【第3話「囚われし双剣の誓い」】
夜明け前の空は、まるで世界が目覚めを拒むかのように深い闇を湛えていた。
戦の喧騒が去った後の荒野には、折れた剣や鎧が無残に転がり、血の匂いが夜風に運ばれている。
その中で俺――アルド・レイヴァンは、焔のように滾る決意を胸に、フィアナと共に歩いていた。
「……足は大丈夫か?」
隣を歩くフィアナが、そっと声をかける。
俺は深く頷き、双剣を握り直す。
「問題ない。あの戦いで得た覚悟は、もう揺らがない」
血に濡れた双剣は、重く冷たい。
けれど、その刃に宿るものは俺の全てだ。
フィアナは静かに目を細め、夜明けの気配が微かに滲む空を見上げる。
「あなたの瞳には……強い光が宿っていますね」
その声はどこか嬉しそうで、けれど儚げだった。
歩を進めるごとに、夜風が二人の髪を揺らす。
世界はまだ暗い。だが、俺の心には確かな光がある。
「俺は、この双剣に誓った。誰も、二度と失わせないと」
その言葉は、闇に溶ける祈りでもあった。
(過去の過ちも、失った仲間の声も――すべて背負っていく)
フィアナはそっと微笑み、銀の髪を揺らす。
「アルド。運命を超える剣……それは、あなたの心そのものです」
その言葉に、胸の奥が熱くなる。
俺はまだ足りない。けれど、諦めることだけはしない。
「王都へ向かう道は険しい。ジルが黙って見逃すとは思えない」
低く呟く俺に、フィアナは小さく頷く。
「だからこそ……私たちで、切り開きましょう」
その声には、迷いがなかった。
闇を抜けた先に、淡い光が射し込む。
朝日の気配が、戦場を遠くから照らし始めていた。
その光に、俺の双剣が微かに輝きを返す。
(この双剣は、俺の運命だ)
仲間の声が、胸の奥で蘇る。
俺はもう一度、剣を握り直す。
「行こう、フィアナ。俺たちの戦いは、これからだ」
足元を踏みしめ、夜明けの大地を踏みしめる。
まだ見ぬ未来へ――その一歩を刻むために。
夜が明けきらぬ戦場の静寂に、鋼の音が響いた。
フィアナの瞳が祈るように閉じられ、レイナが無言で俺の背中に剣を重ねる。
その気配が、俺の心を奮い立たせる。
俺――アルド・レイヴァンは、迷わずに双剣を握り直した。
「アルド……あなたは、あの夜の誓いを忘れていないのでしょう?」
フィアナの声は小さく、それでも戦場に届くほどに確かだった。
(ああ……俺は忘れない。俺の双剣は、あの夜に誓ったのだから)
胸の奥に甦る記憶。
闇に飲まれそうになったあの日、俺は確かに誓った。
もう誰も失わない、と。
「レイナ……お前がいる限り、俺は折れない」
レイナは短く笑い、茶色の瞳を鋭く光らせる。
「なら、背中は任せて。私が必ず支える」
その言葉が、血を巡らせる。
神殿跡の奥から、不気味な呻き声が響く。
黒い影が蠢き、鋭い爪を煌めかせて俺たちを試すように迫る。
それは人の形をしたものの成れの果て――闇に魂を喰われた眷属。
フィアナの祈りの声が微かに震える。
「来ます……アルド、レイナ……」
「上等だ……行くぞ!」
レイナの声に応え、俺は双剣を構える。
影が牙を剥き、世界を塗り潰すように迫る。
だが、俺の心に迷いはなかった。
(俺は……この双剣で運命を切り拓く!)
双剣を振るう。
刃が赤黒い血を撒き散らし、影の呻きが戦場を震わせる。
痛みが腕を突き抜ける。
だが、それすらも生きている証だ。
「アルド……!」
フィアナの声が届く。
その声に力をもらい、俺は更に踏み込む。
双剣の一閃が、影を裂き裂く。
血の匂いが濃くなる。だが、退かない。
「まだだ……俺たちは、ここで終わらない!」
レイナの剣が影を斬り裂き、鋭い視線を投げかけてくる。
「もっと見せろ……アルド、お前の決意を!」
その声に応えるように、双剣を交差させる。
影が呻き、闇の中に溶けていく。
戦場は再び静寂に包まれるが、その静寂の中で確かな手応えを感じた。
(これが……俺たちの絆だ)
「アルド……あなたの双剣は、運命を切り裂く」
フィアナが呟き、紫の瞳に光を宿す。
俺は深く息を吐き、双剣を構え直す。
「まだ……これからだ。俺たちの戦いは、これからだ」
戦場に朝の光が差し込み、冷たい風が血の匂いを遠くへ運んでいく。
その光の中で、俺は再び双剣を握り直した。
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