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第82話 最大出力はやり過ぎです

輝夜(かぐや)、オーダーだ、服部(はっとり)さんを守れ!(そら)漆原(うるしはら)さんを頼む!漆原さん!!」


等々力(とどろき)くんが自分の名前を呼んでくれる。

その嬉しさを感じながらも、彼から離れなければならないことに少し寂しさを感じる。


「アクセプト」


それでも彼がそれを望むなら。


普通に行くのではあの転移に間に合わない。

スラスター最大出力、しかし等々力くんの方へは影響が出ないよう繊細なコントロール。


一瞬にして服部さんと呼ばれた女性の傍までたどり着くと、視界は光に包まれる。



▲ ▽ ▲ ▽▲ ▽ ▲ ▽▲ ▽ ▲ ▽▲ ▽ ▲ ▽▲ ▽ ▲ ▽



罠である以上当たり前だけど、やはり周りに等々力くんの姿はない。


「なすてづいでぎだの、わっきゃ1人でも大丈夫なのに」


隣にいる服部さんが何かを言っているが、よく分からない。

彼女の独特な言葉遣いはデータ処理のノイズになりそうであまり好きになれない。


「推測するに、どうして来たのかと問われているようですが、等々力くんの命令は絶対です、ただそれだけの理由ですが、あなたの安全は保証いたします」


「だはんでわっきゃ一人で戦えますはんで、寧ろ彼の方弱ぇびょん、それに漆原さんもはえぐ助げにえがねど」


また聞き慣れない言葉で何かを騒いでいるけど、問題はこの状況です。


彼女は斥候としてかなり優秀のようですが、何となく複数の気配を感じます。


これが一斉に襲ってくれば、苦戦を強いられることになるでしょう。


彼女を守りながら今の状況を打破するには……。


「あの人を頼るしかありませんね」


「わんつか聞いでらんだが?」


ぴょんぴょんと視界の前を飛び跳ねる服部さんは無視して、今は私を構築する深い部分へと意識を集中させる。


『聞こえますか?早瀬 結月(はやせ ゆづき)


『え?え?なに?誰??』


どうやら上手く繋がったようです。


『私は輝夜です。緊急を要しますので手短に、等々力くんが危険です。あなたの力を貸してください』


これくらい簡潔な方が寧ろ状況が伝わるでしょう。


『私はどうすればいい?』


ほら、やっぱり。

私はこの早瀬結月という人間について知りすぎている。

ああ、この等々力くんへの想いは、やはり……。

いえ、今は考えるのは後にしましょう。


『現在私の方よりあなたにパスを繋げている状態ですが、この力は元々あなたの力です。そちらからもう少しだけ太いパスを繋げてください。後はこちらで何とかします』


『分かった、やってみる』


早瀬結月、やはり優秀だ、一度こちらからパスを開いたとはいえ、直ぐに太いパスが繋がるのを感じる。


『凄い、これ、今の輝夜さんの状況?……敵に囲まれてる!?』


必要な情報は手に入った。


「無視すねでけへ」


「そこは危険ですよ?」


「へ?」


警戒心の足りない彼女の首根っこを掴んで退け、射線を確保する。


飛びかかってきているモンスターに手をかざす。


「ファイア」


雷の魔力を制御し、掌からそれを放出すると、一瞬にしてモンスターが黒焦げになる。


「どうも……。すたばてあれぐらいひとりで対処でぎだ」


ふむ、一応この方も感謝をすることは知っているようですね。

等々力くんへ敵意を向けているようだったので警戒をしていましたが、少しばかり扱いを改めるべきでしょうか。


「敵を一気に殲滅します、大変危険ですので、私の背に掴まっていてください」


「わんつか、なにするつもりだが?」


さっきの一撃を見たせいか、力一杯私の背にしがみついている、これなら安心です。


『早瀬結月、できる限り正確に敵の位置を共有願います』


『分かった、任せて』


早瀬結月の適応力に驚かされる。

もうパスの使い方を理解しつつあるようだ。

パスを伝って彼女のスキル、敵意感知の情報が伝わってくる。


「かなり敵が多いですが、この程度なら問題ありません」


「この程度って、ここにおるのは深層の敵ですよ!?」


「問題ありません、私のコアは最下層のボスの物ですから、レベルはともかく格が違います」


手始めにいちばん近くに来ている集団へと手を翳す。


「竹林で隠れているつもりでしょうが、今の私には見えていますよ?ファイア」


先程より出力を上げ、広範囲に雷を走らせる。


まさに落雷のような音を響かせながら、竹林と共にモンスターが焼けていく。


「少しやり過ぎましたか」

「少すどごろが、どう見でも過剰だす!」

「煙と炎で敵が炙り出されていますし、問題ありませんね、このまま行きましょう」

「問題すかねぇぇええ!!」

「ファイア、ファイア、ファイア」

「やめろじゃ、やめろぉぉおおおお!!!」


竹林は燃え盛り、そこら中で敵が倒れ、光の粒子になって消えていく。


煙に巻かれて道へと逃げ出てきた敵を、一体ずつ確実に雷で焼き払う。


しばらくその作業を続けていくと、道に出てくるモンスターも居なくなった。


「あらかた片付いた様ですね」


「どうするんだがこの惨状!?ゲホゲホッ」


おっと、煙が道にも充満してきて保護対象が咳き込んでいますね。

人間はその辺り不便そうです。

仕方ありません。


「煙を飛ばし火を消します、しっかりと捕まっててください」


核である大天狗の魔石に集中する。

その力を一瞬だけ一気に解放すると、空気がざわめく。

次の瞬間、暴風と共に煙と炎が掻き消える。


「……嘘だべな」


『早瀬結月、等々力くんの位置は分かりますか?』


『……えっと、やってみるね』


何やら少し歯切れが悪いようですが、気の所為でしょう。


『そこから目視で確認できそうな場所……後ろにいるみたいだよ?』


早瀬結月の言葉に振り向くと、そこには唖然とした顔をする等々力くんが立っていた。


「どうやら無事のようで安心しました、等々力くん」

読んで頂きありがとうございます。


輝夜さん強すぎ!

だけどそんなに魔力使って大丈夫なんですか?

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