第70話 最凶の意外な一面
「おい聞いたか?」
「聞いたって何を?」
「ほらあいつらの話」
ここ最近よく視線を感じる。
いやまぁ、前からそれなりに視線は感じる方ではあったけどね?
向けられる視線は、嫌悪感に殺気が少々と負の感情がほとんどだった。
それが今は、好奇心とかそういう系のプラスとまでは行かないまでも、負の感情とは言わなさそうな視線に変わってきてる。
「あぁ、あの龍と戦ったって話だろ?」
「そうそう、小森先生も付き添ってたって話だけどさ、それでも生き残るってヤバいよな」
「まぁでも、特別講師にランカー呼んでたらしいし、そもそも厄災もランカーだろ?それで生き残れない方がヤバいだろ」
「いやでも厄災のランキングって金で買ったんだろ?」
「お前それまだ信じてたのかよ、普通に考えてギルドが管理してるランキングを金で買えるわけないだろ」
「それもそうか、だとすると他の噂も眉唾かもな」
どうもどこからか龍と戦った話が広まったようで、どこに行ってもその話題で持ち切りだ。
そりゃ、今まで存在を確認されていなかった龍と戦った訳だから話題になるのは分かるが。
よく本人がいる前で喋れるなこの人たち。
「等々力くんの良くない噂が払拭されたのは嬉しいけど、何か複雑かも」
横にいた早瀬さんがそんな風にボヤいている。
「そうだな。俺に関しちゃ、龍との戦いは気絶してただけだしな」
「もう!そういう事じゃなくて、皆あれだけ等々力くんのこと悪く言ってたのに、先生が一緒にいたってだけで周りの反応がこんなに変わるんだよ?」
「うーん、そこは正直どうでもいいかな。まぁ強いていえば大学で過ごしやすくなったのは嬉しいけど」
実際認められる事が嬉しくない訳じゃ無いけど、他人の評価を気にしていたのなら、俺はきっと冒険者になってなかった。
「等々力くんはそういう所ドライだよね、私はそうはなれないな」
「早瀬さんも今や大人気だもんな、一部で二つ名も呼ばれ始めてるし」
「それがまた複雑かも、他人事だと思ってたから。あー、せめてあんまり恥ずかしくない二つ名で安定してくれますように」
二つ名って悪ノリしてる部分ある気がするから、早瀬さんの願いは叶わないんじゃないかな。
「そうだ等々力くん、この後暇なら一緒にお昼でもどう?」
「ごめん、今日はこのあと師匠に呼ばれててさ、また今度行こうぜ」
誘ってくれたのは嬉しいが、流石に師匠の呼び出しを無視する訳にもいかない。
それにしてもあんまり師匠からの呼び出しって無いんだけど、何かあったのかな。
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「んじゃ行くぞ」
師匠が指定した場所に行くと、それだけ告げられて車に押し込まれる。
車内で空と戯れていること数時間。
名古屋につきました。
「いや説明!?」
「いらねぇだろそんなもん」
嘘だろ?いらないわけなくない?俺がおかしいのか?
何も聞かされずに5時間車に揺られてると、1時間くらいでまだつかないのかな?2時間くらいで、あれ?全然高速降りないなぁって。
3時間以降は怖くて逆に目的地を聞けなかったよ。
「師匠ってそういうところありますよね」
「変なこと言ってねぇでさっさと行くぞ、着いてこい」
師匠の後ろをついて歩く。
どうも空はこの近くに来てから、妙にソワソワして落ち着きが無いので、とりあえず抱っこして落ち着かせている。
なんだろうここは、公園?いやなんとういか、養護施設みたいな感じか?
俺が困惑しているのを全く気にする様子もなく、師匠はインターホンを押す。
『はい、どちら様で』
インターホンの先から女性の声が聞こえてくる。
「先日連絡をさせていただきました、天明です。」
し、師匠がちゃんとしてるだと!?
俺の考えを察したのか、当たり前だろみたいな顔でこっちを見てくる。
何だこの敗北感。
いやまぁ師匠には勝ったことないですけどね?
「あぁ、主人から伺っております、今開けますね」
しばらくするとコツコツと小走りしているような音が玄関の中から聞こえてくる。
ん?コツコツ?
「ようこそおいでくださいました」
違和感を覚えた頃には扉が開き、その正体があらわになる。
「……ハーピー?」
鳥を人の大きさにしたような存在が足を器用に使って扉を開け、そこに立っていた。
所々人のような雰囲気があるが、その見た目は正しくモンスターだ。
「ふふ、よく間違えられるんです。初めまして、陰摩羅鬼の亜人の山井 美月と申します」
「美月、誰か来たの?」
亜人、だったのか。
なるほど?ん?どういうことだ?
何が起きているのか訳が分からないうちに、奥から眼鏡をかけた優しそうな雰囲気の男性が歩いてくる。
「あら、あなた。呼びに行こうと思っていたのだけれど、こちら連絡をくださっていた天明さんです」
「あぁ、そういえば今日だった。おや?これは珍しい、白虎に」
「お電話では何度か話させていただきまして、今日は機会を作っていただきありがとうございます」
なんか今、相手が喋ろうとしてたのを師匠が遮ったような、気のせいか?
「なるほど、いや失礼」
眼鏡をクイッと上げながら何やら謝っている。
全く話が見えない。
「あなた、立ち話もなんですから中に入ってもらいましょう」
「あぁ、そうだね、どうぞ中へ」
俺は促されるままに師匠の後ろをついて家の中へと入った。
読んで頂きありがとうございます!
第5章開幕です。
舞台は名古屋!
果たしてどんな出会いが源志くんに待ち受けているのか。




