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第9話 最低限やるべき事

『師匠、俺と勝負しませんか』


「なんて言うからにはそれなりの固有スキルを手に入れたのかと手合わせして見りゃ、何がしたかったんだ?」


ダンジョンで固有スキルを手に入れ、俺は多分調子に乗っていたのだろう。


倒れて動けなくなった俺を見て、師匠が不思議そうな顔をしている。


「何がしたいって、固有スキルを試したつもりだったんですけど、不発だったみたいです」


俺の予想とは反し固有スキルは不発、ただただ師匠にボコボコにされただけだった。


ゆっくりと体を起こしながら冒険者証を取り出し、

スキルの書かれた場所に触れ説明文を表示させる。


『スキル:一視同仁(いっしどうじん)

対象のレベルを自身のレベルに一律化する。

対象範囲は設定可能、解除するまで効果は継続。

使用する度に自身のレベルが1減少、レベル1以下には減少しない』


レベルの上がらない俺には打って付けのスキルだ。


と思ったのだが、師匠に効かないという事は何かしら条件があるのかもしれない。


「見せてみろ」


師匠が俺の横から顔を覗かせる。

すると師匠の師匠が俺の肩に乗っかって、って俺は何を考えてるんだ、違うんだよ俺も健全な男子高校生だから仕方ないと言うか、いや高校は卒業したんだったわ。


そんなことを考えながら師匠の顔を見る。

その表情を見てぞわりと鳥肌が立つ、まるで好物の獲物を見つけた肉食獣の様に目をギラつかせ、口角が引き上げ笑みを浮かべていた。


「このスキルは私には聞かないってだけだ、ステータスが無いからな」


なるほど、ステータスが無ければ下げるレベルも無いって事か。


「いやいや、師匠はレベル99のはずですよね」


こんな強い人にステータスが無いと言われても信じられるわけが無い。

ただ、俺のスキルが効かなかったのも事実なんだよな。


「色々と事情があるんだよ。まぁ、お前が冒険者ランキング10位以内に入ったら、その辺は教えてやるよ」


こう言うからには、これ以上聞いても教える気は無いだろう。

ランキング10位か、いつになることやら。


「だが、このスキルのおかげで今後の方針が決まったな。まずは今まで通り、いや、今まで以上の訓練をしてもらう。お前のスキルは素の戦闘力がものをいう、これから本格的に天明流体術の修行に入るからな」


俺のスキルは実質相手のレベルを1にするスキル、かなり強いスキルではあるが、レベル1だろうと強いモンスターは強いし、俺より戦闘能力の高い奴には勝てない、師匠とか。


「例えばサポートに徹すれば、俺の戦闘能力は必要無いのでは?」


モンスターのレベルを1に出来れば、後は仲間が倒せばいい。

それならあまり俺の戦闘能力が無くても良いだろう。

いや、強くなるに越したことはないんだけど。


「オススメはしないぞ。理由は簡単、まずモンスターのドロップ品はレベルに応じて決まる。大半の冒険者はこのドロップ品で金を稼いでいるから、レベル1のモンスターを倒す意味はほとんど無い。次にお前のスキルの範囲に人間が含まれるのが問題だ、今の世の中はレベルの高い奴が優遇されている、それを脅かす存在なんて下手をすれば潰されるぞ。お前はレベル上限のせいでただでさえ悪目立ちしてるからな、固有スキルの内容を隠しておく位が牽制になって丁度いいだろうよ。一応言っておくが、さっきみたいに冒険者証を横から覗かれるなんて下手は打つなよ?そして何より、実績の無いお前とパーティを組むような酔狂な奴はいない、下手したら受付で職員に止められるまであるぞ」


ぐはっ、師匠の正論パンチが痛い。

なるほど、つまり俺に必要なのは強さと実績。

せめて受付で止められない程度は必要だろう。


強さは師匠の元で修行すればいいとして、実績はそうだな、東御(とうみ)ダンジョンの完全攻略ってところだろうか。



△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼



『東御ダンジョン地下10階層』


「ああ、クソ逃げんな!」


あれから1週間、遠御ダンジョンを攻略し続けて分かったことがある。

このダンジョンが人気の無い本当の理由だ。


まずこのダンジョン、1日1回しか入ることが出来ない。

更に1フロアに留まれる時間は10分、それ以上経過すると強制的にロビーに戻される。

このダンジョンは全20階層、途中から開始することも出来ない。

つまり3時間足らずの時間で20体のBOSSを倒さなければ完全攻略できないのだ。


俺のスキルはこのダンジョンとの相性がいい、だから3日と掛からず半分の10階層までこられる様になったのだが。


その後4日、俺はこの階層のBOSS、フレイムウルフを倒せずにいた。


フレイムウルフと言うだけあって火を吹くのだが、レベル1にすると1回火を吹くだけでMPが切れるらしく、そうなるとこいつはガン逃げを始める。


ウルフだけあって足が早く、追いつかずに10分経過してしまうのだ。


とは言え、レベルを下げなければ太刀打ちできない。


「クソッタレがああああ!!!」


俺はそう叫びながら青い光に包まれロビーに投げ出される。


「ようボーズ今日もダメだった見てぇだな」


フレイムウルフとの全力の追いかけっこで上がった息を整えていると、光亮さんが話しかけてきた。


「こんな所で何してるんですか、光亮さん」


師匠と来た初日以降、俺は1人でここに通っている。

卒業式の日には光亮さんの授業は終わっていたから、会うのは1週間ぶりだ。


「いやなに、そろそろ10階層辺りで躓いてる頃かと思ってな」


図星を着かれて俺は顔をひきつらせる。

光亮さんもこのダンジョンを攻略したことがあるらしいから、俺の実力から詰まりそうな所は予測できるのだろう。


「はい、どうしてもフレイムウルフに追いつけなくて」


思い出すだけでイライラしてくる、あのガン逃げ野郎、定期的に振り向いて煽ってきやがる。


挿絵(By みてみん)


「お前は真面目が過ぎるんだよ、素直に追いかけっこしてやる必要は無いんだぜ?要は倒せりゃ良いんだからよ」



△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼



翌日、俺はまた10階層の、フレイムウルフに挑んでいた。


「いやまぁ、確かに倒せれば良いんだけど、何かなぁ」


俺は目の前で動けなくなったフレイムウルフにナイフで止めを刺す。


通常10階層のBOSSともなればそれなりにレベルが高く、状態異常への耐性もある。


だがその耐性もレベル1に下げてしまえば、この通りだ。


密閉されたフロアに毒ガスを巻き、自分はガスマスクを付けておけば……。


そりゃね、倒せりゃ良いんだけどさ。


釈然としない。


まぁ、他に人が居たら出来ない攻略法だし、普通のダンジョンでは出来ないし、そもそも毒を用意する費用も馬鹿にならないから、そう易々とできる攻略法ではないけど。


釈然としねぇえええ!!!!!

読んで頂きありがとうございます。

固有スキル+毒の凶悪コンボ。

修行も兼ねてるのでこんな事を教えた光亮さんは師匠に……。


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