茶番だったの!
大好きなお兄ちゃん。ずっと道瑠のことを守ってくれるお兄ちゃん。大好きだよ。
と思いながらも私はそのお兄ちゃんの腹を蹴る。あぁ、丁度いい位置にあったから。
「何しているの? すっごく心配したんだから」
あはは。お兄ちゃんもグルだったってことだろ。お兄ちゃんのバカ、ひとでなし! でも、あまり痛いといけないから軽くだよ、軽く。お兄ちゃんに傷なんて一切付けないし。ちょっと触る程度に蹴っただけだから。お兄ちゃんにそんなひどいこと出来ないもの。
「まったく、道瑠ったら心配性なんだかっ」
あら、帝さんそんな所に居たんですね。気づきませんでした。なんて死んでも言わないけど全て言い切る前に膝蹴りを顔面に食らわせる。手加減なんていりませんよね。私、得意なんです。足技。お兄ちゃんに教わったので。
「いたっ」
と、痛かったですか? そうですよ。痛いようにしているんですから痛いに決まっているじゃないですか。今度はかかと落とし。のようなもの。自己流だから仕方ないね。
「みち」
最後には、のした帝さんの腹に体重を全てかけて片足をのせる。まぁ、喋れないよね。
「やめてあげなよ、道瑠」
お兄ちゃん……どうしよう。お兄ちゃんが言っているしどいてあげても良いけど、癪に障るな。
「でも、お兄ちゃん……」
睨まなくても……分かった。ごめんなさいお兄ちゃん!
「痛い。そんなに怒らなくても」
「あら、ごめんなさいね。帝さん」
ちょっと意地悪。まぁ、もともと帝なんって呼びたくなかったし。しょうが無いよね。
「帝さんは無いでしょ」
「いえ、帝さん。私にとったらいつまでもアナタは帝さんです」
そうだ。この人は私に興味をもつだけ。それ以上にはならないだろうから、これでいいんだよ。
「それじゃ、俺が本気で落とさないとダメってことか」
「私はアナタに恋愛感情は一切、湧くことは無いですよ」
それが正論で本当の私。これからは帝さんは私だけを見ていればいい。お兄ちゃんだってこれで幸せになれるから。
でも、たまにはこっちを向いて頭をなでてくれればいいな、なんておもっているよ。
「ねぇ、帝くんたちはどうやってここに来たの?」
突然、すず先輩が帝に問う。帝は考えて「タクシーで」と答えた。
「それって、ここから帰ること一切考えてないよね」
不思議そうに首を帝さんはかしげる。私は免許を持って入るけど車は持っていない。それは、帝さんも覚えているはずだ。
「そうだな。帝だけ置いて帰ろうか」
おお、それはナイスなお話ではないですか。私はそれに賛成いたしますよ!
「そうですね、帝さんは置いて帰りましょうか。
ね、お兄ちゃん」
お兄ちゃんは困ったように笑いながらとくに何も答えなかった。沈黙は肯定とみなす! よし、お兄ちゃん。帝さんを置いて帰りましょう。
帝さんがなにか言い出す前に三人は車に乗って帰った。ごめんね、帝さん。でも、お兄ちゃんのことを心配させておいてこれくらいですんで良かったと思ってね。




