第69話 最新装備を所望します
青い空、白い雲、きらめく太陽、どこまでも続く青い海!
そして!
なんか甲斐甲斐しく俺の世話をしてくれるロボット!
なんだこの状況?
パラソルの下に置かれたビーチチェアに寝転がっていると、飲み物が運ばれて来るわ、うちわで扇がれるわ。
「等々力くん、他に何か必要なものはありますか?なんでも言ってください、私はあなたのお役に立てることがなによりの幸せです」
好意を正面からぶつけられるのは嬉しいが、なんともむず痒い。
「あ、いや、大丈夫だ」
我ながらタジタジである。
「了解しました、では現状維持を続けます」
ダンジョン内で俺が倒れた後のことは早瀬さんにあらかた聞きはしたが、情報が多すぎて正直未だに現実味がない。
なんなら実はまだ倒れてダンジョンの中とか、実は死んでるとか言われた方がまだ信じられる。
太陽の光を反射してきらりと光った掌の魔石を眺める。
たしか空が俺を庇って傷ついて、声が聞こえてきたんだよな。
俺が俺じゃなくなる感覚までは覚えてる。
今でもいつ暴走するのかとちょっと怖い。
「何辛気臭い顔してやがる」
「ギャウギャウ!」
「ぐぇ」
聞こえてきた師匠の声に背もたれから起き上がろうとした途端、空がお腹の上に乗ってくる。
早瀬さんの応急処置のおかげで命に別状はなく、すっかり元気になった空は、着せてもらったフリフリの水着が嬉しいようで、随分とはしゃいでらっしゃる。
実際可愛い!
「なんて言うか、未知のものが自分の体に埋まってるってのが、少し怖くなりまして」
空を撫でながら徐ろに自分の不安を口に出してみる。
「はっ!今更だろがそんなもん、結局はどんな力も使いこなせるよう努力するしかテメェにゃできることはねぇんだからよ」
まぁ、確かに師匠の言う通りではあるか、結局は努力する以外の選択肢は無いんだよな。
「ありがとうございます」
よし、あの時の感覚を思い出して、色々試行錯誤してみよう、特訓は俺の得意分野だからな。
「ところで源志よ、さっきからなんで私から目を逸らしてんだ?」
動揺して空を撫でていた手が止まる。
いや、目を逸らしているというか、目に毒というか。
俺も男子大学生でして、同級生の母親とわかっていても、大人の女性の水着姿ってのは中々に刺激的と言いますかね。
「意外と源志もウブ野郎だな、冴にも押せば直ぐだって伝えとくか」
くそ!人のことチョロいみたいにいいよってからに!
てかどうしてそこで漆原さんの名前が出てくるんだ?
「おやおや?何やら楽しそーデースね、源志くん私の水着はどうデースか?」
自分の武器をよくわかっていらっしゃるポーズをとりながら水着を見せてくる。
「なんと言いますが、似合ってますけど、狙い過ぎじゃないですか?」
基本的に紺色の水着なのだが、胸元だけ四角く白色になっており、そこには大きな文字でこざくらとひらがなが書かれている。
もうお分かりだろう。
スク水である。しかも来ているのが金髪ロリB
「どうやら最終日までみっちり修行がつけて欲しいみたいですね」
あの、なんで心の声が聞こえるんですか?怖すぎるんですけど、目が笑ってないし!
「皆して海から上がってどうかしたんですか?」
濡れた髪を絞りながら早瀬さんもこちらに近づいてくる。
なんだろう。
いつも清楚な感じの服を着ている優等生な早瀬さんが、ちょっと大胆なビキニ姿をしているというのはこう、何とも悪くないな。
「あはは、ありがとう等々力くん」
おっと、どうやら心の声が聞こえてしまったらしい。
お恥ずかしい限りだ。
「クリエーター!私にもあの外部装甲が必要になりました!最新装備を所望します!」
俺の横で我関せずとばかりにビーチチェアで寝転がっていた胡貴が、急に呼ばれて面倒くさげにサングラスを持ち上げる。
「あー?んな無駄なもん作れっかよ、今のままでも耐水性にはなんの問題もねぇから安心しろ」
「そういう事ではありませんクリエーター!先程御三方がこちらに来られてから、等々力くんの視線パターンが変化しました。各パーツに分けた場合、他パーツより圧倒的に胸部パーツに視線が運ばれています。私の胸部パーツには視線がほとんど寄せられないことを考えると、現状のパーツに何か問題があると進言します」
おや?なんか俺今めちゃめちゃ恥ずかしいこと指摘されてない?
仕方ないだろ?俺だって男やぞ?
「源志よぉ、もうちょっと気をつけた方が良いぞ?女性ってのは視線に敏感らしいからな」
くっ、ぐうの音も出ない。
とりあえず女性陣からそこまで白い目で見られてないことだけが救いだろう。
「そういえばこのロボットに名前ってあるのか?」
俺はこの話題は不味いと思って何とか他の話題に切り替えようと胡貴に尋ねる。
「いや?特に個体識別名は用意してないな、魔導ロイド、あーでもそれだと語感だけで意味がキモくなんな」
魔導アームとか魔導ドローンとか、結構安直な気がしてたが、もしかしてそれなりにこだわりがあったのか、ブツブツ言いながら悩み初めてしまった。
「等々力くん、クリエーターが言うように私には個体識別名が無いようです、よろしければ付けていただけないでしょうか」
「え?俺が付けるのか?」
うーむ、急にそんな事言われてもな、ロボット関係の名前って言うと、白銀とか黒鉄とかか?
「等々力くん、多分だけど、この子は女の子だから、そういう感じで考えてあげて」
そうか、胸部パーツとか気にするのはそういう事か、早瀬さんはその辺良く気が回るな。
女の子でロボット、そう言われてパッと思い浮かんだのはガラテアだけど、そういうのは良くないって胡貴に言われたっけ。
ならそうだな、銀色、月?
「輝夜とか?」
「輝夜、良い響きです。では、その様にお呼びください」
どうやら気に入ってくれたようだ。
若干周りからマジかよって視線を感じるが、もう気にしない。
それからなんやかんやと海を満喫し、その夜には小桜師範にみっちり絞られ、最終日まで慌ただしく過ごし、俺のことを妙に気に入った小桜師範に後ろ髪を引かれながら俺たちは帰路につくのだった。
△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼
「漆原家の様子はどうだった?」
無駄に豪華な店内。
ワインを片手に女を侍らせた派手な見た目の男は、ヘラヘラと笑う胡散臭い男に話しかける。
「慌ただしく動いてますぜ?そろそろ動きそうな感じですよ」
金髪の髪をオールバックにし、サングラスをかけた男は、得意げに詳細を話し始める。
「はっ!俺たちガルムも舐められたもんだな、今度こそあのクソババアをぶち殺して、俺たちが世界を支配してやるよ、そう思うよな?クソ犬!」
派手な見た目の男はおもむろに立ち上がると、部屋に似つかわしく無い小汚い檻を思いっきり蹴飛ばす。
中にいる人とも犬とも言えないそれは、完全に怯えきって震えている。
「金はたんまりあるからな、目にもの見せてやるぜ」
読んで頂きありがとうございます。
次週より第5章 ガルム編が開始です!
さてさて、今度は源志くんにどんな試練が待ち受けているのか!
乞うご期待です。




