Ep06 Tiara─対決?─
新キャラてぃあら登場回でした。
ありがとうございます。
「着いたわ。ここが──……私達のギルド ハウスよ。」
「こ、ここが……。」
『グリン・監獄林層』に鎮座する大樹。ホーリー・ヘイム。その根元に堂々と構えられたアーテルの拠点。
ギルドハウス。『黒竜の帝国』
まず目に入るのはでかでかとギルドハウスの天辺に装飾された黒竜の紋章。
その象徴たる紋章、豪壮な外観にはアーテル、そしてギルドメンバー達が資金を幾ら注ぎ込んだか分からない。
それを見るこいぬの瞳が衝撃によって今にもこぼれ落ちそうである。
「一体、いくらかかったんですかこれ……。採掘場のレアアイテムも…こっ、こんなに。凄い」
「……。そうねぇ、ギルメン皆で出し合って飾り付けてるから総額は思い出せないわ。」
「ななな。……アーテルさんのギルドパーティ…、レベチすぎる…。でも、凄い……。凄いですよこれは!!!」
「へへ。そう? そうでしょ? そうよね。うん、かっこいいでしょこれ。素敵な住まいよね。」
ずずずっと、無表情のアーテルがこいぬの方へと距離を詰める。
「は、はひ!! とっても……。とっでもぉー!! かっこかわいいです!! ぶひゃ。」
もっちりとアーテルの頬が当たった。というか、当ててくる。急に距離が近い。
こいぬは息を切らし、必死に抵抗する。
やっとの思いで引き剥がし、可動式の人形のように腕と手足を通常の状態に揃えアーテルを元の体勢にそっと戻した。
「ふぅ、アーテルさん……暴走しないで下さいよ……。びっくりしました。」
「ははは。やー、すまない。ついテンションがあがっちゃって」
「これ、家のギルドカード。さ、上がってよ」
「うぇ!? こっ、これがあの『銀龍騎兵』のギルドカード……。!? しかも、現ギルドランク最高のプラチナレベルのカード……。」
──ウィイイン。
……フィオオオン。
『ギルドカードの認証を確認。お帰りなさいませ、アーテル様。』
「さ、こいぬもスキャンして入って。」
「は、はい!! えーっと、ここかな。よいしょっと」
──ウィイイン。
『新規、メンバーの登録を開始します。手のひらをこちらの認証スキャナーにかざして下さい。』
「こ、こうかな? えい。」
──フィイイン。
『認証確認。こいぬ様。初めまして。ギルドナビゲーションNPC「アグノス」です。』
「は、はーい!! これからよろしくねー、アグノスさん。」
ギルド玄関の受付、ホログラム型ナビゲーターの『アグノス』に律儀に挨拶をするこいぬ。
「……んっ、って!! 登録までしちゃって私、このギルドにこれから入隊する気満々じゃない!!! ──やられた。」
アーテルのゆったりとした喋り口調のせいもあるのか、色々と乗せに乗せられるこいぬ。
「ぶつぶつ、言ってないでいくよー。こいぬ。この先の部屋に多分あの子居るから」
「は、はい!! 少々おまちを……!!」
しかし、彼女の目的でもあるPVPランカーをこのギルドで見つけるべく、そのまま大人しく入室。
「おじゃましまー……。わぁ!! やっぱり中まで龍たっぷりなんですね!! すっーーごい!!!」
上がると、竜、龍、りゅうの龍づくしの装飾や置物のアイテムがぎっしりであった。そしてたまに花。この花のセンスだけアーテルの物では無いだろうと言う、違和感を感じる。
きっと、別のギルドメンバーの置いたアイテムであろう。こぬはこの『秘密基地』感なセンスで心が高揚した。悪くない。
そして、アーテルとこいぬは長い長い廊下を歩き、目的の場所へと案内される。
──てとてとてと。
──ピタっ。
ギルドハウスの中に設置されたとある部屋へと到着する、アーテルはこいぬにこの中に居るプレイヤーを紹介したかったようだ。
「さ、ここよ。こいぬ。」
『『 てぃあらちゃま 睡眠or錬金中 起こすな』』のデカデカとした立板が部屋の前に置かれている。しかもその立板はゴテゴテにジュエルビーズでデコられている。
「……。うげ、何ですかこの部屋……。この部屋だけ他の部屋と比べて異質感を醸し出してるんですけど……。」
「まあね。変なやつには変わりないから。」
「ははは、そうですか……。で──。私にどうしろと?」
「うん、今多分普通にログってるっぽいから、勝手に開けてバトってみたら?」
「えええ!! そんな。いくら何でも失礼過ぎますよ!!」
「彼女、寝起きめちゃくちゃ悪いし機嫌屋さんだから寝込みを襲った方が怒りバフもあるし白熱した『バトル』が繰り広げられるんじゃないかなと。」
「……白熱するバトル──……!! なんて、至高の響き!! 頼もー!!!!!」
──バン!!
─ バン、──バン!!
勢いよく、扉をこじ開けるこいぬ。
さっきまで、失礼がどうこうなどを考えていた常識人と思えないテンションで他人様の扉をこじ開けた。
──が、この失礼行為は案の定裏目に出ることとなる。
もちろんの事だが、この行動がこの部屋の住人の安眠を阻害し、怒らせる。
「あぁ??? ──……だれだ……。人がぐっすり寝てる時に……。」