国王謁見
第16章: 国王謁見
王への謁見の日。ハルはとんでもない緊張に襲われていた。
しかし、いつかやらなければいけないことだと思っていたがハルはかなり怖がっていた。
ーー王への謁見、600年前に国を救った勇者様だとしても
そんな上手く行くのか?
ハルには不安が溜まっていた。
「着いたわよ。あの白壁に囲まれた城――あれが、イグロス王国の中枢よ」
ーー俺は思わず息を吞んだ。巨大な城壁、吸い込まれそうな暗黒の門、
そして空を突く城。異世界って改めてすごい。
「はっ。ミアお嬢様お帰りを心待ちにしておりました。
国王陛下も心配してお待ちになられてました」
そこにいたのは門番だろうか。銀色の甲冑に、長い槍、腰にはイグロス王国を
象徴するかのような国章の布。厳重な門番だ。
「はいはい。お勤めご苦労様です。あ、この人は私の客人だから
無礼の無いようにおもてなししなさい!」
--ミアって人にペコペコされるの嫌なくせにこういうときは自分の立場を使うのか、、
俺よりこいつの方が最強なんじゃないか..?
「はっ。ミア様のご客人様がお越しですか...ようこそイグロス城へ」
「あ、はい。すみません失礼します。」
ハルは門を潜ったと同時に一気に不安要素が込み上げてきた。
「なぁミア、俺礼儀作法とか、王様への言葉遣いとか知らないし、
わからないぞ?大丈夫なのか?」
ミアは軽々答えた。
「大丈夫よ、お父様なんてそんなことは気にしないし、
転生者と聞けば向こうからペコペコしてくるわよ」
そんなこと絶対にないだろうと思っていたハルはそのまま、謁見の間へ歩いて行った。
扉の前に着くと、そこにも外にいた近衛兵ような人が立っていた。
「国王陛下!三女ミア・イグロス・ミルベック様並びにそのご客人、がお越しになりました!」
大きな扉が開くと、謁見の間の空気が一変した。
正面には玉座があり、そこに腰を掛けた王がこちらを見ている。
見上げるほどではないが、自然と背筋が伸びる位置だった。
玉座の脇には、女王なのかものすごくきれいな女性、
鎧姿の側近の兵や、親衛隊長と思わしき男、
数名の大臣らしき人物が控えている。
「ミア....」
王はそう呟いた次の瞬間立ち上がり
「ミアぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
これは本当に国王なのか?疑うほどの勢いでミアに走りながら抱き着いたのだ。
「ミア!!心配したんだぞ!家を出て、便りもよこさず、我は心配だったのだぞおおお!!」
ミアは「また始まった」とでも言いたげな、呆れた表情を浮かべる。
側近の兵たちも、慣れた様子で視線を逸らしていた。
「もう!お父様そういうことを皆の前でするなと何度も言っているでしょ!ふんっ!」
ミアはそう言い放ち王を蹴り飛ばした。
「いたーーいん、実の父になんていうことをするんだミアよ我は悲しいぞ..
お前がこーーーんな小さい時から見ているのに~..」
王はもはや国王とは思えないほど情けない声でそう訴えた。
ハルは、ただ立ち尽くすことしかできなかった。
王への謁見が、ここまで緩いものになると思っていなかったのだ
だが、不思議と先ほどまでにあった不安は、すっと消えていた。
ーーこの王なら、なんでも話せそうだ。
そう思えてしまうほどに。
「…ん?」
王はようやくハルの存在に気づいたように目を細めた。
「おい、そこの男は何者だ?」
一瞬の沈黙。そして次の瞬間
「ま、まさかーー
この、わしの可愛い可愛いミアたんの男ではあるまいな!?」
王の顔が、みるみるうちに険しくなる。
「き、貴様ぁぁ!!わしの娘を誑かしおってぇぇぇぇぇぇ!!」
そう叫ぶや否や、王は剣を手にかけ、勢いよくハルに踏み出した。
「ちょっとお父様!!話を聞いて!!」
謁見の間中に響き渡るほどの声だった。その一声で、王の動きがぴたりと止まる。
「....ふん」
王は剣を鞘に納め、腕を組んだ。
「我が可愛い娘の言葉だ、聞かぬわけにはいくまいな。
して、話を聞こう。そなたは何者だ?」
王が玉座に再び座り、ハルの方をジッと見つめながら険しい顔をしている。
その姿は先ほどまでのふざけた王ではなく、しっかりと貫禄のある王の姿だった。
ハルはその態度と威圧感に圧倒されながら大きな声で言った。
「は、はい!僕は転生者です!先日この世界に転生してきて右も左もわからないところ、
このミアが僕のことを救ってくれて今はミアを守るために一緒に行動しています!」
ハルの言う『転生者』という言葉に場はざわつく。王は言った。
「そなたが転生者のハルか!600年ぶりの宝玉がいま我の目の前にいるのか!!!
そうかそうか!転生者であったか!話はヴァルガスから聞いておるぞ」
「これはこれは、先ほどまでの無礼詫びて申し上げよう。
申し遅れた我が名はガルディオ・イグロス・メルベック」
ガルディオ王はうれしそうに笑いながら言った。その言葉や表情にはどこにも悪意はなく感じた。
「そなたが転生者であること、そしてミアとともに行動していること
また我らは転生者様に救われたのか」
「これも何かの縁なのかもしれぬな、よしそなたにこの国での自由を許そう。困ったら何でも言うがよい」
ハルはその言葉にうれしさを覚えた。
ハルの人生の中でここまで人から認められることなんてなかったからだ。
そのガルディオ王の期待に応えたいそう思った。
そう思っていた横からミアから提案が出された。
「お父様!私はこのハルとイグロス学園に行くことになってるの。
そこで、ハルと一緒に住ませてほしいわ!!」
その声はまっすぐで、本気で親に強請る子供みたいなではなく
本気で思っているからこその声とまっすぐな目だった。
ーーガルディオ王は目を瞑り沈黙した。何秒経っただろう、すぐに答えが出た。
「よかろう。」
その言葉にミアが喜びの笑みを浮かべハルの方を向いた。
「...!やったあ!早速準備しなきゃね!」
「まぁもう少し落ち着いてからだな、また声かけるよ」
ハルも内心少し安心していた。
そのミアとハルの喜びを上書きするかのように王が言った。
「だが...ハルよ、そなたが本当にミアを守れるかどうか試させてもらおう。
なに、転生者の実力を疑っているなどではない」
「ただ、そなたがどこまで転生者としてできるか試させてもらう」
ガルディオ王は先ほどのミアと同じようなまっすぐな目でハルを見つめた。




