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最低な人

 あの男は家の隣に引っ越してきました。今から十八年くらい前の話じゃないでしょうか。たしかそうでした。それは、前にすず先輩に伝えていましたよね。

「ミルちゃんはその時はどう思ったの?」

「私はお兄ちゃんが増えたって思いましたね。まぁ、人見知りだったのでその当時から反抗心はありましたけどね」

 お兄ちゃんと仲良くする奴は敵でしたので。あれ、人見知りじゃない? ……そこはどうでもいいか。とりあえずアイツはお兄ちゃんと同い年って言うだけで敵でしたけどね。

 お兄ちゃんと一緒にできるなんて。

「それで、いつからアイツの本性を?」

「そうですね。二年も無かったじゃないでしょうか。小学校の時から色気づいているのがお兄ちゃんでしたので」

 兄は本当に持てましたから。誰にも優しくて顔もそれなり。こんないい人はいませんからね。

「お兄ちゃんは、学校の外で彼女と付き合っていたようですが私は全員知っていました。お兄ちゃんのことならなんでも知っていますからね」

「何ていうかお兄ちゃんにベットリだったのね」

 そうですね。いえ、妹としては普通だと思うのですが。まぁ、それを見ていたのは私だけじゃないんですよね。

「そこまでベッタリではないです。どっちかっていうと帝のほうが一緒にいる時間が長ったんじゃないかな」

 うーん? そうだよね。よく考えたらあの人は私よりも兄のことを知っていることが多い。

 気に入っていたから当たり前か。あの人は気に入った人のすべてを奪うんだからな。

「ミルちゃんのお兄ちゃんは人気者ね」

「素敵なお兄ちゃんでしたから。当たり前ですよ。でも、帝さんは最悪な人です。お気に入りを見つけたらその人を絶望に追いやるんです」

 お兄ちゃんのことだってそうだから。だから、私が今度は絶望する番なんだ。

「帝さんは自分が気に入った人が大好きな人を奪うんです。私だったらお兄ちゃん。帝さんの彼女だったのならわかるともうのですが、大切な人が奪われたりしていなかったですか?」

 まぁ。それでも気づきにくいものかもしれない。

「私が大切なモノは自分だけだよ。まぁ、ちょくちょく私のお気に入りのブランドバックとかなくなっていたけど。まさかね」

 すず先輩は物を盗まれていたか。あの人だったら物でも何でも盗んでいくよね。壊れずにいるものは大嫌いな人だから。

 お兄ちゃんは強いから絶対にくじけないだろうけど。だから、何度も何度も繰り返してきたんだよね。

「それで生活に支障がきたしたと思うならそれは二ノ宮帝のしたことですよ。私は何度もお兄ちゃんとの時間を二人だけの時間を奪われましたから。

 でも、本気を出したから今は本当に兄を奪われたんですよね。完璧に油断していました」

 携帯を握る手に力が入る。

 現在は携帯に送られてきた場所にすず先輩と一緒に来た。なんですず先輩はこんな場所知っていたんだろう。

 車も出してくれた。ここ、バスも走ってないからすず先輩が一緒にいてくれたのは本当によかった。

「ここね、私がアイツと光輝くんを刺しちゃった場所なんだ」

 え? すず先輩、光輝くんって言いました? すず先輩は知っていたの? いや、それよりも、すず先輩は私の敵だったんだ。

「隠すつもりはないよ。

 でも、今はアイツからミルちゃんのお兄ちゃんを助けるほうが先だから」

 すず先輩、私は何を信じたらいいのかわからなくなりました……。

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