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第一六話 2度目の訪問


 放課後。


 校門を出て、並んで歩くこの道も、気づけば三回目だった。


(……もう三回目か……)


 たったそれだけなのに、

 自分でも不思議なほど「慣れた」と感じてしまうのが怖い。


「ね、小山くん」


 光崎アリスが、歩きながら横を見る。


「ちゃんと勉強道具、持ってきた?」


「……は、はい……」


 肩にかけた鞄を、思わず持ち直す。


「ノートと……教科書と……一応、問題集も……」


「えらいえらい」


 軽い調子で言われて、少しだけ肩の力が抜けた。


「テスト前だもんね。今日はちゃんとやろ」


「……が、頑張ります……」


 他愛もない会話をしながら歩く道は、朝とは違い本当に居心地がいい。


 少し歩くと、見慣れた高い塀が視界に入る。


「……やっぱり……」


 思わず声が漏れる。


「でかい……」


「毎回言うね、それ」


 光崎アリスはくすっと笑う。


「でも、嫌いじゃないでしょ?」


「……嫌いでは……ないです……」


 正直に言うと、慣れない。

 慣れないけど、目を離せないような気持ちになる。


 門をくぐり、敷地内に入る。


 砂利を踏む音が、やけに大きく響く。


 玄関の前に立っただけで、自然と背筋が伸びる。


 家の中に入るのは、これで二回目。

 それでも緊張は、前回とほとんど変わらなかった。


「どうぞ」


 彼女に促され、靴を脱ぐ。


「……お、お邪魔します……」


 広すぎる玄関。

 異常なほど静かな空間。


 足音が、やけに反響する。


「こっち」


 彼女は迷いなく歩いていく。


 曲がって、また曲がって、

 本当に迷路みたいな廊下。


(……一人だったら絶対迷う……)


 そう思っているうちに、階段に着く。


 二階へ上がると、空気が少し変わった。


 生活感が増す。


「今日はここでやろ」


 案内されたのは、二階のダイニングテーブルだった。

 全てがデカく感じてしまうが、やはりこの机もでかい、

 円卓のような構造で、頑張れば十何人かは同じ机を囲めるほどだ。


 テーブルに隣り合って座る。

 やはりずっと感じていたが昨日の件から距離が確実に近くなった気がする。

 昨日のことを思い出していたら、泣き出してハグしてもらったことを思い出して赤面する。


 鞄を下ろし、ノートと教科書を並べる。


「……改めて……」


 僕は小さく息を吸う。


「……よろしくお願いします……」


「こちらこそ」


 光崎アリスはにこっと笑った。


「じゃあ、小山くん」


 ペンを手に取り、少しだけ身を乗り出す。


「逃げ場はないよ?」


「……え……」


「テスト勉強」


 そう言って一年主席は楽しそうに最下位に笑った。


 その笑顔を見て、

 なぜか胸の奥が、少しだけ温かくなった。


 ――こうして、二人の勉強会は始まった。

               第一六話・完

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