I seek you
時は2030年。これは宇宙開発が進んでいく今日この頃の僕たちのお話。
(じゃあ、また後でね。)
彼女からの最後の言葉。たまに思い出す。それと同時に汗が出てくる。
(まずい、このままでは…)
一刻も早く彼女を探し出さなければ。無限の闇に消えていく彼女を。
日の傾く頃、研究所からさくらと共に帰路についた。家は同じ方向でいつも一緒。
僕の用事で待たせてしまうこともあるが彼女は慣れているようだ。今日も待たせてしまった。
「今日はずいぶん遅かったね。そっちでは何してるの?」
「今は服のサイズ調整かな。そっちは?」
「私は検査してたよ。体の調子とかね。」
彼女も着々と準備をしているようだ。
少し前に彼女は宇宙での実験体に選ばれた。
選ばれた理由は特になく若い者なら誰でもよかったらしい。彼女に拒否権は一応あったらしいが引き受けた。
理由はわからない。メリットなんてないのに。
「大変そうだね。僕も頑張るよ。」
笑顔でそう語りかけてくれる彼。
少し前に彼は宇宙船の乗組員に選ばれた。
ちょっとしたことだった。彼の父は宇宙飛行士だ。その父親から誘われたらしい。共に行かないかと。彼はもともと宇宙にあったらしい。
「どうしたの?」
彼が尋ねてくれる。
「何もないよ」
自分の影を眺めながらそう呟いた。