第55話 最大出力攻撃
「エクストラコード"ブラスト"」
早瀬さんの声に反応して、魔導ガジェットの銃口が拡張している。
なるほど、胡貴が好きそうなギミックだな。
威力は増すけどチャージに1分掛かる、そんな所か。
だが、散々撃たれてきた銃口を向けられていれば、餓者髑髏も黙ってはいない。
早瀬さんに向かってその手を伸ばしてくる。
「させるかよ!」
「ギャウ!」
それを食い止めながら、その時を待つ。
たかが1分間、されどこうも一方的に攻撃を仕掛けられている状態だと、それも長く感じる。
骨のくせに一撃が重い。
こちらの疲労も加速する。
まだか?
まだ経たないのか!
「お待たせ!皆」
その声に振り向く。
飛び込んできた光景に目を疑う。
魔導ガジェットに早瀬さんの魔力が流れ込んでいるのが見える。
目視で認識出来るほどの魔力、どれ程の威力何だ。
「悪い源志、早瀬さんの魔力がここまで多いと思わなかった。多分だが魔導ガジェットはこの一発でお釈迦だ、お前らこれで決めろよ!」
胡貴の奴が何か言ってるよ。
まぁでも、一発も撃てないとか言わなくて良かった。
「ファイア!」
衝撃波と共に餓者髑髏の顔の一部が消し飛ぶ。
堪らず体制は崩れ前のめりに倒れ込んだ。
「このチャンスを逃すな!」
俺が声を上げるが、それよりも早く空は飛び出していた。
余程ストレスが溜まっていたのだろう。
「ギャウギャウギャ、ギャウギャ!」
容赦の無いラッシュ、拳を当てる度に次の拳の威力と早さが増していく。
「やっとぶん殴れるぜ、くらいやがれ!」
千國もまさに悪鬼の如く一撃を放つと、餓者髑髏の頭蓋が面白いように揺れる。
まさに総攻撃と言えるほどのフルボッコだ。
俺も負けじと走りよる。
呼吸をさらに深く早く、師匠や空の様に上手くは使えないが、それでも一応兄弟子だ。
俺にだって意地ってものがある。
「フンッ!」
渾身の力で拳を叩き込む。
バキリッとこ気味のいい音がし、餓者髑髏の顎にヒビが走る。
殴る度に相手の骨は砕けていき、そこら中にヒビが入る。
いける!
『あな恨めしや』
まるで地の底を這うような恐ろしい声が響く。
震えが止まらない、恐怖心が身体を支配し全く動けなくなる。
ボロボロのはずの餓者髑髏が、その身体をゆっくりと起こしていく。
まずい、他の皆も動けていない、何かのスキルか!
完全に油断した。
どうする!
猿鬼の腕の形を模した魔導ガントレットが目に留まる。
制御するために掴んでいる感覚を手放すと、それを待っていたと言わんばかりにガントレットの形が歪に変わっていく。
おかしな方向に関節が曲がり、その痛みで感覚が戻る。
「パージッ!!」
猿鬼がそれを拒んでいるかのように軋む音を発しながら、ガントレットから魔石が排出される。
間髪入れずにボロボロのガントレットに魔石を入れ込む。
「ロード!アクティベーション"小鬼"」
形が変形し小鬼を模した口が出現する、そして恨み言をかき消すかのように笑い声が響く。
一応コントロールは試みるが、やはり無理をさせたせいか完全には御しきれない。
だけどそれでいい、これできっと。
「チッ、鬱陶しい笑い声だぜ。……だが助かった」
ボソリとそう呟きながら千國が走りだす。
起き上がろうとする餓者髑髏の腕を掴むと、まるで背負い投げでもするかのような勢いで引っ張り倒す。
「行け!クソ猫!」
「ギャウ!!」
千國が掴む腕を空が駆け上がる。
おい待て千國てめぇ!今空の事クソ猫って言いました?
え?許さないんですが?あんな最高に可愛い子つかまえて何言ってんの?
「ギャウギャウギャ、ギャウギャウ!」
空中に飛び上がった空が餓者髑髏の頭蓋に強烈な一撃を放つ。
衝撃音とともに餓者髑髏の全身にヒビが広がり、そして砕け散る。
宙に舞った骨は光の粒子になって消えてゆく。
「勝ったの?」
早瀬さんが呆気にとられたような声を上げる。
どうやら何とか勝てたらしい。
「っておい!落ちてる落ちてる!」
胡貴が物凄い慌てた様子で空を指さす。
「マジかよ!」
餓者髑髏が消えてしまったせいで、足場を失った空がゆっくりと大穴に向かって落ちていく。
「パージッ!」
小鬼の魔石を排出し、新たな魔石を入れ込む。
「おい源志!もう魔導ガントレットは限界だろ!」
「そんなこと言ってられねぇ!ロード!アクティベーション"ウッドパペット"」
叫びながら腕を振りかぶって思いっきり投げる。
すると俺の腕の先についてるはずのガントレットが空の方へ伸びていく。
「届けぇぇえええ!!」
指先にモフっとした感触がした瞬間に握り込む。
後で文句言われても仕方ない、今は命優先だ。
何とか空の首根っこを掴む。
危なかった、マジでめちゃくちゃ焦った。
掴んだは良いが振り子みたいに空が壁に叩きつけられそうになった時はさらに焦ったが、そこはネコ科だけあって上手く壁を蹴って勢いを殺してくれた。
「おら、さっさと引き上げるぞ!」
「ちょっ!待て待て、この糸意外と脆いから!あ、糸だけに意外と」
「大丈夫そうだな」
「待って!痛い痛い!マジやばいから!ごめんて!!」
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「いやぁ、一時はどうなるかと思ったが、何とか出られたな。」
あの後空もしっかり拾い上げ、転移陣を使って無事に全員外に出ることが出来た。
今回の戦いで、魔導ガントレットと魔導ガジェットがぶっ壊れた事を考えると、明日からの探索に不安を残す結果となったが、まぁそれはまた考えればいい。
「何でもいいからさっさと宿に行こうぜ」
歩き疲れたようでヘトヘトの胡貴が愚痴をこぼす。
正直俺もさっさと宿で寝たい気分だ。
「確か宿は大学が用意してくれてるんだよね、どんなとこかな?温泉があるといいなぁ」
温泉か、それも良いなぁ。
「何を言うかと思えば、お前たちのようなクズに宿を用意してるわけがないでしょう」
「「「え!?」」」
読んで頂きありがとうございます。
餓者髑髏撃破!
空ちゃんと千國のパワーコンビが大活躍でしたね。




