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BLACK D●T  作者: 笹舟
●降って、地、固まる?
43/87

終わりの一言


 *


「……お、おはよう、颯子」

 夕香の朝の一言目がちゃんとした挨拶なのは、高校に入ってこれが初めてだ。


「おはよう。あのね、夕香」


 口をぎゅっと閉じている夕香は、今でも、悩んでいるのだろうか。

 昨日朝から私が怒ったこと、別々の昼休みのこと、会話が無かった一日のこと。

 そう考えるとちょっと良心がちくちくする。


 だから、私がこれから口にするのは、夕香を悩ませたことに対してだ。

 だってどっちが悪いかなんて――、


「昨日はごめん」


「! ごめんねっ、あれは私が」

「はい、終わり」

「えぇぇ?」

「一回ずつの『ごめんなさい』で終わり。私はそうしたい。夕香はそれ以上が要る?」


 ―――決めるものじゃないし、決めても意味が無いし。

 

 それになんか、昨日の私たちにあったことは『喧嘩』に定義して貰えないみたいだし。

 いや、喧嘩に定義なんて無いとはホントは思ってるんだけど、まぁ話がこれで収まるのなら、それでもいいんじゃないかと思う。

 私たちは喧嘩なんてしてない。


 夕香は私の言葉に慌てて「要らない、欲しくない」と首を振った。

 良かった、と軽く息を吐き、私は切り出す。


「ところで、夕香は津屋っていう飴屋さん知ってる?」

「えっ、う、うん。お祖母ちゃんが、そこのニッキ飴が好きだから」

「あのね。今度そこに連れてって欲しいの。夕香が暇なとき」


 さっきまで昨日と今日の私の変わりように驚いていたのに、私の言葉を聞いた夕香は、何故か急に表情を崩してくすくすと笑い始めた。


「……颯子、危ないかもしれないね?」 

 何が? 


 身に降りかかりそうな危険があるのかと、きょろきょろと周りを見る。

 教室の壁に貼られたカレンダーに眼がとまり、


「今日からテスト前期間だって覚えてないようじゃ、点数が危ないかもしれないね?」


「あぁ、そうだっけ……」

 夕香の言葉が正しいことを知る。これは本当に忘れてた。

 

 くすくすと笑い続けていた夕香が、いたずらっ子のような口調で言う。


「テスト前期間中、部活動は停止。だから今日から私、放課後は暇なの!」

「あれ松坂さん、テスト勉強は?」

「えー。頭動かすのに糖分って必要でしょ?」


 楽しそうに笑う夕香に、私も笑った。

 

 

 今日は、夕香が私を津屋に連れて行って。

 今度は私が、夕香を『BLACK D●T』に連れて行くからね。



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