表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/10

【第9話「決戦の幕開け」】


夜明けの赤い光が、世界を薄く照らし始めていた。

闇に包まれた魔導の迷宮を抜けた俺たち――アルド・レイヴァン、フィアナ、レイナは、再び戦場に立っていた。

空気は重く、剣戟の音が遠くから響く。

血と鉄の匂いが満ちる戦場は、運命の決戦を予感させる静寂を湛えていた。


「アルド……ジルが待っているはず」

フィアナの声は静かで、それでいて鋭かった。

紫の瞳に映る決意に、俺は深く頷く。

「わかっている。これが……全ての始まりだ」

双剣に纏う黒い焔は、未だに疼き続けている。

だが、その痛みはもう恐怖ではない。

力に変わる確信へと昇華されていた。


レイナが剣を肩に乗せ、口元に笑みを浮かべる。

「やっとあいつと決着がつけられるのね。いいじゃない、燃えてくるわ」

その瞳には、恐れではなく戦士としての昂ぶりがあった。


戦場の空気を切り裂くように、黒衣の影が現れる。

紅い外套を翻す男――ジル・カリス。

その瞳は、血のように紅く光っていた。

「来たか、アルド。お前の足掻きの終わりを見届けてやる」

その声は冷たく、底知れぬ力を孕んでいた。


「ジル……お前を超えるために、俺はここまで来た」

双剣を構え、息を整える。

この戦いに、もう迷いはない。

俺はこの瞬間のために、全てを賭けてきた。


フィアナがそっと祈りの言葉を紡ぐ。

レイナが剣を構え直し、口元を引き締める。

仲間の気配が、背中を押す。

(俺は……もう誰も失わない)


ジルがゆっくりと剣を引き抜く。

黒い刀身が空気を裂き、戦場に鋭い音が響く。

「さあ……見せてみろ。お前の双剣の真価を」

その声に、俺は双剣を握り直す。

黒い焔が刃を覆い、世界の音を遠ざけていく。


「これが……俺の答えだ」

息を吐き、双剣を振り上げる。

紅い瞳と黒い焔が、戦場で交錯する。

その瞬間、世界は再び動き出す。




紅い外套を翻し、ジル・カリスは黒い剣を構えていた。

その瞳は氷のように冷たく、どこまでも深い闇を宿している。

俺――アルド・レイヴァンは、双剣に黒い焔を纏わせ、その視線を真正面から受け止めた。


「アルド……気をつけて」

フィアナの声が、戦場の静寂を震わせる。

その瞳には恐れよりも、祈りと決意があった。

レイナは剣を肩に乗せ、口元に薄い笑みを浮かべる。

「やっと決着の時ね。絶対に……負けない」

仲間の想いが、俺の胸を熱くする。


「ジル……これが、俺たちの運命の決着だ!」

声を張り、双剣を構える。

黒い焔が刃に絡み、冷たい光を帯びる。

その光が、戦場を赤く照らす血の色に溶けていった。


ジルの唇が薄く歪む。

「面白い……その目だ。俺を退屈させるなよ、アルド」

その声に、胸の奥が鋭く疼く。

けれど、恐れはない。

俺はこの戦いのために、全てを捧げる覚悟を決めていた。


足元を踏みしめ、俺は踏み込む。

双剣を振るう。

その軌跡が、世界の色を裂くように鋭い。

ジルの黒剣が応えるように弧を描き、火花を散らす。

鋼の叫びが戦場を支配し、血の匂いが濃密に広がる。


(これが……俺のすべてだ)

一太刀ごとに、全身の力が奪われていく。

それでも、剣を振るうたびに確信が深まる。

俺は、誰かに託されるだけの剣士じゃない。

この双剣に、俺自身の運命を刻むためにここにいる。


ジルの瞳が微かに揺れる。

その視線には、わずかに驚きと――何か遠い痛みがあった。

「なぜだ……なぜお前は、そこまで抗える……」

その問いに、俺は声を張った。


「誰かに託された命がある。誰かの想いがある。だから……俺は抗う!」

双剣を握る手に、仲間の声が響く。

フィアナの祈りが、背を押す。

レイナの剣戟の音が、俺を奮い立たせる。


「俺たちは……運命を超えるために戦っているんだ!」

渾身の力で双剣を振り下ろす。

ジルの剣とぶつかり合い、世界が一瞬、無音に包まれる。

火花が散り、血の匂いが濃くなる。

だが、俺は決して退かない。


ジルの剣がわずかに軋む。

その瞬間、俺の瞳に迷いはなかった。

「ここで……終わらせる!」

声を絞り出し、双剣をさらに振り抜く。

その一太刀は、運命を斬り裂く旋律そのものだった。


血飛沫が戦場に咲き、ジルが僅かに後退する。

その瞳には、確かに俺の存在が映っていた。

「アルド……お前……!」

その言葉は、戦場の風に溶けていく。


俺は深く息を吐き、双剣を構え直す。

戦いは終わらない。

だが、この一瞬で確かに感じた。

俺たちは、運命を超えられる。

仲間と共に、この戦いを生き抜く限り――。

お読みいただきありがとうございます。

よろしければ、下の☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると大変励みになります!

他にもたくさんの作品を投稿していますので見て頂けると嬉しいです

https://mypage.syosetu.com/2892099/

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ