、お隣に乗るのがマナーなんですよ」
私は絶対に帝さんには隣に乗ってほしくありませんけど。
『え? それだけ?』
それだけって、十分なヒントじゃないですか! ヤダもう。よし、がんばろう。というより、それだけって、これでも分かんないのですか?
「かなりヒントをあげたと思いますが? そこの所、どう思います?」
「じゅ、十分です」
前方から声が聞えるほうが早かった。遅れて携帯の通話口からさっき言われた言葉が聞こえてくる。
「遅いですよ。私が何度、従業員と間違われたとことか」
「ごめんなさい」
申し訳なさそうに謝る。本当に貴方は私の彼氏何ですかって言いたいけど言わない。
「リアリストのアリスを不思議の国に連れて行くのが擬人化うさぎの仕事でしょう! アリスを見つけるのに苦労をしないの!」
勝手な押し付けだけど、これくらいは言わせて欲しいの。早く見つけなさいよ! もう、お兄ちゃんに料理してあげる時間がないじゃないですか。でも、私は心優しい彼女役なのでこれから一つだけ貴方と一緒に乗り物に乗ってあげます。そう、言うつもりだった。
「それじゃ、もう遅いし帰ろうか」
はい? 意気地なしですか貴方は! 本当にダメダメですね! もう。それなら、私はどうしたらいいんですか。
「……帝さんは、私のことなんだと思っているんですか!」
「彼女」
即答できるじゃないですか。だったら、普通に観覧車ぐらい一緒に乗ってくれてもいいでしょ!
「帝さん、私がどうしてココで待っていたか分かります?」
わからないんなら彼氏でも彼女でもなんでもいいんじゃない。ここで帰ったらただたんに妹じゃないですか!
「え、もしかして……一緒に乗りたい……とか……え!」
普通に戸惑われても困ります。なんで、戸惑うのですか! 困るんですか、私と乗ると。
「いあ、その……えっとまだ、その……」
うるさいな。私達は恋人同士でしょ!
「その、お隣同士っていうのは……」
そんなのどうでもいいから、一緒に乗りましょう!
「お隣同士座りますか? それとも向かい合って座りたいんですか?」
この選択肢は自分ではかなり無いな、って思うけど帝さんの思考能力の低下を考えて仕方なくです。
「お隣に座らせてください!」
はい。お隣に座りましょう! って、いつもどおりじゃないですか。いつも隣にいるじゃないですか。
「それじゃ、乗りましょう」
一緒に歩いて階段を登る。人もあまりいない。
「……はい」
照れてるって、こんなことで照れるんですか。その、今まで彼女とこういう所に来たことがないっていうウブ感、出さないでくれませんかね……。
「帝さん、今日はありがとうございました。いろいろな人に連絡してくれたんですよね、嬉しいかった」
半分以上は迷惑でしたが。帝さんは驚いているようだ。自分がそのことについて知っていたからだろう。
「ど、どこでそれを?」
「夏恋さんからですよ」
嘘はつかない。でも、帝さんは不思議そうだ。ま、そうだよね。帝さんに何の連絡もなしに夏恋さん、帰ってしまったらしいから。
「そ、そうなんだ」
困った顔。それもまたいいね。私大好きです。おっと、これは思っちゃいけないんだろうけどな。
「道瑠ちゃん、外、綺麗だよ!」
え? 道瑠ちゃん? 最近、デフォでも道瑠って言われていたからなんか新鮮だな。でも、これで妹扱いになったってことなんだよね。
「あ、ちが、道瑠。綺麗だね!」
もう、どっちでもいいけど。でも、ほんとうに綺麗だよね。
「うん。そうだね」
子どもに戻ってそう、答えるのもいいのかもしれない。
観覧車から降りて急いで家に帰りました。
家について本当に心配していたお兄ちゃんに叱られました。
だけど、帝さんは私よりももっと怒られていたので私的には満足です。
いや、お兄ちゃんに長く叱られているんだからこれはむしろそこ、交換して欲しいと想ったほうがいいのでは! うー! お兄ちゃんもっと叱って!




