第87話 最上階の部屋
目の前に倒れた男が、光の粒子になって消えていく。
ダンジョンに吸収されたのだろう。
と言うことは、俺は直接この手で……。
思ったより何も感じない。
何となく感じる違和感、その正体を知るのが怖い。
自分の感情に背を向けるように、漆原さんの方へ振り向いた途端。
体に小さな衝撃が走る。
「来てくれた、本当に」
視線を落とすと、そこに居たのは震えた手で俺に抱きつく漆原さんだった。
「守るって約束したからな」
安心させるようにそっと頭を撫でる。
間に合って良かった。
「あーーー!何すちゅんだが!!」
遠くの方から声が響いてくる。
本当に最短ルートで案内して駆けつけてくれたらしい。
輝夜さんマジで優秀過ぎる。
「梅ちゃん!無事でよかった」
「ひょわえ!!漆原さん!」
すごい勢いで走ってきた服部さんに漆原さんが抱きつくと、服部さんがアワアワとし始める。
「どうやら全員無事のようだな」
「何とか間に合いました。強化ありがとうございました」
「うちのメンバーのピンチだ、手を貸さない道理は無いと言うだけだ」
風間さんのスキルのお陰で間に合った、俺のというか、白虎の力だけでは間に合わなかったかもしれない。
あ、いや、多分俺の力不足だな。
なんとなく白虎がキレているのを感じて訂正しておく。
「罠で飛ばされた人達とは、これで合流出来たわけだけど、どうします?」
ここにいるメンバーだけ見れば、このまま進んでも全く問題なさそうな面子ではある。
「どうするもなんも、合流待づに決まってら」
服部さんがそう声をあげる。
階層のおり具合から考えてもガルムのボスは目の前だろう。
だからこそ何が起こるか分からない、万全を期すに超したことは無いか。
「いや、このまま進むべきだろう」
以外にもそう言い出したのは風間さんだった。
「風間さんの意見に賛成だ、ガルムのボスは狡猾な野郎だ。この状況も既に把握してる筈、ここで逃がすとまた一から居場所を探すはめになる」
風間さんの前では猫を被ってんのかと思うほど従順な千國も同じ意見のようだ。
まぁ実際、千國の言う事も理解はできる。
この状況なら先行しても待っていてもあまり変わらないか。
確認をするように漆原さんへ視線を移す。
「穂高さんが率いてるから、直ぐにでも追いついてくるはずよ、私たちは信じて先に進みましょう」
ここまで来たら腹を括るしか無さそうだ。
慢心は良くないが、警戒し過ぎても倒せる相手ではない。
「服部、斥候は任せた」
「リーダーと漆原さんがそう言うなら」
服部さんも不安そうだが、それでも進むと決めたらしい。
「空、服部さんのサポートに回ってくれ」
「ギャウ!」
「行くぞ」
風間さんの号令で全員警戒しながら先へと進んでいく。
ふと振り向くとなぜか輝夜が止まっている。
「輝夜?」
「すみません等々力くん、直ぐに行きます」
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嵐の前の静けさと言うべきなのか、20階層までは呆気なく到達した。
だが20階層に到達した途端、雰囲気が重くなるのを感じる。
何よりも今までと違うのは、竹林を抜けた先にド派手な建物が立っていることだ。
荘厳な雰囲気にそぐわない。
ライトアップされたド派手な建物。
深層にたどり着ける人間はそういないとはいえ、こんなもん見られたら一発でおかしいと分かるだろ。
「どうやって建てたんだ?まさかダンジョンが生成した訳ないよな」
通常ダンジョン内は持ち主のない道具は消えてしまう。
もちろんこの建物が常に保有状態の可能性もあるが、普通に考えたら建築している間にも少しずつ消えていくはずだ。
「あれはガルムのボスのスキルだ、情報によるとダンジョン内で自身のテリトリーを確立できる能力らしい」
とすると、あの派手な建物が敵の本丸なのか。
警戒を怠らず進み、建物の前にたどり着く。
遠目で見て分かってはいたが、近づくにつれて核心へと変わる。
そこにあるのは4,5階建てのビル。
オシャレと言えばオシャレな外観をしているが、なんと言うか、完全にそういうお店と言う雰囲気だ。
ご丁寧に入口は自動ドアときた。
電気とかどこから供給してるんだよ。
いやまぁ、魔石を定期的に獲得すれば良いだけか?
開かないかと思った自動ドアはすんなりと開き、俺たちを迎え入れる。
「行こう」
風間さんにどうするか訪ねようとする前に、そう一言だけ話、中へと入っていく。
中の雰囲気も外観通りというか、高級そうなカーペットが敷かれ、その先で受付のカウンターが存在している。
そこには1人のスーツを着た男性が佇む。
「いらっしゃいませ、聞いていた人数より多いですが、まぁいいでしょう。ボスがお待ちですこちらへ」
受付にいた黒服の男性がエレベーターを呼び、頭を軽く下げながら俺たちが乗り込むのを待っている。
それにしても聞いていた人数ってどういうことだ?
少し不用心かとも思ったが、全員がエレベーターに乗ると、何事もなく最上階へとたどり着く。
そこにあったのはまさにといったような柄入りで重厚そうな扉。
扉の前に立っていた黒服2人がその扉を開けてくれる。
扉の先は無駄に豪華な店内といった雰囲気、いくつかの赤いふかふかそうなソファーが置かれている。
その中の一際派手なソファに、これまた派手な見た目の男が女を侍らせワインを煽っている。
しかし、そんなことより俺は目を疑う光景に凍りつく。
その男の横には、金髪の髪をオールバックにしサングラスをかけた、見覚えしかない男が立っているからだ。
「よう、久しぶりだな源志、元気そうで何よりだ」
「なんであなたがそこにいるんですか、光亮さん!」
読んでいただきありがとうございます!
皆さん忘れてないですよね、光亮さんのこと!
あの人ですよあの人!




