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第88話 最下層に住う王

「よう、久しぶりだな源志(げんし)、元気そうで何よりだ」


「なんであなたがそこにいるんですか、光亮(こうすけ)さん!」


 思わず声が大きくなる。

 混乱した頭の中で色々な可能性が駆け巡る。


「そりゃお前、俺がガルムだからだぜ?それ以外に理由があると思うか?」


 その言葉に思わず絶句する。


「はぁ、タダでさえ招いた覚えもねぇ客が、俺を無視して喋ってんじゃねぇよ。寂しくて殺したくなるじゃねぇか」


 ガルムのボスなのだろう、女を侍られた派手な見た目の男が、無視されたことに怒りを露わにする。


 冗談のような状況、しかし間違いなく背筋が凍る程の殺気をこちらに放っている。


略奪者(ハデス)ともあろう男が、そんな器が小さくていいのか?」


 風間(かざま)さんが俺を下がらせながら前に出る。


 そうだ、冷静になれ俺、光亮さんは気になるが、ここは一度風間さんに任せよう。


「お前が無事にここへ着くとは正直予想外だったぜ」

 

「良く外れそうな予想だな」


「クソババァの犬風情が調子に乗ったこと言ってんじゃねぇよ、ああ、イライラするぜ!これだから犬は嫌いなんだよキャンキャンキャンキャンキャンキャンキャンキャンキャンキャンキャンキャン」


 風間さんにハデスと呼ばれたガルムのボスが、狂ったように言葉を放つ、それと同時に左側に寄り添っていた女性が苦悶の表情を浮かべ始める。


「おい、何してんだ!」


 思わず声を上げる、しかしそれが逆にハデスの琴線に触れてしまう。


「だからテメェに発言を許可した覚えはねぇんだよ!ここは俺の城だ、んで、俺がその王何だよ!分かるか?え?」


 何かが潰れるような嫌な音が響く。


 先程まで苦しそうにしていた女性が、力なく床にずり落ちて行く。


 あまりの光景に目を疑う。


 この男は、この王は、人の命すらこんなにも容易く奪うのか。


「おいおい、お前のせいで1人潰しちまったじゃねぇか。おい!このゴミその辺に捨ててこい」


 床に倒れた女性を足蹴にし、それから右側にいた女性を愛で始める。


 異様なのは、先程まで共に可愛がられてた女性が殺されたというのに、その女性は素直にそれに応じている。


 いや、よく見れば手が震えている。


 逃げたら最後、より酷い目にあうのだろう。

 彼女にとって、あそこは死地でありながら最も安全な場所なのだ。


 地獄、その表現が良く似合う、ハデスとはよく言ったものだ。


 これ以上ハデスを刺激しないよう、俺は感情を飲み込み押し黙る。


「それで、どうする。ここでそのまま始めるのか?」


「せっかく招いてやったってのに、血の気の多い野郎だな、酒でも1杯どうだ?犬にも美味さがわかる安酒なら振舞ってやるぜ?」


「生憎、ゲスに振る舞われる不味い酒は飲まないことにしているんだ」


 風間さんが間髪入れずにハデスを煽っていく。

 その度に女性がビクついていて、正直見ていなれない。

 だが今ここで動けば余計な死体が増えることになる。


「味もわかんねぇくせに一丁前にほざくじゃねか。それにしても、ここに来るのは3人のはずだってのに、礼儀も知らねぇガキが1人に、妙なロボット、それに……あ?おいおい、何でうちの商品が出歩いてやがる」


 (そら)を見るやいなや、ハデスの目の色が変わる。


「ボス、あれは神崎(かんざき)が捕まえ損ねた猫かと」


 新しい女性を連れてきた黒服がハデスにそう進言する。


「なるほど、あの白猫の子供か、ありゃ傑作だったよなぁ。誰にも汚されないとばかりに鎮座してたやつを引き摺り倒した時の顔は忘れられねぇぜ!おい、誰かあいつの父親呼んできてやれよ!」


 ハデスのその言葉を聞いて周りの黒服達が一斉に笑い始める。


「ボス!そりゃ無理ってもんですよ、あんまりにも父親候補が多すぎて、集めるだけで日が暮れますぜ?」


「それもそうだな!代わる代わるされる度に増してく憎悪と来たら、今思い出しても笑いが止まらねぇぜ!」


 ああ、そうか、ここに来てから妙に白虎が騒がしいと思ったら、いや、無理もない、白虎の無念は痛いほど分かる。


「いいこと思いついたぜ?要らねぇやつを殺したら、マジで父親候補共を集めてあの子猫をおか」


「きっ!」「その汚い口を閉じなさい!!」


 漆原(うるしはら)さんが俺の言葉に被せるように声をあげる。


「はぁ、何かと思えば、出来損ないが急にどうしたよ」


「っ!」


「あ?何だらその反応、まさかと思うがあのババァ話してねぇのか?」


「やめろ略奪者(ハデス)!」


 ここに来て風間さんが急に取り乱し始める。


「こいつは傑作だな!4分の1だけの混じりもん、レベル上限が最大ってだけの、ババァが残した汚点、それがお前だろ漆原冴(出来損ない)


「なんで、その事を、あなた達が知ってるのよ」


 漆原さんの声が震えている。


 4分の1だけの混ざりもの?

 ……クオーター。

 なんの?

 ガルムが関係してる?

 師匠には、一視同仁が効かない。

 亜人(ハーフモンスター)にはレベルが無い。


 点と点が線で繋がる感覚、もしそうだとして、ガルムがその事を知っている理由。


 そんなの……。


「んなもん、」


「やめろ!堂坂(どうざか)!」


「風間ァ……お前のそういう表情も久しぶりに見るなぁ」


「堂坂!!!」


 風間さんがハデスに襲いかかろうとした途端、どこからともなく現れた黒服が風間さんを蹴り飛ばず。


「簡単な話だぜ、最初に亜人の可能性に気づいて実験を始めたのがお前の曾祖父さんで、その実験のために集められたのが、俺達ガルム。そしてその最初の実験の被害者がお前の婆さんであり、それによって生まれたのが、お前の母親だからだよ。」

読んで頂きありがとうございます!

さぁ、やばい話が出てまいりました。

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