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黎明創紀 APORIA-CODE  作者: 久遠 魂録


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25/33

25:Conflict / Blasting Carol

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

「ハッ、何が『聖域』だよ! そんなお行儀の良い記述コードで、この『退屈』が殺せると思ってんのかよ!」


 通信回線を切り裂くリツ――ワカキ・リツの嘲笑が、アリアたちの脳内に直接叩きつけられた。


 アポリア07号機『キャロル』。


 それは、白銀のウーヴェルチュールや紅金のカプリッチョが持つ「様式美」を真っ向から否定するような、暴力的なまでの熱量を孕んだ機体だった。漆黒のレザーを思わせる質感の装甲に、スタッズを模したスパイクが全身に散りばめられ、背面のスラスターからは紅い残像が稲妻のように溢れ出している。


「リツ、勝手な真似はよせ! ……キャロルの同調シンクロ率はまだ不安定なんだぞ!」

 地下センターから響くテツトの怒号を、リツは鼻歌交じりに聞き流した。


「不安定だから良いんじゃねえか。……世界の余命が残り十四パーセント? 記述者が居眠りしてんだろ? なら、叩き起こしてやるのが、パンクの流儀ルールだろ!」

 キャロルが加速する。


 武雄図書館の芝生広場に鎮座し、周囲の「意味」を吸い取り続けていた巨大な音叉型のエコーに対し、リツは回避どころか真正面から突っ込んでいった。

 

「……っ、リツちゃん、危ない! そこは色彩データが消えてる……!」

 アリアの声が届くよりも早く、キャロルは色彩を失ったモノクロームの領域へと突入した。


 カノンが狙撃できず、カナタの盾さえも砕かれた「無」の空間。だが、リツが操る07号機は、その空白を「不協和音ノイズ」で強引に塗りつぶした。


「奥義……『バースト・キャロル』! 全てのスピーカーを最大にしろ!」

 キャロルが構えたエレキギター型の長大なチェーンソー剣が、空間の「静寂」を物理的に切り刻んだ。


 ギャリギャリと耳を劈く電子音が、図書館の静寂を暴力的に破壊する。それは「正解」を導き出す書き換え(リライト)ではない。ただひたすらに「私はここにいる」という強烈な律動リズムを叩きつける、存在の咆哮。


「――グ、ギャアァァァァァァ!」

 形を持たないはずの虚無のエコーが、初めて実体を持って悶絶した。


 色彩のなかった空間に、リツの放つ暴力的な「紅」が、スプレーアートのように吹き付けられていく。


「……信じられない。……計算不可能な乱数ノイズだけで、記述の剥落を押し戻している……?」

 カノンが01号機のコックピットで絶句した。


 彼女が信じる論理的な否定デリートを嘲笑うように、リツは「ただの無茶苦茶」で世界を繋ぎ止めていた。


「おーほっほっほ! 品性の欠片もありませんわね、リツ! けれど、その泥臭い執念だけは、わたくしの高潔な舞台の『スパイス』として認めて差し上げますわ!」

 ワカが05号機のバインダーを展開し、リツが作り出した「意味の綻び」を逃さずパージ粒子で洗浄していく。


 アリアもまた、震える手で操縦桿を握り直した。

 

 リツの戦い方は、アリアたちが築き上げてきた「秩序ある防衛」を壊すものだ。


 けれど、その破壊こそが、今、死にかけた世界に新しい鼓動を与えている。


「……私も、負けてられない! ……ウーヴェルチュール、再起動!」

 白銀の機体が、リツの紅い稲妻に呼応するように輝きを増した。


 だが、その激闘を静かに見つめる「もう一つの影」が、図書館の影に佇んでいた。

 

 APORIA-06:Nocturne。

 紫紺の着物を模した装甲。そのパイロット、ミマサカ・コトネは、静かに目を閉じていた。


「……騒がしい。……リツ、あなたは相変わらず、世界の『音』を聴こうとしない」

 コトネの低い、鈴を転がすような声が通信に紛れ込む。


「コトネ! お前もさっさと降りてこいよ! この『音叉』、一人じゃあ芯まで焼き切れねえ!」


「……いいえ。……夜想曲ノクターンに、無駄な音は必要ありません。……テツト様、開門許可を。……この街の眠りを守るため、一撃で終わらせます」

 地下センターで、テツトが苦渋に満ちた表情で承認ボタンを押し込んだ。


「……第3サイクル、変奏開始。……コトネ、頼むぞ」

 図書館の屋上から、紫紺の影が音もなく舞い降りた。


 それはリツの爆音とは対照的な、絶対的な「静」の制圧。

 

 物語の余命、残り十三パーセント。

 武雄の夜は、二人の新星の加入によって、より混沌とした、しかし熱い旋律へと加速していく。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

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