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BLACK D●T  作者: 笹舟
●降って、地、固まる?
37/87

好きなのはどっち


 * 


 今日の『BLACK D●T』は、音楽がかかっていなかった。

 不思議がりながら「こんにちは」と足を踏み入れると、カウンターに座っていたお客さんがこちらを振り向いた。イヤホンを外して、私に「おかえり」と言ってくれる。


「あっ。お久しぶりです、葵さん」


「そうだね。土曜日は、颯子ちゃんが帰ってくる前にここ出ちゃったから」

 にっこりと笑う葵さんは、やっぱりお姉さんのようだ。


「あぁいらっしゃい、笠見さん」

 姿が見えないと思っていた古場さんは、どうやら二階に上がっていたらしい。階段から降りてくると、私を見て片手を挙げた。

 今日は雨が降っていないため、古場さんの髪の毛はサラツヤだ。二度目だけど、やっぱり見慣れない。

 ちなみに、今日は陽介さんは休みを取っている。バイクの部品を交換しに行くのだと土曜日の帰りに聞いた。――正直、今朝のことがあっただけに陽介さんに会うのは少し複雑な気持ちだったから、心のどこかでほっとしていた。


「真島。音楽、もういいか?」

「あ、すいません。いいです。ありがとうございました」


 古場さんは葵さんに確認をとってから、コンポを操作して音楽を流し始めた。

 カウンターに戻ってきた古場さんに、私は尋ねる。


「今日はどうして音楽を止めてたんですか?」

「真島が充電中だったからな」

 古場さんの返答に首を傾げると、隣の葵さんがくすくすと笑った。さっきまでつけていたイヤホンを指差して、私に示す。

「私がこっちで音楽聴いてたから、他の音楽と混じらないようにしてくれたの」

「音楽を聴くのが、葵さんの充電なんですか?」

「この歌を聴くのはね。集中したいときや、ムカつくことがあったときや、ちょっと疲れたときに聴くと、すごくリラックス出来るの。テスト前にはよくお世話になってるのよ」

 

 土曜日に陽介さんから聞いた話を思い出す。

 さっきまで葵さんが聴いていたのが、話に出てきたその曲らしい。

「その曲を歌ってるのって、グループですか?」

 少し興味を持って、尋ねる。翔が知っているかもしれないし。


「うん。確か『ENDLESS LINE』っていうインディーズのグループだったかな。音楽好きな人が歌ってたのを聴いて、気に入ったやつでね。……すごく好きな曲なの」


 照れたように笑う葵さんに、古場さんがはいはいと首をすくめて苦笑している。


 その曲について『何か』あるのだろうと分かった。葵さんの表情と古場さんの反応から、ぼんやりとだけど、なんとなく内容も。


 たぶん……その『音楽好きな人』が葵さんの……――。

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