14:Conflict / Indomitable Melody
この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。
武雄の古い住宅街が、ノイズの海に沈もうとしていた。
一戸建ての屋根がピクセル状に崩落し、路地裏からは『ABUSIVE-LOGOS』を喚き散らす中規模のエコーたちが溢れ出している。
「各機、陣形展開!……カナタ、起点を作れ!」
通信回線を通じてテツトの声が響く。
「了解! ……『不動の結界』!」
カナタの02号機『インテルメッツォ』が、地上へ力強く着地した。
背負っていた巨大な多角形盾を地面へ突き立てると、周囲数百メートルに神聖なまでの青白い防護フィールドが広がる。エコーたちが放つ不協和音の攻撃がフィールドに衝突し、水の波紋のように消えていく。
「下がってていいわよ、カナタ。……そこから先は、私の計算の範疇だわ」
カノンの01号機『エチュード』が、カナタの盾の背後に膝を突き、アブソリュート・バイナリを固定した。
「論理整合完了。……座標、一三〇、二二〇、四五。……零」
盾の隙間から放たれた青い閃光が、住宅街を埋め尽くしていたエコーの群れを一閃した。
一撃で数体の怪異が情報の霧へと帰る。カナタが守り、カノンが穿つ。その完璧な「静」の連携。
「――お待たせいたしましたわ! 雑魚散らしはわたくしの専門分野ですわよ!」
上空から、紅金色の05号機『カプリッチョ』が急降下した。
ワカは扇状のバインダーを全開にし、パラソル兵装から高密度の浄化光を撒き散らす。
「奥義……『ノーブル・レゾナンス』! お掃除の時間ですわ!」
住宅街の屋根をなぞるようにして放たれた広域洗浄攻撃。
カノンの狙撃を逃れた残党たちが、ワカの圧倒的な「誇り」のエネルギーによって次々と浄化されていく。
「……アリア! 仕上げを!」
「うん! 行くよ、ウーヴェルチュール!」
三人が作り出した隙間に、アリアの04号機が銀の翼を広げて飛び込んだ。
リライト・ブレードが、空間に刻まれた『不当な空白』という名の文字を、鮮やかに切り裂く。
「……物語は、ここで止まらない! ……リライト完了!」
アリアの一撃が、崩れかけていた現実のテクスチャを力強く縫い合わせた。
ノイズは晴れ、夕暮れの穏やかな光が街に戻ってくる。
「……シンクロ率、全機平均九二パーセント。……完璧だな」
テツトの満足げな声が流れる。
四機の巨神は、夕焼けに染まる武雄の空に並び立ち、それぞれの旋律を響かせた。
組織的防衛。
それは、不条理に抗うための、彼女たちの新しい「定石」となった。
だが。
戦いの余韻の中で、アリアのセンサーが微かな違和感を捉えた。
消滅したエコーの残骸から、見たこともない『メタ・コード』が浮かび上がっては消える。
『WARNING: SATURATED-BOREDOM level rising...』
「テツトさん、これって……」
「……ああ。……アイツら(記述者)が、この戦いそのものに『飽き』始めている予兆だ」
テツトの声が、再び冷たさを帯びた。
戦いは、より深淵な虚無へと引きずり込まれようとしていた。
この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。




