Ep0 十衣めいこは退屈していた。
VRMMOそれは全ゲーマーの夢。
革新的な映像技術、完全なるゲームへの没頭感。それを可能にしたフルダイブ技術『GO― 2』メモリ。それを開発した会社それが『vision社』である。
その『Vision社』自身が新たに2本目となる新作VRMMOを発売。
その名も『doragon・gate・online』前作『ENDLESS×ONLINE』を上回るコンテンツの量、さらに煌びやかな世界を実現。
稼働期間は本日で、約4ヶ月程度。
各々のプレイヤーはサービス開始初となる未だ未討伐の目的レイドボスを倒すため戦力増強に勤しんでいた……─── が。
周りの熱気とは裏腹に冷めたテンションで最深部攻略に挑むプレイヤーが1人。
気だるげで、瞼が重力に負けているこのやる気のなさそうな小柄な廃人ゲーマー少女、『十衣めいこ』は少し退屈していた。
足元まで伸びた長い髪に風になびいて揺れる金色の髪。
辺りに散らばるボスモンスターや高レベルモンスター郡の数々。
高難易度ダンジョン《真理の森グリン・獄林層》そのダンジョンから帰還した直後である。
「髪が乱れた……。この長い髪のスキン好きなんだけど、うーん、これは。」
「VRでの最大の難点ね。好みで選んだスキンが大きく戦闘に影響するなんて。さて」
右耳に付けた機能拡張デバイスをタップし、自分のアイテム欄を映写させ、それを死んだような眠そうな目でゆったり眺めながら指でスクロール。
「うん、順調順調。毎朝、早朝のソロ活もあるけど、ギルドのみんなのおかげで結構集まったかな。」
「……んー。もう少しギリギリでハラハラな戦いがしてみたいかな。」
『Dgo』は確かに近年稀に見る神ゲーだ。
しかし、彼女は退屈していた。
理由は簡単である。
彼女持ち前のオンラインゲームへの没頭力故、早々に戦闘カテゴリのコンテンツ、レベル、称号を容易く攻略し暇を持て余していた。
本人曰く、「ほんとうの本気は2ヶ月後に来るハーフアニバの超大型アプデ待ち」らしい。
最近では自分の装備、レベルが最大になってしまった事からメインの活動がギルドメンバーのお世話と言う始末である。
─── 大人気ゲーム「doragon・gate・online」*略して『D・g・o』
キャッチコピーは『──〜龍の扉を開き、未来を穿つ〜これは君の世界だ。次元を跨ぎ新しい旅へ』と、壮大なものである。
狩場から移動し《ナガツ高原》の大浴場で静かに佇むアーテル、彼女がこの物語の主人公。
『十衣めいこ』こと、ユーザーネーム『アーテル 』次のアプデまでにクエやダンジョンを必要以上に周回する事も可能であったが、それよりも今欲しい物は始めたてに得られていたあの『新鮮感』であった。
そう、彼女は新しい何かを今求めていた──。
「めんどくさいのは嫌だけど、手応えが無いのはもっと退屈。」
「……新しい団員でもさがそうかな。……。」
─── ピピッ。
腕に装着したスマート型アシストデバイスから通知を受け取り目の前にメッセージウィンドウを表示する。
フィオーン。
◇ ______________
・アーテルさんへ。
前言っていた探索の件ですが、
黒色ハガネお願いできないでしょうか……!
出来れば。よ、よろしくっス!!
求(0/3)
ペルナ
_______________◇
「ふむぅ、前に言ってたついでにアイテム集めてあげる件ね。把握。」
「なんてね。今でもうちの子達の面倒で手一杯だわ。」
さて、現実で仮眠とったら《サンドタウン》のポータルの続き、行こうかしらね。