覚悟
第33章 覚悟
ハルはゼルガから拾ったアイテムを自分で解析をすることにした。
「これ、なんか見たことあると思ったら勾玉だ....」
そうそれは、現世の日本でしか見ない勾玉だった。
ハルは使い方を考えた。
「そういえばベラエルが現世に戻れる結界がどうたらって...」
「『アテナ』もう一度解析、条件を付ける。これはこの世界のものか?」
ハルは現世である日本でしかみたことのない形のアイテムをこの世界のものかと聞くことで確信に迫った。
『解析します...』
『解析不能...』
『このアイテムはこの世界の構造外に存在します』
「やっぱりな」
ハルはここで確信した。これは現世のものだと。
そして2つ違和感が残った。
ベラエルが残した言葉。
この世界と現世をつなぐ一つの道。
そして、この世界の住人であるゼルガがハルの現世に存在するアイテムを所持していたこと。
この世界に存在できないはずのものが、なぜそこに在ったのか。
その一点だけが、どうしても説明できなかった。
ハルは勾玉を握りしめ、足元に簡易の魔法陣を描いた。
その瞬間だった。
『別世界に転移する魔法陣が展開されました』
『転移は可能です』
『実 行 し ま す か ?』
ハルの心がわずかに揺らぐ。
一緒に過ごした時間、教室、二人の声、母の声、おてんばな妹。
あの時止まったハルの時間、あの世界がはっきりと浮かび上がった。
喉が鳴る。
戻れる。
何も失っていない場所へ、すべてが始まる世界へ、いつもの日常へ。
幼馴染のルイとミキ、いつもうるさかった妹のアヤ。
だが、ハルは息を大きく吸った。
そして、何かを覚悟した。
「――さようなら」
その言葉は、誰かに向けられたものではなかった。
それでも確かに別れだった。
歯を食いしばる。
奥歯が軋むほど、涙が溢れ出そうなほど強く。
分かっていた。
だから声が出なかった。
守るべき世界があるのに、背負うべき選択があるのに、
それらをすべて置き去りにすることになる。
ハルにとっての日常、普通はもうこの世界になっていた。
現世に未練なんて無いなんて言ったら嘘にはなる。
「もう、戻れない。俺だけ楽な道なんてできない....」
ハルはそう言い、勾玉をそっと布に包み、魔法陣を閉じた。
「魔法陣を破棄、実行も破棄する」
『了解しました』
魔法陣の構成を壊し、実行もしなかった。
その瞬間。
現世にいた、ハルを知る者たちの記憶の奥で、
何かがぷつりと途切れた。
名前も、声も、一緒に笑った時間も。
理由の分からない空白だけが確かに残った。
ハルは目を閉じた。
もうあの世界には戻れない。
戻れないのではない、戻らないと決めた。
「逃げれた、戻れた、でも俺にはやるべきことがある」
ハルは顔を上げれなかった。
「これでよかったんだよな....」
だが、進むしかない。この世界に来て一番の選択だった。
「ベラエルも天使に進化した時こんな気持ちだったのかな...」
「くそ....会いたいよ....」
ハルからは必死に抑えていた涙が零れた
ハルは何かを得るには何かを捨てなければならない、それがたとえ小さなことでも
大きなことでもなにかの代償が必要になるのだと。




