第83話 最悪の決断
あまりの光景に絶句する。
ってそんな事をしている場合じゃない!
「輝夜!!」
猛火の中へと俺が走り出そうとした瞬間、突風が吹き荒れる。
一瞬にして炎は消し飛び、焼けた大地が露になる。
あまりの光景に唖然とする。
何がどうなったらこうなるんだ?
「どうやら無事のようで安心しました、等々力くん」
無事?いやまぁ、俺自身は無事ではあるけど。
え??
「これって輝夜がやったのか?」
状況からしてそうだとは思うが、一応聞いておく。
「はい、しっかりと服部さんを守り抜きました」
なるほど、俺がザックリとしたオーダーを出した結果という訳か。
と言うか輝夜の背中にへばりついてる服部さんが、涙目になりながら恨めしそうにこちらを睨んできている。
まぁそりゃ、まわりが火の海とか人間的にクソ怖いよな。
今度お詫びに甘いものでもあげよう。
「そうか、良くやった。今度からはもう少しだけやり過ぎないように頼むよ」
何となく俺が褒めるのを待ってる雰囲気があったので、一応褒めておこう。
「等々力くんがそういうのであれば、次回からは気をつけます。私も少々やり過ぎたかなとは思っていましたので」
思ってたんかい!
輝夜は意外にも思い切りのいい性格をしているらしい。
何となく真面目な優等生、それこそ早瀬さんっぽさを感じていたから、ちょっと驚きだ。
「いつまで駄べっているつもりだ、この状況であればここの敵は殲滅されているのだろう。さっさと次に行くぞ」
風間さんの言う通り、早く行かなければ。
「んだ、漆原さんばはえぐ助げにえがねど」
輝夜の背中にしがみついていた服部さんがぴょんっと飛び降り、勇み足で進もうとする。
「ちょっと待て」
それを止めたのは千國だ。
「な誰だが?わんどは急いでらんだ」
「誰でもいいだろ別に、急いでそうだからこそ止めてやったんだよ」
「なんだが?その上がら目線は」
「チッ、なら好きにしろ」
千國が面倒くさくなって不貞腐れてしまう。
何か考えがあったのだろうが、ここで俺が声を上げても逆効果だろう。
「梅子がすまない、何か案があるなら聞かせてくれないか?」
ええ?風間さんが謝ってるよ。
「あんたが謝ることじゃねぇよ」
千國が頭をかいて困ったような素振りを見せる。
いや、こんな千國見た事ないんだけど?
何でこの2人会ったばかりでこんな打ち解けてんの?
「おい等々力」
え?俺?
急に千國に声をかけられ身構える。
「お前この間のダンジョンでやってたマップ把握、出来ねぇのか?」
マップ把握、ああ、ドローンを使ってやったやつの事か。
良く覚えてたなこいつ。
だけどあれは早瀬さんがいたからできた事だし、それにまた気絶したら厄介だ。
「私がサポートすれば問題なく使えるはずです、いい案かと」
??
確かに魔導ドローンは輝夜の中にあるけど、早瀬さんがいない問題はどうするつもりなんだ?
「まぁ、輝夜がいうならやってみるか」
輝夜の背中に触れ、意識を集中させる。
気を許してくれているとかそんな話なのだろうか。
すぐに大天狗の魔石と魔力が馴染むのを感じる。
「アクティベーション"大天狗"」
大天狗の魔石が活性化した様に感じたが、それだけで、あの時のような感覚は全く感じない。
「問題なくマッピングできたようです。漆原さんの所まで最短ルートかつ、敵の遭遇を避けつつ案内します。どうやら急いだ方が良さそうな状況のようですし」
そんなことできるの?輝夜さんってもしかして超優秀?
ていうか、今繋がった時に感じたのって、早瀬さん?
何でそんな気がしたんだろう。
まぁ、良いか、今は急ごう!
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「空ちゃん大丈夫?」
雑兵がいくらいても、多少強いモンスターがいても相手にならないと思っていたのに。
この状況は最悪過ぎるわ。
「ギャウ……」
空ちゃんも連戦続きでかなり消耗してる。
まさか天明流の弱点をついてくるなんて。
奥でニヤついている男が恨めしい。
継戦能力に優れた天明流の弱点、それは酸素が身体に供給できない状況。
例えば海の中や、物凄い高所。
お母さんが言うにはそれでも天明流を極めればあまり問題は無いって話だけど、残念ながら私はその域に達する前に天明流の修行から離れざるを得なかった。
空ちゃんも天明流を使えるらしいけど、まだまだ修行の途中でそこまでには至っていない。
「空気を操るスキル、厄介すぎるわ」
「へへへ?そうだろうよ。テメェの出自からその力の根幹が、天明流だって知った時は驚いたぜ?まさに俺が天敵だってな。そのお陰で俺は幹部としていい思いができる。お前には感謝してるんだぜ?」
どこから情報が漏れたっていうの?
お祖母様はお母さんの事、物凄い隠してる。
普通に調べたって分かるわけないのに。
「やれお前ら、何を思ってかそいつらはお前らのこと殺す気がねぇみたいだからよ」
男の指示を聞いて、亜人達が次々と襲いかかってくる。
こいつら、どれだけの亜人達を使役してるの?
許せない、ほんとうに許せないわ。
「ハッハッハ、良いねぇ、苦しそうだなぁ、そんなテメェを使役するのはさぞ楽しいだろうなぁ」
男が下卑た笑みを浮かべてくる。
本当に気持ちが悪い。
「あっ!!」
気持ちが揺らいだ瞬間、その隙を見逃さない亜人に剣を弾き飛ばされる。
まずい!
「ギャウ!!」
そう思った瞬間。
飛びかかって来た亜人の首を空ちゃんが跳ね飛ばした。
その身体の周りには風が渦巻いている。
まるで呼吸の為の空気を掻き集めているかのように。
「空ちゃん……」
私が踏ん切りをつけられないから。
「ギャウギャウ」
私の方を向いた空ちゃんが、任せてとばかりににこりと笑った気がした。
次の瞬間、駆け出した空ちゃんが次々と亜人を狩っていく。
弾かれた剣を握り、私はある決意を固める。
ああ、ごめんなさい。
「空ちゃんにだけ、背負わせたりなんてしない」
振り向きざまに一突き、亜人の首を刺し貫く。
苦しそうな表情で、こちらを見ている。
今はこの心の痛みはしまっておくんだ。
「ガルム、貴方たちだけは、もう絶対許したりなんかしないわ!!」
読んで頂きありがとうございます!
色んな人達の思惑が入り乱れる戦い!
果たしてどうなるんだ?




