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第79話 最善の判断とは

漆原(うるしはら)等々力(とどろき)!先行し過ぎだ!」


 風間(かざま)さんの大声が響く。


 しかし、俺たちが先行しなければ亜人(ハーフモンスター)はまた魔法で焼き払われてしまう。


 できる限り犠牲にはしたくない。


「似非「天明流 炎陽(えんよう)!! 」」

「ギャウギャウギャウ ギャンギャウ!!」


 炎陽、天明流における継続戦闘を手助けする攻撃の1つ、相手の体に加えた力をそのまま背後まで抜けさせる技だ。

 肉体をほとんど傷つけることは無いが、臓器を揺らし行動不能にする。


「この子っ、このモンスター達、首輪がついてる!多分私達の足止めをする為に襲わせてるだけ、まともに相手するとガルムに時間を与える事になるわ!」


「漆原の言いたいことは分かるが、だからと言って飛ばしすぎだ!お前は秩序之番人(コスモスウォーデン)の最高戦力、それこそ消耗は避けるべきだ」


「天明流の継戦能力を舐めないで、この程度全く問題ないわ」


「たくっ!また独断専行か、何度言えば。総員!漆原が道を切り開く、消耗を避けつつ一気に進む」


 納得はしないが漆原さんが先行する以上、そうするしかないという判断だろう。


「漆原さん、さっきからモンスターあえで無力化すてらよね、何が事情がありそうだす、わも手伝います」


「ありがとう(うめ)ちゃん、助かるわ」


「そったそったとんでもね」


 いつの間にか並走していた服部さんが漆原さんに感謝され照れている。


 しかし、本当にいつの間に現れたんだ?

 気配を消し、一瞬にして現れる姿はまさに忍者と言った感じだ。


「多重生成 捕縛穴」


 服部さんの指が地面に触れた途端、亜人達の足元に穴が空き、そこに落ちた亜人は次々と顔だけ出した状態で地面に埋められていく。


「凄すぎるな、これって服部さんが居ればガルムを何とか出来るんじゃ」


「なさ褒めらぃでも嬉すくね」


 めちゃくちゃ嫌そうな顔でこっちを見てくる。

 多分褒められても嬉しくないとでも言ってるんだろう。

 理由に察しはつくけど、随分と嫌われたものだ。


「等々力くん、何かがおかしいです、これまで襲ってくる亜人達に、私達を誘導している様な動きが見られます」


「誘導?輝夜(かぐや)それってどういう」


「ギャウ!!」


 輝夜の声に耳を傾けた途端、それも鳴き声をあげる。


 それに呼応するように、地面が光輝く、まるで転移陣に乗った時のように。


 転移トラップ!?


 風間さん達はまだ来ていない、漆原さんは?


 確認するとその足元にも別の魔法陣。

 さらに服部さんの足元にも1つ。


 まずい、風間さんも言っていたが、服部さんを1人にするべきじゃない。


 漆原さんも多勢に無勢ではいつまで持つか分からない。


 いや、他人の心配をしている場合では無いか?


「ギャウ!!」


 (そら)の鳴き声で思考が中断される。

 考えても仕方ない、直感だ。


「輝夜、オーダーだ、服部さんを守れ!空!漆原さんを頼む!漆原さん!!」


 俺は心の中で空に謝りながら首根っこを掴むと、漆原さんの方へ投げ渡す。


「アクセプト」


 輝夜も俺のオーダーを聞き入れて、瞬時に服部さんの方へ移動してくれる。


 これで少しは二人の生存確率が上がるだろう。

 問題は俺だ、もしこの転移トラップの先が亜人まみれなら終了、モンスターだらけなら種類によって、1番何とかなりそうなのは人間相手だな。


 さて、どうなるか。


蓮翔(れんと)、ここは任せる!急速に(プレスト)!」


 そんな声が聞こえたかと思うと、俺の横に風間さんが滑り込んでくる。


「なんで?」


「尺ではあるがコレが最善と判断した、凡夫にしては悪くない判断だ」


「は??」


 文句を言おうとした途端、視界が明るくなる。



 ▲ ▽ ▲ ▽▲ ▽ ▲ ▽▲ ▽ ▲ ▽▲ ▽ ▲ ▽▲ ▽ ▲ ▽



「よく分かんねぇ奴が転移してくるかもって話だったけどよ、まさかお前だったとはな。しかもちゃんとお目当ての奴も釣れてるじゃねぇか、俺は運が良いぜ」


 何となく、聞き覚えのあるやつの声がする。


 転移先は若干薄暗く、目が慣れるまで少し時間がかかってしまう。


 いきなり襲われていればヤバかったが、どうやら相手にその意思は無いらしい。


「おっと、こんなに薄暗くちゃ感動の再会もできねぇよな。」


「仕方ありませんねぇ、暗闇に抗う術を与えたまえ、光よ(ライト)


 ローブを纏っているのは魔法使いがニヤニヤと笑いながら辺りを照らす。


 聞き覚えがあるわけだ。


 バトルアックスを持った大男、ローブを着た魔法使い、ダンジョンに似つかわしくない紺色のドレスを身に纏った女。


 そして。


「クソっ……テメェが何でここに居やがる」


 ボロボロの姿で壁にもたれ掛かているのは、どう見ても千國 琥翔(せんごく たいが)だった。


「笑えるなだろ?こいつ、ケジメをつけるとか言って単身でここに乗り込んで来てんだよ、いくらスキルが強かろうが一人で何とかなるわけねぇのによ」


 大男は大きな口を開けて笑っている。


「何か面白いか?確かにそいつは馬鹿だが、お前らが笑っていいような人間ではねぇよ。」


 大男の態度に腹が立つ。

 確かに千國は色々と突っ走るところはある、捻くれて一度は足を踏み外した。

 それでもこいつなりに考えて、今は真面目に励んでいる。


「等々力」


「お前らは知らねぇだろうが、そいつは大学に入ってから何を考えたかボランティア部に入って慈善活動に積極的に取り組んでんだぞ、その見た目でだ。大方自分がやらかした事のケジメだとでも思ってんだよ。そんな馬鹿だが憎めんやつだ!そいつを笑って良いのはそういう一面をちゃんと知ってる奴だけだ!」


「等々力!!」


 千國が顔を真っ赤にしてこちらを睨んでくるのは鬼化しているからだろう。


 大体ボランティアだけで許されると思うなよ?

 ちゃんと俺に笑われながら自分の馬鹿さ加減を噛み締めろ。


「おい、もう茶番は終わったか?それじゃあそこ雑魚たちをさっさと片付けて漆原達と合流するぞ」


 風間さんが呆れた様子で辛辣な言葉を投げかけてくる。


「よう風間、相変わらずテメェはいけ好かねぇやろうだ」


「そういう神埼(かんざき)は相変わらず元気がすぎる様だな、人様に迷惑をかけないように家に引きこもっていたらどうだ?」


「風間!!!」

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