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黎明創紀 APORIA-CODE  作者: 久遠 魂録


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22/33

22:Conflict / Sanctuary Quartet

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

 武雄温泉・楼門の周囲は、不気味な「無重力状態」に陥っていた。


 地面のレンガがピクセル状に浮き上がり、街灯の光が一方的に吸い込まれていく。今回のエコーは、敵というよりは「消失そのもの」だ。


「テツト! 敵の記述強度が、こちらの計算限界を突破しました! ……このままでは、駅周辺が丸ごと『未定義』に変わります!」

 カノンの01号機『エチュード』が、アブソリュート・バイナリを水平に構え、限界までチャージを開始した。だが、虚無は狙撃するべき「芯」さえも見せない。


「……アリア、ワカ、カノン、カナタ! 全機、共鳴記述シンクロ・コードを連結しろ!」

 テツトの怒号が、4人の神経を繋ぐ。


「……いいか。君たちが信じる『日常』を、一つの旋律にまとめろ。……カナタ、お前の守護を起点に、聖域を再定義するんだ!」


「了解! ……『不動の結界イージス・シェルター』、全域展開!」

 カナタの02号機『インテルメッツォ』が、透明な嵐の真っ只中で盾を地に突き立てた。


 実家の古社で千年の祈りを捧げてきた彼の魂が、盾を通じて空間に「不変」の記述を刻み込む。黄金の波動が、崩落しかけていた建物の輪郭を無理やり繋ぎ止める。


「――おーほっほっほ! 退屈な空白に、極上の彩りを与えて差し上げますわ!」

 ワカの05号機『カプリッチョ』が、紅金色の扇を全開にし、空へと舞い上がった。


 彼女が撒き散らす極彩色のパージ粒子は、無機質な虚無に対し、圧倒的な「個人の尊厳」を叩きつける。それは、記述者が飽きた物語に、強制的に強烈な「見所」を書き加える行為。


「奥義……『グロリアス・パージ』! ……さあ、刮目なさいな、不敬な空白ども!」

 ワカの放つ眩い光が、透明だった怪異に「形」を与えた。


 一瞬だけ露出した虚無の芯。


「……逃さない。……論理的否定デリート、開始!」

 カノンの青い閃光が、露出した核を真っ向から撃ち抜いた。


 激しいスパーク。そして、仕上げ。


「……アキちゃん、イツキくん、マサルくん。……みんなに、ちゃんと『おやすみ』が言える明日を、私は守り抜く!」

 アリアの04号機『ウーヴェルチュール』が、白銀の光を纏って突進した。


 リライト・ブレード。不当に断絶された物語を、力強く書き換える理の刃。


 彼女の脳裏には、鹿島で待つ子供たちの笑顔と、ユウの温かな微笑みが、最強の記述コードとして溢れていた。


「……再起リライト……完了! ……物語よ、光を取り戻せ!」

 白銀の一閃が、虚無を完全に両断した。

 

 ――パリン、と。

 まるでガラス細工が砕けるような音が響き、武雄の街に色彩が戻ってきた。


 楼門の朱色はかつてないほど鮮やかに輝き、ノイズは光り輝く文字の蝶となって夜空へと霧散していく。


 戦いを終え、格納庫へと降下する四機。

 アリアはコックピットの中で、震える手を握りしめた。

 

 ――この闘いを、いつか笑顔で駆け抜けられる日が来るまで。

 

 アリアの静かな決意を乗せて、第2サイクルは、一つの完成コンプリートへと到達した。


 だが、テツトのモニターに映る『Remaining storyline: 15%』の文字は、新たな、そしてより過酷な変奏の幕開けを告げていた。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

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