向かっている理由は
私は社交的な性格ではない。
というか、事なかれ主義だ。だから友人は別として、自分から人に関わっていくようなことはあまりやりたくない。朝感じたとおり、先輩で、今まで話す機会も無くて、何の接点も無かった相手、私の真逆であるフレンドリーな中谷会長に対応するのには、困る。
それでも私が中谷会長に大人しくついていったのは、諦めがあったからだ。
結局、帰るまでに雨が降ってきてしまったし、この強雨の中を傘無しで歩く気にはならないし、中谷会長の気が済むならいいか。と。
そもそも全ての物事にバタフライ効果が働いているというのなら、
今こうして雨宿りに向かっているのは、帰り際に中谷会長に声をかけられたからで。
帰り際に中谷会長に声をかけられたのは、朝出会っていたからで。
朝出会ったのは、私が本を乾かしていたからで。
本を乾かしていたのは、バス内で読んでいた本を落としたからで。
バス内で本を読んでいたのは、家を出るまでそれを読んでいたからで。
家を出るまでそれを読んでいたのは、時間があったからで。
時間があったのは、バスに乗ることを決めたからで。
バスに乗ることを決めたのは、雨が降る道を歩きたくなかったからで。
雨が降る道を歩きたくなかったのは、私が雨を嫌っているからで。
現在のこの状況の起因、それは私の雨嫌い。
もうこれは私の本能と呼べるものとまでになっている。諦めるしかない。
この『雨宿り』の先が、良い方、悪い方、どう連なっていくのか分からない。だけど何故か漠然と、中谷会長との繋がりはこの先も切れることが無い気が、既にこの時からしていた。
その時には、とっても、嬉しくなかった。