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黎明創紀 APORIA-CODE  作者: 久遠 魂録


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15/33

15:Suite / Eroding Silence

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

 武雄の夜を支配していたのは、かつてないほど「冷たい」静寂だった。


 駅前広場での激闘から数日。街の修復パッチは完了したはずだったが、アサヒナ・アリアの網膜には、消えない残像がこびりついていた。


「……アリア。またボーッとして。羊羹が泣きますわよ」

 ワカの声に弾かれたように顔を上げると、そこには不機嫌そうに扇子を動かすワカと、黙々と紅茶を注ぐカノン、そして静かに庭を眺めるカナタがいた。


 放課後の部室。琥珀色の西日が差し込むこの場所だけが、今の彼女たちにとって唯一の「安全圏」のように感じられた。


「ごめん。……ねえ、みんな。最近、街の音が『薄く』なってない?」


「音?……物理的な周波数は安定しているわよ。ただ……」

 カノンが眼鏡のブリッジを押し上げ、手元の端末を操作する。


「人々の感情指数バイタルが、異常なほど凪いでいる。怒りも、悲しみも、喜びさえも。……まるで、この世界そのものが、次の展開を拒んでいるみたいに」


「……『飽和的な退屈(SATURATED-BOREDOM)』、でしたっけ」


 カナタが低く呟いた。実家の古社で不浄を祓う彼は、街全体に広がるその「無関心という名の毒」を、肌で感じ取っていた。


「テツトさんの言っていた通りだ。……記述者ライターが僕たちの物語に飽きれば、世界は意味を失って消える。……今、起きているのはその前兆だ」


 その瞬間、部室の床が激しく震えた。


 地震ではない。空間の記述コードそのものが、乱暴に引き裂かれるような嫌な感覚。

『WARNING: LARGE-SCALE-ERASURE detected. 武雄温泉・楼門周辺の存在定義が、現在進行形で抹消されています』

 テツトの切迫した声が、スマートフォンから響く。


 アリアたちは顔を見合わせた。


「――お行きなさい! わたくしたちの思い出の場所を、みっともない空白にするなんて、万死に値しますわ!」

 ワカの力強い一喝が、沈みかけていた空気を切り裂く。


 四人はそれぞれの「旋律」を抱き、地下センターへと駆け出した。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

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