第74話 最強クランのマスター
掌の魔石に意識を集中する。
まるで眠っているかのようになんの反応もない。
そこに魔力があるのは分かる、それを制御する事はもう難しくは無い。
だが求める力はそれではない。
魔石の持つただ表面上だけの魔力では、力の数パーセントも使えていない。
意識すべきはさらに奥。
多分人で言う心みたいな部分。
そこに空への気持ちを重ねていく。
ゆっくり、しかし深く繋がり過ぎないように。
さらに言葉に出すことでその力の認識を固定化する。
「魂纏!!」
先程まで感じていた表面上の魔力などとは、比べ物にならない程の魔力が魔石から溢れ出す。
それは人の目に見える程の圧倒的な魔力量。
「何だそれは、スキル……いや、魔法か?」
風間さんが狼狽えるのを見て、俺はニヤリと笑う。
「強いていえば、魔石の可能性だ」
白虎の魔石自体が本来持つ力がある事は理解した。
だからこそ、その力を使いこなす為に努力した結果、たどり着いた答えのひとつ。
白虎の魔力による身体強化だ。
「何を訳の分からないことを、良いからかかってこい」
「言われなくても」
白虎の力は伊達じゃないぜ。
先程とは比べ物にならない速度で距離を詰め、拳を叩き込む。
「っ!?メゾピアノ」
さっきと比べてかなりに加速したにも関わらずガードされる。
しかも何故か、白虎の魔力が妙な揺らぎを見せて弱くなった。
「源志くん、風間さんは音楽魔法を使って周りに影響を与えるの」
音楽?とするとさっきから風間さんが口にしてるのは音楽用語か。
「中々変わった魔法を使いますね」
「漆原、余計なことを」
風間さんは憎らしそうな顔で漆原さんを一瞥する。
「余所見ですか?」
その隙を見逃さずに立て続けに蹴りを放つ。
多分だがメゾピアノは攻撃を弱くするんだろう。
ならその分、さっきよりも少しだけ魔力を込めてやればいい。
「調子に乗るなよ、緩やかに」
一発目の蹴りをガードされ、二発目の蹴りは受け流される。
流石に一筋縄では行かないか。
「調子になんて乗ってませんよ、ただ、どうやら攻撃は当たるようですけどね」
「ちっ、漆原といい貴様といい、今年の1年は礼儀がなっていないようだな。目上の人間には敬意を示す物だぞ!重々しく」
風間さんの言葉と共に急に身体が重くなる。
「くっ!?敬意ならありますよ、だから本気で戦ってんだ」
重くなった身体をさらに魔力をねって補う。
とは言っても流石にこれ以上は厳しい。
手の先に少しだけ白と黒の体毛が生えてきている、白虎の力を制御しきれていない証拠だ、これ以上の強化はまずい。
フェイントを織り交ぜて攻撃をしていく。
格上相手の戦い方は、嫌という程身体に染み付いている。
徐々に風間さんのガードを掻い潜り、攻撃が当たり始める。
「この!?」
苦し紛れの攻撃を回避し、がら空きのボディへ蹴りを入れる。
「ピアニッシモ!」
完全に入ったと思った攻撃は、全く手応えが無い。
まずい、体勢が悪過ぎる。
踏ん張れない状態で思いっきりぶん殴られる。
辛うじて腕を挟んでガードするが、それでも流石に身体に響く。
いや?
そんなでも無い?
最初の攻撃もそうだけど、正直師匠と比べると攻撃力はさほどでも無いのか。
それに。
「随分と疲れてるみたいですね、風間さん」
音楽魔法、魔法ということは魔力を消費する。
白虎の力を弱くしたり遅くしたりしているんだから、それなりの魔力は消費しているはず、それが表に現れ始めたってことだ。
「舐めるなよ、確かに想定よりは魔力を使わせられたが、根本的に貴様と俺ではレベルが違う。音撃」
衝撃音と共にその場から吹っ飛ばされる。
驚きはしたが、何とか体勢を立て直して着地する。
今のはスキルか。
そりゃそうだ。
相手はランカーなんだから、俺と違ってレベル80何て軽く超えてるはず。
音楽魔法以外のスキルを持っていないわけが無い。
つまり、これまで俺に合わせて近接戦闘で戦ってくれていたってわけだ。
「音撃、音撃、音撃」
立て続けに音の衝撃波を飛ばしてくる。
厄介な事に目には見えず、ありえないくらい早い。
攻撃力は大した事は無いが、正直突破口が見えん。
いくらダメージが少なくても、このままくらい続けるのは不味いな。
遠距離攻撃に対抗するような、何か。
遠距離……遠距離攻撃と言えば、魔導ガジェット、あれは魔力も圧縮して飛ばしてるんだよな。
あれ、魔力の流れとかは認識して操れるなら、できるんじゃないか?
全身に纏わしている魔力の一部を、掌に集めるイメージ。
あっ、なんか玉みたいなのは出来た。
これを射出!
イメージは弾丸、しかし実際には魔力の塊が歪な形を取りながらシャボン玉のように飛んでいくだけ。
自分から魔力を切り離すイメージが分かんねぇ……。
「貴様はまた妙な事を、音撃」
俺の攻撃?に合わせ風間さんが音撃を放つ。
その瞬間、何も無いところで俺の放ったシャボン玉が弾けとぶ。
「くだらん時間稼ぎみたいだな、音撃」
「そうでも無いですよ?」
音撃に当たった魔力の玉が弾けた。
大事なのはその後、俺に衝撃波は飛んで来なかった。
つまり、音撃は魔力の塊で相殺できる。
魔力は別に掌から出す必要は無い、身体の至る所から、前方に弾丸を放つイメージ。
俺の身体から少し離れた所に魔力の玉が生成される。
風間さんの音撃に合わせて、俺の周囲の魔力玉が子気味良い音を立てて弾けていく。
「どうやら、音撃はもう通じないみたいですね」
「ほざけ」
読んで頂きありがとうございます。
一体一のゴリゴリ戦闘、楽しいですね。
というか源志くんは一体どこに向かっているのでしょうね。




