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abnormal dialy   作者: アルマジロ
spring
20/22

-junior high school- spring 18

 ずっと考えた。

 平凡。

 平凡という、その言葉の意味を。

 ずっと考えていた。

 平和。

 平和という、その言葉の裏を。


 僕の周りは今――――“平凡”なのだろうか。

 新しくできた友達がいて。

 馴染みのあるガールフレンドがいて。

 よく知らないクラスメイトがいて。

 去年から継続の担任がいて。

 そこにちょっとばかし斬殺死体があって。

 血塗れの携帯があって。

 ちょっとばかしの裏切り、衝撃、絶望があって。

 これって、“平凡”ですか?




「……来たようだな」

 カタンッ。

 携帯が、落ちた。

 その音で僕は我に返る。

 そうだ、僕は今――――。

 今まで生きてきた平々凡々な人生史上最大の危機に、陥っているのだった。

 目の前に、担任と同級生。

 傍らには友達2人。

 視線の奥には斬殺死体。

 足元に……真っ赤に染まった、携帯。

 こんな状況、普通に生きていればそうそうお目にかかることはない。

「時・宴土だ」

「なんでそこ源氏名にしたのかな。普通にジ・エンドって言おうよ」

 佐上の突っ込みは、近づいてくるたくさんの足音でかき消された。

 来たようだな。

 操先生が言ったその言葉の主語はもちろん……警察。

 これで、全て終わり。

 捕まるべき人が捕まって、僕らはきっと事情聴取を受けるだろう。夕方頃に返されて、家に帰る。そしてまた、いつも通りの日々。

 ……そんな簡単に、終わってしまうのか?

「困ったね。まさか本当に警察が来るとは思わなかったから、なんの対策もしてないよ。彼も部屋の中に閉じ込めっぱなしだし……。あの部屋のドアは頑丈だから、簡単にはこじ開けられない。鍵は僕が持ってるし、いっそのこと飲み込んじゃおうかな? 一度やってみたかったんだ」

 もはや何の感慨もない、顔の下半分だけを歪ませて笑う佐上。

 これで、全て終わり。

 そんなはずは――――そんなはずは、ないだろ?

 まだ、解決していない問題がたくさん……。


「――――――――――――――――――――――――!!!!」


 思考がうまくまとまらない僕の頭に。

 金切り声のような悲鳴が鋭く響いた。

 空に反響して、超音波のように耳に響く。

 頭に亀裂が入ったような感覚。

 悲鳴が聞こえたのは、病院の中からだった。

 院内に、他に誰かいるのだろうか?

「ッ!? 今の……何だ?」

 耳を押さえながら、高田がつぶやいた。

 その刹那。

「あ、ちょっ……佐上!?」

 脊髄反射のごとく、佐上が院内へと駆けて行った。

 声をかけた時には、視線の先に佐上はおらず、数秒後階段を上る音が聞こえた。

 追いかける気にもならない。

 そこへ、曲がり角から警察が駆けつけた。

 いや、違う――――この人たち、あの時の刑事だ。

 その後ろに控えている2人も見覚えが……って。

「……御影さんに…大原…!?」

「はっ? え、何でみっくんがここに……? 朝井さんも……。……ん、その人、もしかして操先生!? どうしてこんなところに――――」

「感動の再開は後にして下さい!!」

 刑事さんたちが、立ち止まることなく裏口へと入っていく。

 しかし、そこで立ち止まらないわけにはいかないだろう。

 入ってすぐのところに、変死体があるのだから。

 案の定、足音が途中で止まった。

「…………これのことですか…」

「…これは――――酷い」

「凄まじいですね……。凄惨なんてもんじゃありませんよ」

「前例のない事態ですね」

「そうですね…………まさか、直に(まみ)えることになろうとは」

 ?

 微妙にずれた感想を述べている気がする。

 たしかにバラバラだし死んでるし出血大サービスも甚だしいけれど、前例がないってほどじゃないと思う。

 ……あれ?

 気になってみてみると、刑事さんたちはそもそも警備員の死体を見てさえいなかった。

 見ていたのは……。

 ――――え?

 ちょ……待ってくれ。

 これは……何だ?

 何が起こっている?

 どうしてここに、彼女が?

 どうして――――。

 



「……………………」

 ずっと、この時を待っていた。

 この時だけを信じて、我慢してきた。

 やっと、……敵を討つことができる。

 この人間が。

 この、邪悪に満ちたおぞましき下劣な愚人が。

 私の――――私の、大切な友達を……。

 傷つけた。

 苦しめた。

 悲しめた。

 ……許さない。

 絶対に……決して、許したりなどしない。

 死んでも呪ってやる。

 殺しても呪ってやる。

 いつまでも――――永遠に。

 自分の犯した罪の重さを軽んじ、平気の平左でこの世にのさばり続ける下種の極みが。

 地獄に墜ちろ!!




 遠くから……悲鳴が聞こえた。

 彼女の声だった。

 そうか……きっと、やってしまったのだろう。

 あの包丁で。

 佐上くんを殺したら、次は誰を襲うつもりなのか……。

 流れからしたら、鶴嶋くんかな?

 本来は、彼の方を真っ先に始末するべきだったんだろうけれど……隠蔽に手を貸したのは佐上くんだから、順番からすれば大した違いでもないか。

 この一連の事件に関わった全ての人々を消すつもり?

 自分の手を汚してまで?

 一体、彼女に――――。

 柳川さんに、何があったというのだろう。

 彼女を装って、佐上くんに隙ができるのをずっと待っていたところまでは理解できる。それが絶望を伴った復讐のためであることも。

 それなら、なぜあんな言葉をノートに書いた?

 なぜ。

 僕に、ごめんなさいと謝った?

 僕を刺したのは、佐上くんへの忠誠心を表すための行為じゃなかったのか?

 関係のない僕を巻き込んだことに対する謝罪?

 ……そんな軽いものじゃない。

 それだけなら、わざわざ書いた後にノートを引き裂いたりしないだろう。

 一体何なんだ?

 言葉を話さない彼女は、今どんな思いでいるんだ?

 



「…………莉子……!?」

「…………」

 刑事さんたちの目の前で。

 柳川が、包丁を両手で握り締めて佐上に斬りかかっていた。

 それを。

 女刑事さんが、止めた。

 彼女の腕をつかみ。

 そのまま捻り。

 柔道の一本背負いの要領で、地面に叩き伏せた。

 彼女の手から包丁が離れる。

 同時に、もう一方の刑事さんが、包丁の柄を蹴って部屋の隅に弾く。

 女刑事さんは素早く手錠を取り出し、柳川を拘束した。

 一瞬の出来事だった。

「…………」

 何が……起こった?

 何でここに、柳川がいる?

「……柳川莉子」

 静まり返る現場。

 女刑事さんが、淡々とした声で言う。

「殺人未遂及び傷害罪の罪で、逮捕する」

 その言葉に、柳川は抵抗をやめてガックリとうなだれた。

 柳川は、佐上を殺そうとした?

 どうして?

 それになぜ院内から出てきた?

 他にも、中に人がいるのか?

 あまりに多くのことが短時間で起こりすぎて、情報処理が追いつかない。

 一方、難を逃れた佐上が、我に返って柳川に詰め寄る。

「……た…助かった……。おい、莉子!! お前、こんなこととしてただで済むとでも――――」

 それを、先ほど包丁を弾いた刑事さんが手で制す。

「あなたもですよ。佐上惇さん」

「!!」

「誘拐・監禁に殺人事件の隠蔽……さらには警備員を殺害し、罪のない命をこのような形で無残に奪い……。あなたの方が重罪ですよ。他人のことをどうこう言える立場ではありません」

「……どうして…それを」

 佐上が言い終わる前に。

 刑事さんは佐上の両手首に手錠をはめた。

「!! ……おい! どうしてあのことを知ってんだよ! 京ちゃんは何も……ッ!」

「塚本さんは先に行っていて下さい。私は錦戸さんに救援を頼みますんで」

「…………分かりました」

 塚本と呼ばれた女刑事さんは、柳川から離れると、院内へと駆けていった。

 それを見送って、残った刑事さんは、佐上を押さえながら器用に携帯を取り出して電話をかけた。

「あ、錦戸さーん? 佐野ですー。はいはい、それは謝りますって。あれ、でも私、上には連絡しておいたと思うんですけど。あー……いいです、どうせ塚本さんが言い忘れたんでしょ。よくあることです。全く、あの人はなんでこう職務を全うしないんでしょうかねー。さっきだってパトカーの運転は私がするって言ってるのに聞かなくて、接触事故起こしかけたんですよ。こんなのが上司だと思うと情けなくて情けなくて。上にチクっちゃってもいいですかコレ? ていうか言うべきですよね。塚本さんにはいい加減、けじめってもんを持ってもらわなくちゃ困るんですよ。欠勤はするし単独行動はとるし先輩風は吹かすし切れるとすぐ発砲するし、傲慢で強引でその上強欲なんですからあの人は。手のつけようがありません。警視庁随一の問題児ですよ」

 なんか言ってる。

 塚本刑事の悪口めっちゃ言ってる。

「あーそうそう、それなんですけどね、はい、ちょっと来てくれません? 偶然、犯罪者2人確保しちゃったんで。はい。――――じゃ、頼みますねー」

 ピ。

 通話を終え、佐野刑事はやれやれと僕らに向き直った。

「えーと……そういうわけで。もうすぐ警察がたくさん来るんで、それまでこの2人見ておいてもらえます? そろそろ行かないとあっちもマズいんで」

「え!?」

「じゃ」

 あっという間に塚本刑事を追いかけていってしまった。

 …………。

 なんか、頼まれちゃった。

 あの、未だに状況が理解できないんですけど。

「……とりあえず」

 僕は、この場にいるメンバーを一人一人見回した。

 高田、朝井、操先生、大原、御影さん。

 よく分からないので佐上と柳川は除く。

「まずは現状把握から始めましょうか?」


「…待って!!」


「?」

 後ろの曲がり角から叫び声が聞こえて。

 振り替える間もなく、僕は再び目にすることになる。


 チェーンソーを振り上げて御影さんに襲い掛かる、操先生を。

 長さ控えめっていうか、普通に短くなっちゃいました。

 しかも話の展開がとてつもなく意味不明でした。

 でも、この意味不明な文型がスピーディーさをいいカンジに醸し出してる、なんて言い訳はともかく。

 結構頑張ったと思います、自分。いや、忙しいんですよ。最近。学校はあるわ塾はあるわ部活はあるわ。大変ですね受験生は。

 次回どうしよ。

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