【第7話「交わる運命の調べ」】
夜明け前の冷たい空気が、神殿跡の石壁に白い靄を纏わせていた。
双剣に黒い焔を宿した俺――アルド・レイヴァンは、そこに立っていた。
背後にはフィアナとレイナ。
二人の存在が、闇に覆われたこの世界で俺を支えてくれている。
「この力……俺は、もう恐れない」
双剣を見下ろす。
その刃には禁忌の力が纏い、黒い光が蠢いていた。
冷たい痛みがまだ腕を蝕んでいたが、心は静かに燃えていた。
フィアナの紫の瞳が、そっと俺を見つめる。
「アルド……その力を、本当に使うのですか」
その声には、恐れよりも祈りの色があった。
俺は深く息を吐き、頷く。
「この力を手に入れたのは……運命に抗うためだ」
誰かに背を預けるだけでは届かない。
この力を、俺自身の意志で振るわなければならない。
レイナが剣を肩に乗せ、口元に笑みを浮かべる。
「やるじゃない、アルド。だけど……無茶だけはしないでよ」
その声は軽やかだが、瞳には鋭い光があった。
夜明けの空がわずかに赤く染まり始める。
それは、血の色のようでもあり、戦場の夜明けを告げる色でもあった。
「俺は……この双剣で、運命を超える」
低く呟く声に、自分でも震えを感じた。
だが、その震えは恐怖ではなかった。
フィアナがそっと俺に近づく。
「私も……あなたと共に戦います。この世界の終焉を、絶望を……私たちで断ち切りましょう」
その言葉が胸に深く届き、双剣を握る手に力がこもる。
神殿跡の闇が微かに震えた。
黒い焔を纏った双剣の先に、微かな光が差し込む。
それは、未来への道標のように感じられた。
(俺たちは……まだ終わらない)
「行こう、フィアナ、レイナ。俺たちの戦いは、ここからだ」
声を張り、足を踏み出す。
夜明けの空がさらに赤く染まり、神殿跡に光を落とす。
その光の中で、俺は確かに感じていた。
この力は、俺だけのものではない。
仲間と共に戦う、その誓いの証だ。
神殿跡の深い闇が、俺たちを飲み込もうとしていた。
それでも、俺は双剣を握る手を緩めなかった。
フィアナが祈りの言葉を紡ぎ、レイナが剣を構える。
この瞬間、俺たちは確かに一つの調べを奏でていた。
「アルド……その力を、私たちは支える」
フィアナの声は震えながらも、強い光を宿していた。
双剣に纏う黒い焔が、微かに揺らぐ。
その力は、俺だけでは支えきれないものだった。
だが、仲間がいる――それが俺の力になる。
レイナが口元に笑みを浮かべ、茶色の瞳を鋭く光らせる。
「行こう、アルド。私たちで、未来を奪い取るんだ」
その言葉に、胸の奥で熱い炎が滾る。
剣を振るうたびに刻まれる、俺の運命。
その運命を、今度こそ超える。
黒い焔が再び強く輝き、双剣の刃を覆う。
それはまるで、闇と光を同時に纏うような美しさを持っていた。
俺は深く息を吐き、瞳を閉じる。
(この力を……必ず、仲間のために使う)
「フィアナ、レイナ……行くぞ!」
声が戦場の静寂を破り、夜明けの空に響く。
双剣を振るう。
刃が空気を裂き、黒い焔が闇を切り裂く。
世界が震えるような音が響き、瓦礫が砕け散った。
フィアナの祈りが、俺の背を押す。
その声は、運命を超えるための調べのように美しかった。
レイナが剣を振り抜き、眷属の影を切り裂く。
血飛沫が舞い、戦場に新たな色を刻む。
(俺は……もう恐れない)
剣を振るたびに、痛みが全身を貫く。
だが、その痛みすらも俺の覚悟の証だった。
双剣に宿る黒い焔は、確かに俺の力になっていた。
戦いの果てに、ジルの声が微かに響く気がした。
「アルド……お前は、どこまで抗える?」
その問いに、胸の奥で静かに答える。
(俺は……この運命を超えてみせる)
仲間と共に奏でる調べは、運命の鎖を切り裂く旋律。
その音は、まだ小さな響きかもしれない。
だが、確かに未来を切り拓く一歩だった。
「レイナ……フィアナ……ありがとう」
声を絞り出す。
二人は微笑み、そして剣を構え直す。
その瞳には、もう迷いはなかった。
黒い焔を纏う双剣を握り直し、俺は闇の奥へと足を踏み出す。
世界はまだ終わらない。
運命はまだ抗う。
だが、俺たちはそれに屈しない。
闇の奥から響く運命の調べを、俺たちは自らの剣で奏でる。
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