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第71話 最暗はすぐそこに

「いやいや、それにしてもまさかトップランカーを二人も我が家に招く日が来るとは、夢にも思わなかったよ」


 リビングに案内され椅子に座ると、眼鏡をかけた男性はそんな事を言いながらこちらに笑いかけてくる。


「あなた、一応自己紹介をした方がいいんじゃないかしら?」


「あぁ、それもそうだね。亜人(ハーフモンスター)の保護活動をしてます、山井 智一(やまい ともかず)と申します、以後お見知り置きを」


 亜人の保護活動?

 もしかして(そら)のことで連れてこられたのか。


 空の方を見ると、何?っと首を傾げている。


「確か今日来た理由は、亜人の事を詳しく聞きたいとの事だったね、えーと、名前は確か等々力(とどろき)くん、だったかな?」


 智一さんは俺の方を見て優しい笑みを浮かべる。


「あ、はい。初めまして、等々力 源志(げんし)です」


「君は亜人に関してどれくらいの知識を持ってるのかな」


 どれくらいの知識があるか、そう言われると俺は亜人について殆ど知らないかもしれない。


「えーと、モンスターと人の間に稀に産まれるってことくらいですかね」


 確か師匠がそんな事を言っていた。


「そうだね、その通り。亜人は人とモンスターが交わることで産まれる、言わば生命の神秘そのものだね」


 いやそこまでは言ってないが、まぁでも子供が産まれるってのはそういう事か。


「なるほど、逆に言うとそれだけしか知らないわけか。わかった、それじゃあ詳しく説明していこうか」


「よろしくお願いします」


「亜人は言うまでもなくモンスターとしての特徴を有している。故にその身体能力は親となるモンスターの特徴次第で変わってくるが、大概の場合は人のそれを凌駕する」


 確かに、空は白虎の子供だけあって、驚くほどのスピードを有している。


「それに加えて、人の知能があるとなれば、それがどれだけ凄いのかは想像に難くないよね」


「そうですね、その上でレベルが上がればその強さは計り知れないですよね」


 俺がそういうと、智一さんは不思議そうな顔をし、その後何かを納得したような顔をして話し出す。


「等々力くんは何か勘違いしているようだけど、亜人にレベルは存在しないよ」


 ……え?

 亜人にレベルが存在しない?


不与者(アネイブル)っているだろう?ダンジョンに選ばれなかった、レベルを与えられなかった人。どういう訳か、亜人は例外なくレベルを与えられないんだよ」


 てことは、空もレベルがなくてこの強さなのか。

 マジかよ、すごいな。


 ……あれ?


 空にレベルが無い?

 何か引っかかるな、なんだろ。


「レベルアップについては諸説あるけど、基本的にはダンジョンが人間の能力に応じて、その肉体を改造し最適化することだと言われているんだよね。とすると、亜人がレベルアップをしないのは、ダンジョンが亜人の肉体を改造する術を知らないからじゃないかと思ってる。面白くない?その場合つまりはダンジョンに意思がある、または人を進化させようとしている何者かの意思が、ダンジョンに介在しているってことになるんだよね」


 なるほど、面白い考え方だな。

 レベルアップはダンジョン、またはダンジョンを製作した何者かの意思か。


「もしそうなら、レベルアップをさせて一体何をさせるつもりなんでしょうか」


「そこはやっぱり気になるとこだよね。それにも諸説あるけど、俺の好きな説は、上位存在が人間の限界を試しているって説だな」


「上位存在ですか、もしそれが存在するとして、人間の限界を試してその先に何を見ようとしているんでしょう」


「そうなんだよ!この説の肝はまさにそこにあって……っと、話がそれたね」


 師匠が咳払いをしたことで、二人して現実に引き戻される。


「えーと何処まで話したっけ、そうだ、亜人は人より優れた身体能力を持っているけど、レベルアップはしないってとこまでだね。確かに亜人はレベルアップをしないけれど、人と同じで普通の成長はするんだよ。だから子供の時より成人の方が強いし、老いれば身体能力は落ちる」


 それはそうか、じゃあ空にもそういう意味ではまだまだ伸び代があるわけだ。


「これがまず亜人の基本的な特徴だね。そしてここからが亜人の置かれている今の状態だ。少し話が重くなるから覚悟してくれ」


 そう言われるとかなり身構えてしまう。

 いや、しっかり聞くべきだろう。

 せっかく師匠が用意してくれた機会だ。


「亜人の存在は基本的に多くの人たちには知られておらず、ほとんどの場合モンスターのして扱われているのが現実だ」


 言われてみれば確かに、俺も空に会うまで亜人という存在について一切知らなかった。


「ギルドの上層部の方は、その存在を認識しているようだけど、情報統制が敷かれているんだよ、社会に混乱をもたらさないようにね」


 まぁ確かに、人とモンスターの間に子供が産まれることが知れ渡ると、色々と面倒事は増えそうだ。


「ただ、それをいい事に悪い事を考える人はどこにでも現れるものでね。亜人は裏でかなり高値で売買されているんだよ。特に強いモンスターの亜人はそもそも産ませるのも難しく、ちゃんと躾をすれば護衛としても相当役に立つとあって、物凄い高値がついているらしい」


 モンスターと人の間に稀に産まれて、しかも強くて人並みの知能がある。

 そりゃ嗜好家にとって堪らないコレクションになり得るかもな。


「ちなみに、そのシノギを牛耳っている組織の名をガルムと言う。目をつけられるとその子も危険だから、関わらないことをオススメするよ」


 なるほど、それはあれだな。


 もう手遅れかもしれないわけだ。

読んでいただきありがとうございます!


さてさて雲行きが怪しくなってまいりましたね。

ガルムと言えばそうですね、そういうことです。

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