イグロス王国
第2章:イグロス王国
俺はこの異世界のことを知るために、王国中を歩いたり、
街を行き交う人たちに聞いて回ったり、看板を眺めたり、情報収集に徹した。
何時間歩き回っただろう。空は茜色に染まり、
街灯がぽつぽつと灯り始めている。
「ここまでわかったことは...」
心の中で整理する。
この国には人間、獣人、エルフ、亜人……様々な種族が共存している。
平和な国らしいが、魔法や冒険者、ダンジョンまで存在する。
魔法を使うには魔力が必要で、自分の魔力量、要はステータス的な
能力値などを確認するには“職業”に就かないと確認ができない
「で、俺は無職。詰んだな……」
ため息をついた瞬間。
「あなた、こんなところで何しているの?」
澄んだ声が背後から降ってきた。
振り返ると、そこには少女。
いや、“少女”なんて言葉じゃ足りない。
夕日に照らされていてもオレンジ色に染まることもないピンクの髪に、
黒いきれいな瞳、完璧な顔立ち。
「あ、あぁ……ちょっと散歩を……」
女性経験ゼロの俺、完全に挙動不審。
「散歩って……ここ、テスカっていう過激派の亜人ギャングがうろつく通りよ。
普通なら誰も近づかないわ」
周りを見渡すと、そこは不気味な雰囲気が漂っていた。消えかけの街灯。
ツタが伸びっぱなしの家、舗装されていない道路。
ギャングのうろつく通りだと言われて瞬時に納得した。
彼女の視線が俺の服に落ちる。
「その服……見たことない。変な格好だから、
あいつら警戒してるだけで襲ってこないみたいね」
服そう、ハルはまだ日本の高校の制服を着ていた。
異世界に来たことは、もう驚きすぎて逆に受け入れてしまっている。
「でもなんで制服のままなんだ?」
「普通こういうのって、もっとファンタジーっぽい服に変わるんじゃないのか?」
頭の中でそんな疑問がぐるぐる回る。
そんな俺の腕を、彼女がぐいっと引っ張った。
「ほら、こっちに来て!」
え? どこへ?
抵抗する余裕もなく、足が勝手に動く。
夕闇の王都で、俺は謎の美少女に腕を引かれながら、そのまま走った。




