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第63話 最善の結果を求めて

 勢いよく流れ込んだ水は渦を巻き、ゆっくりと水の柱を作り出す。

 まるで水の流れがドレスの様に舞い上がると、そこには織姫がもう一人。


 いや、着物の色が違う。

 織姫と名乗った敵は緑の着物を着ており、新たに出てきた敵は水色の着物を着ている。


 それになんというか、雰囲気も若干違う。

 緑織姫は堅実で真面目そうな印象だが、水織姫はどことなく優雅さと可憐さを兼ね備えた高貴な雰囲気を醸し出している気がする。


「一体でもキツかったってのに増えんのかよ」


 千國(せんごく)は舌打ちをしながら恨めしそうに新たに増えた水織姫の方を睨みつけている。


 ふと嫌な予感が頭をよぎる。

 元々このダンジョンのボスは川姫が3体。

 もしかして、もう一体増えるんじゃないか?


 いや、今はそんな事を考えていても仕方がない。

 可能性は頭に入れて置きながら、まずはこの状況を何とかしないと。


「千國、緑の方の織姫はなんでか俺にヘイトが向けてる、お前は新たに出現した水色の方を頼む」


 とりあえずは2体に連携を取られるのが一番面倒なはずだ。

 こっちのがまだ数的有利もあるし、千國の戦闘力は伊達じゃない、まだ何とかなるはずだ。


「てめぇ1人でやれんのか?」


(そら)と二人で何とかしてみるさ。そっちこそ、ほぼ1人で戦うことになるが問題ないよな?」


「ア?たりめぇだろ、寧ろ1人の方がやりやすいぜ」


 頼もしい答えを残して水織姫の方へと千國が走ってゆく。


早瀬(はやせ)さんと胡貴(こたか)は引き続き全体の支援を頼む」


「分かった」「任せて」


 2人の返事を聞いてから、俺はナイフを構えて走り出す。


 その横を空も走って着いてくる。


「空、こいつを使え」


 師匠の事だから空にも使えるように仕込んでいるだろうと思い、ポシェットからサブナイフを取り出して空へと差し出す。


「ギャウ!」


 ひと鳴きすると器用にハンドルグリップを咥え、得意げに振り回す。


 どうやら問題なく使えそうだ、これで空も攻撃ができる。


「行くぞ!」


 呼吸を意識しながら緑織姫へとナイフを素早く振る。


 しかしそのナイフは掠る事もなく軽々と避けられる。


 パワー系の千國相手だったとはいえ、あれだけ回避し続けていただけの事はあるようだ。


 だけど。


 こっちにはさらにスピードの早い空がいる!


 金属同士がぶつかる様な音を立てて、空のナイフが緑織姫の核に叩きつけられる。


「*#&≦Щ!?」


 核を攻撃された緑織姫が悲鳴の様な声を上げ、払い除けるように空へと攻撃を仕掛けるも、どうやらスピードは空の方が上の様で、その攻撃を空は華麗に回避してみせる。


「ナイスだ空」


 堪らず攻撃に転じた緑織姫に隙が生じたのを見逃さず、俺は追撃のナイフを振るうが、ヒラリと回避されてしまう。


 どころか、俺の額に手を伸びしてきている、ってかあの指の形はデコピン!?


 破裂音とともに銃で撃たれた様な衝撃が額に走る。


 あまりの威力に吹っ飛ばされ、地面を転がる。


 何とか体制を立て直すが、脳が揺れているようで上手く立ち上がれない。


 何とか回復タブレットを取り出し飲み込む。


「マジかよ、攻撃力までこんなにあるのか」


「キャウッ!」


「空ッ!」


 俺が復帰するまで一人で奮戦していた空がこちらに転がってくる。


 すぐに空に回復ポーションを振りまくと、空は勢いよく立ち上がる。


 2人で緑織姫を睨みつけると、かかってこいとばかりに手招きをしている。


 どうやらここからは相手も本気らしい。



 △ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼



 チッ!

 等々力(とどろき)の野郎に啖呵をきった割にこのザマじゃ笑い話にもならねぇ。


「ウォラァア!!」


 畜生、バシャバシャバシャバシャ水を飛ばしてきやがる。

 ダメージはそこまでねぇし、金棒でぶん殴れば吹っ飛ばせるけどよ。


 鬱陶しくて近づけねぇ!


「この!真面目に戦いやがれ!」


 水のダメージを無視して無理やり攻撃を仕掛けても、一瞬で姿を消してまた距離を取られる。


 さっきの緑の奴と言い、フラストレーションが溜まるぜ。


 しかもこいつの回避は緑の奴と違って完全に目の前から消えての移動。


 緑が霧化しているとすると、この水色がしているのは瞬間移動だ。


 つまり、緑の奴のあれは注意深く見てれば目で追えなくも無いが、こいつのは駄目だ。


「このクソアマが!さっきから遠くに逃げてはちまちま水をかけてきやがって、勝負する気あんのか?」


「≦@&$**#₪ ⊂@。∈ξ?」


「ァ?ぶち殺す!」


 なにを言ってるのか全く分からねぇが、何となく奴が俺を馬鹿にしたのだと直感で理解できた。


 あぁ、マジでイラつくぜ、絶対ギタギタに叩き潰してやる。


 追いつくまで走って、何度でもぶん殴ってやらぁ!


「千國くん!闇雲に走らないで」


 早瀬の声か?

 チッ、いつもいつもお節介な女だ、ムカつくぜ。


「闇雲だ?こいつの転移だってそんなに何度もできる代物な訳ねぇだろ、魔力が尽きるまで追いかけ回してんだよ!」


 何度も追いかけて金棒を振る!何度も!何度も!何度でも!


「はぁはぁ、どんだけ魔力あんだよ」


 畜生、もう何十回も転移させてんのに全く魔力が尽きる気配がねぇ、寧ろほとんどダメージのない攻撃でも、こんだけ食らうと地味にきちぃ。


回復ポーションを取り出して一気に飲み干す。


残りは後何本だ?


「千國くん!後ろ!」


「ッ!」


「&Щ#₪ ≦₪ ……」


 攻撃が当たった?


 早瀬の声に反応して適当に金棒を振り回しただけだったが、確かに手応えがあった。


それにしても指示のタイミングが早すぎんだろ。


「早瀬!こいつの転移先が分かんなら指示を出せ!」


 他人の力を借りんのは癪だが、背に腹はかえられねぇ。


「千國くん!左後ろ、10m」


 早瀬の指示通りの場所へ水色の奴が現れたか。

 どうやら完全にわかってる見てぇだな。


 これならあいつをボコせるぜ。


「何処に出るか分かりゃこっちのもんだ、死にやがれ」


 金棒が空振り、だが転移はもう悪手だぜ?


「早瀬!」


「右前方、10m」


「ぶっ飛べ!!」


 場所完璧!水色の奴、目ぇ丸くしてやがるぜ!

 ぶっち殺してやらぁ!

読んで頂きありがとうございます。


増殖した織姫、しかも実は攻撃力もしっかりある。

さて源志くん達はこの状況を切り抜けられるのか?

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