二人の夜
第22章 2人の夜
そのあと、二人は荷物を出し、部屋の整理整頓を行った。
服も部屋のクローゼットの中にびっしりと詰まっていて、買わなくても困らないくらいの服が入っていた。
整理整頓をしているうちに日が暮れ、二人はお腹が空いてきた。
「ハル~お腹空いたよ~」
ミアが弱々しい声でハルに言った。
「せっかくだしなんか作ってみるか」
ハルはそう言いながら、キッチンへと向かった。
ハルは何かあるのか期待はしていなかったが、
恐る恐る冷蔵庫を開けた。
すると冷蔵庫の中にはクローゼットと同じようにびっしりと食材が詰まっていた。
「な、なんだこれ。向こうの世界じゃ見ない食材ばかりだ...」
ハルはこの世界に来て食事など、自分で作ることなんてなかった。
むしろ現世でも自分で料理を作り他人に振る舞うなんてことは絶対にしなかった。
「今日は何を作ってくれるのかな?」
楽しみそうな声でミアが横から聞いてきた。
でもそれよりハルは、ミアの部屋着の方が気になって凝視してしまった。
「ミア!その服露出しすぎじゃないか!?ほぼ下着じゃん...」
ハルは慌てて顔を背けた。
ミアの下着は胸の谷間が見え、かなり薄い素材だった。
しかも下ははいているかわからないくらいだった。
「ええ?そうかしら?いつもこれだけど嫌だった?」
ミアは本当に気にしていないらしく、自分の部屋着をきょろきょろ見ていた
「いや下は?何か履いてるよね?」
ハルが赤裸々に聞くとミアがひらりと見せてきた。
「え?下着のまんまだけど?」
「ああああああ!!見せるな見せるな!ご飯作るから向こうで待ってて!」
ハルは本当に焦ってミアを椅子に座らせた。
『血圧の上昇を確認。今すぐスリープモードに移行しますか?』
アテナは何も悪気がないのだろう。ましてや主のことだ、気にするのも当然だろう。
「ちょっとうるさい、いらないよっ」
ハルがアテナに空気読めよと言わんばかりに言った。
アテナはすぐに消えていった。
ハルは気を取り直して、キッチンで料理を始めた。
「んー何かミアに現世で食べてたやつを食べさせてあげたいなー」
「よし!決めた!俺らの国と言えば....?」
ハルは料理を始めた。
「ミアー!は何か嫌いな食い物あるかー?そうしたらそれは入れないようにするけどー?」
ハルは遠くにいるミアに聞こえるくらいの声量でミアに聞いた。
ミアはハルの料理なら何でも食べるくらいの勢いでハルのいるキッチンに来た。
「なに!?もうご飯できた!?」
ハルはミアを落ち着かせるように
「まだだよ。もう少し待ってて」
ミアがキッチンを覗きながらハルに聞いた。
「何作ってるのー?これ」
ハルは答える前にミアに
「なんか食べられないものとか、苦手なものとかあるか?」
ミアは大きく胸を張り答えた
「ふふん!私に食べられないものなんて無いのよハル!」
ハルはこの世界の常識を確認した
「ミア、魚ってわかるだろ?川とか海とかに泳いでる生物のことだ」
当たり前のことを聞かないでと言わんばかりのミアが答えた
「そりゃ、わかってるわよ。でもなんで魚なの?」
ハルはニヤリと口角が上がった。
「魚って実は食えるんだよ、知らなかっただろ?」
(そうだよな『アテナ』ここの世界の魚って食えるよね...?)
ハルは事前に確認せずに"寿司"を作ろうとしていたので、焦ってアテナに聞いた。
そしてアテナから提案が出た。
『はい。食材として食べられます。ハル様の味覚記憶から寿司の味覚をインプットしこの世界にレシピを作りますか?』
なんと現世の味を再現するというのだ。
もちろん断る理由もなく、即答した。
(え、何そんなことまでできちゃうの?もちろんやってくれ)
『ハル様の味覚を解析中....脳内記憶から寿司という料理レシピをインプット中....完了しました』
『スキル、記憶料理を獲得しました』
(え、ほんとにすごいね君....)
ハルは、記憶から料理がインプットされ、なおかつスキルまで覚えてしまった。
アテナのすごさに放心していた。ミアがハルに話しかける。
「魚を食べるって...本気で言ってるの?魚って観賞用とかじゃないの?」
この世界には魚を焼いたり生で食べる習慣というのが無いようだ。
ハルが思い返してみると、ミアと最初に入った店では肉と野菜しか出てこなかった、しかも味付けも単純で何も工夫がされていなかった。
「そうなんだね。でも今から作るやつはびっくりすると思うけどな!」
ハルはアテナがインプットした記憶から寿司を握っていた。
しかもこのキッチンは魔力循環式キッチン。
魔力を少し乗せるだけで半永久的に火が使える。
(まぁ今回火は使わないんだけど...)
「....よしっできたぞ、これが俺のもとの世界の代表的な食べ物 寿司だ!!」
「あ、醤油がないや。ちょっと待ってねまだ食べないで!」
ミアは出てきた寿司をずっと見ている。
よほど珍しいものなのだろう、だがその美しさに見とれお腹が鳴っている。
(『アテナ』醤油もレシピに追加してくれ)
『そうなるかと思って、事前に作っておきました。インベントリに入っています』
(もう仕事出来アテナちゃん!♪)
ハルはこれまでにないくらいの声色でアテナを褒めた。
インベントリからとった醤油をミアの前にある寿司にかけた。
「どうぞ、召し上がれ。箸は使えないと思うから手でそのままつかんでいいよ」
ミアは恐る恐るハルに聞いた。
「こ、これ本当に食べられるの?」
ハルはちゃんと安全性があると安心させるために、切った身を醤油につけて食べた。
アテナからは食材として扱えるって言ってたし大丈夫だろうと。
ハルが身を口に入れた瞬間に、涙がこぼれた。
「は?旨すぎる....なんだこれ...」
「高級寿司なくらい旨いのずるいだろ....」
それを見たミアが自分が食べてくれないからハルが泣いているのだと勘違いした。
「ああ、ごめんハルそういうつもりじゃないのよ!食べるわよ!」
ミアは一口食べた。
噛むと同時にミアの口の中が切り身の極上の油と醤油が絡み合い、
幸せな味わいが広がっていた。
「なに...これ...おいしすぎる」
ミアは感動してもっとハルに頼んで二人で食べ尽くしながら、同棲1日目は終わった。




