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私が傍観者な妹になった理由~番外編  作者: 夏澄
IF/本編の設定無視作品
13/16

委員長&冬吾

お気に入り件数7000件突破記念その7。

ネタ提供:ゆなさん

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①もし委員長と冬吾が二人で会話をしたら


[場所]


 顧問に呼びつけられて言われたのは、とある先輩に同行して道場を見せてやってくれというものだった。


「ごめんね。ちょっとの時間だけだから」


 声だけがこちらに向けて放たれる。

 道場内にカメラを向ける先輩の土屋 冬吾は意識はとうに道場へと向けられていた。

 まずは外周からファインダーを覗き撮っていく。何が楽しいのか、口の端は始終にんまりと持ち上がっていた。

「何故、道場の写真を?」

「うん、ちょっと面白いかなって」

 その言葉だけでは何がどう面白いのか理解できない。

「今ちょっと被写体の研究中でさ。人の体温とか息遣いを持っている建物ってのを取り上げてみようかなって」

「はあ……」

 やはり理解ができない。芸術というやつなのだろうか。作者の思い描くものは時として鑑賞者に正しい理解を求めないことがある。


 一通り外周を周って道場の入り口に着く。

 驚くことに土屋はきちんと一礼して道場内に足を踏み入れた。

 長くしている経験者などは道場を神聖なものとして捉えるようしっかり教育されているものだが、初心者などは道場に入るときの一礼などしばしば頭から抜けているものだ。

 剣道未経験者ともなると、一礼をするということすら頭に浮かびはしないだろう。

 驚く気配に気づいて土屋が振り返る。

「これでも小学校卒業までは剣道をやってたんだ」

 あぁ、だからか。小学校などは特に技能というよりは礼儀に重きをおくところも多い。

 私設の道場ならなおさらだ。代々師範として教えているのは礼儀に厳しい高齢の者である場合が多い。

「スポ少で?」

 それとも道場に通っていたのだろうか。

「俺は道場。そりゃあ厳しかったよ」

 それでうんざりしてやめちゃったんだけどね、と土屋はこぼした。


 礼儀作法の厳しさのために小中学校で剣道を止めていく者はけして少ない数ではない。

親に強制でやらされていた者などは、自由を与えられた途端に開放感から止めるという選択肢を取ることが多いのだ。土屋もそのパターンなのだろうか。――もったいないな。

 土屋は上背はあるが、ひょろ長いわけではない。筋肉のつきも良さそうだし、小学生時代でやめてしまったのは素直にもったいないと感じた。


「経験したことのある場所だからこそ、撮り易いかと思ってここを選んだんだ」


 次々とシャッターを切っていく冬吾の顔は昔を懐かしんでいるように見えた。

 土屋は道場全体の俯瞰に体育の剣道選択者用に置かれている防具類、打ち込み練習用の人形など様々な場所に焦点を当てて撮っていった。

「ま、こんなもんかな」

 確認する画面に写り込む道場は、普段自分が見ているものとは違う色合いを見せていた。柔らかな光の中で、中心となって写り込む被写体が活き活きと躍動しているように感じる。

 その目にはこんな風に優しげに写っているのか。自分の目には硬質で厳しい世界に映っているというのに……。

 土屋は世間を斜に構えて捉えている印象があったので、物事をこのように捉える視点を持っていることに驚きを覚えた。

「いい写真だと思います」

 感じたままを言うと、冗談めかして「見た目と違って?」と皮肉で返された。

「人は見た目じゃ分からないものでしょう」

 目を見ると、「ははっ、まあそうだけどね」と苦笑いされた。


「やっぱここは俺の居場所じゃないわ。実直さも素直さもとうの昔に置いてきちゃったんだよね。残念なことに」

 道場を出る際に土屋がそうぼやく。笑う顔は彼自身を揶揄していた。

「また剣道を始めたくなったら言ってください。相手になります」

「俺じゃ相手になんないって」

じゃあと手を振る土屋は、それでもまんざらでもない顔を自分に見せてくれた。




冬吾が剣道を続けていたらきっと恐い相手になっただろうな、と委員長は思っている。

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