ただし、扱いにはまだ慣れず。
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放課後、私は図書室に向かう。
今朝読んでいたものは昼休憩で読み終えた。今度はその続編を借りようと思っている。ちなみにその本の作者は野洲京輔である。
映画への予習、といったところだ。
少しだけ期待していたけど、図書室のクーラーはまだついていなかった。
まぁ暑くなってきたとはいえ、今の時期からクーラーをつけているようでは駄目だろうとは思うけど。それに、クーラーがつくと放課後の図書室は列車の時刻を待つ生徒でいっぱいになる。私は暑い時期のそれが嫌いだった。図書室に来たなら本を読め。
「へぇ。笠見さん、野洲読んでるんだ?」
本棚の前で本を選んでいると、すぐ後ろから声がかかって驚いた。
振り返ると、声から想像していた人物が私の手元を覗き込むようにして立っている。この人は何かもっとこう、デリカシー、の、ようなものは無いのだろうか。
……と、考えつつもあまり期待していない自分も居るのでなんともだ。
「俺もそれ好き。叔父がいいよね、叔父が」
「あぁいう人、好きそうですね、中谷会長」
『BLACK D●T』のことでよく接するようになってから、私は「変な人」としてしか認識していなかった中谷会長のことが、徐々に把握出来始めていた。
やはり何処かおかしな人で、誰に対してもフレンドリーな人。
陽介さんと見かけも中身もよく似た人。
今では、中谷会長がこの本を読んだらこの人のことをいいキャラだと言うだろうな、とまで予想が出来るようになってきた。ますます誤解を招きそうだからそんなこと誰にも言わないけど。自慢にも特技にもならないし。
「そういや笠見さん、今度、陽ちゃんと『街灯』観に行くんだっけ」
「はい。月雨シリーズの考案者さんも一緒です」
「ヤマさんでしょー。あの人も映画になったものの原作なら結構読んでるから、訊いてみると面白い本が見つかるかもしれないよ」
そう言いながら本棚から『街灯とサックコート』を手に取った中谷会長は、どこか悔しそうにもつまらなそうにも見えた。俺も借りていこっと、と笑いつつも、その表紙を見る目は諦めがつかない、と気持ちを語っている。
「中谷会長は一緒に行けないんですか?」
私が誘える立場ではないとは思うけど、その表情は反則だ。共感出来てしまうし。
と、いきなり、
「うぬぅうぅうぅぅぅぅ………」
中谷会長は額に手をやって呻き始めた。
何なんだ一体。
一応は焦りながら大丈夫ですかと声をかけると、
「あぁうん大丈夫なのは大丈夫。体調は万全」
と、意外とシャンとした返事が返ってくる。
本当に何なんだ。
中谷会長は顔を上げると、肩を落として私に弱弱しい笑みを向けた。
「一緒に行きたい気持ちは、凄ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぅく、あるんだよね。特に『街灯』って、俺が野洲にハマるきっかけになった本だしさ」
思わぬ共通点を発見した。……だからといって感慨が湧くでもないけど。
「じゃあ、予定が合わないんですか」
「うん。その土曜日って、キャンペーン参加の日なんだよね」
「キャンペーン?」
頷いた中谷会長が言葉を続ける前に、その後ろの本棚の向こうからヌッと何かが現れた。




