第53話 最終警告の門
「……き…ん」
「等……くん」
何だ?何か騒がしいな。
折角人が幸せな夢を見てるってのに。
夢?
あれは、夢?
俺は……
「等々力くん!」
必死な声が聞こえてくる。
閉じた瞼を開けると早瀬さんが顔を覗き込ませている。
「皆!等々力くんが目を覚ましたよ!」
何があったんだったか、確か魔導ドローンに魔力を流して、それで。
なんだっけ?
「俺、気絶してたのか?」
「急に倒れたから……私、びっくりして、目を覚ましたくれて良かった」
目に涙を浮かべながらも微笑んでくれる。
どうやら随分と心配させてしまったようだ。
「心配させてごめん、もう大丈夫だ」
早瀬さんの頬にそっと手を伸ばして涙を掬う。
そして俺は気づく。
あれ?そういや何で真上に早瀬さんの顔が?
てか、早瀬さんの顔と俺の間に、魅惑的な果実が2つも実ってる様な……。
そういえば床に寝転んでるのに後頭部だけ柔らかな感触が。
……俺はゆっくりと起き上がる。
当たりを見渡すと胡貴が呆れ果てた表情でこっちを見ている。
「……h@#/マЯやんk!!」
なんか気恥ずかしさが頂点に達して、顔を覆いながら声にならない声で叫んだ。
「ギャアギャア」
空も心配そうに声をかけてくれる。
「ありがと空、心配かけたな」
その場の空気を誤魔化すように空を撫でてやると、嬉しそうに目を細めてくれる。
マジで癒しだわ。
「俺はどれくらい気絶してたんだ?」
「5分くらいってとこだぜ」
俺の疑問にすぐさま胡貴が答えてくれる。
「悪かったな、十分に検証できてないことをダンジョン内でさせた、そのせいで」
「気にすんな、リスクを考えずに使ったのは俺だ。胡貴が謝ることじゃねぇよ、それよりもこれからどうするかだ。」
大天狗の魔石の力を使えば周りの様子を見れるかと思ったが、さすがにこの状況でもう一度やる訳にも行かない。
どうしたものか。
「それなんだけど、多分さっきの等々力くんと魔導ドローンの影響なのか、この階層と次の階層の全容がマッピングできてるみたいなの」
「は?んだそれ」
あまりの事に千國が声を上げる。
無理もない、俺も意味が分からなさ過ぎて開いた口が塞がらない。
「えっと、取り敢えず結果オーライって事か」
これで今日は野宿しなくても済みそうだ。
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「で、本当にこれなのか?」
早瀬さんの案内で元来た道を歩き、一本道の初めの方まで戻ってきた。
「そうみたい」
早瀬さんがスイッチを踏むのをなんとも言えない気持ちになりながら見ていると、遠くの方から大きな揺れとともに何かが駆動する音が聞こえてくる。
「いやそのなんだ、ドンマイ」
なんとも言えない空気の中で千國に励まされる。
畜生!何でよりによって態々俺が避けれた罠がスイッチ何だよ!
「師匠!これは3回目の奴は無かったってことでは!?」
「それとこれとは別だ馬鹿」
ですよね、知ってましたとも。
「まぁまぁ等々力くん、今は先に進も?」
早瀬さんの言う通り、無駄に行ったり来たりしたせいでそれなりに時間をロスしている。
いくら早瀬さんのおかげで少なくとも2階層までは迷わないとは言え、あまり遅くなりすぎると宿が閉まってしまうかもしれない。
「ああ、先を急ごう」
こうして一本道をまた進むと、行き止まりの手前の床が無くなり、その代わりに階段が出現していた。
「早瀬さん、この先って何があるんだ?」
階段はかなり下まで続いているようで、暗くて先がよく見えない。
「階段の先は広間になってて、そこを超えた場所に2階層の転移陣があるみたい」
今日は1階層を探索して転移陣で帰るつもりだったが、まさか一気に2階層の転移陣まで行けるとは思ってもみなかったな。
だけどその手前の広間ってのが気になる。
厳島ダンジョンの最下層以外にそんな場所があるなんて話は聞いた覚えがない。
ダンジョン内の広間で待ち受けているのは、大体ボスか大量のモンスターと相場が決まっている。
「分かった、階段にも罠があるかもしれないから警戒して進もう」
階段はかなり暗い、懐中電灯で照らしながらゆっくり降りていく。
階段自体はかなり緩やかで踏み面も広くスロープに近い、だからこそか暗さも相まってかなり深くまで降りている気がしてくる。
「皆、もうそろそろ広間が見えてくる筈だから警戒し、っ!」
早瀬さんが急に言葉に詰まる。
「早瀬さん、何かあった?」
皆一斉に警戒を高め立ち止まる。
こんな所でモンスターに襲われたらかなりヤバいがどうする、広場に駆け込むか?
「あ、ごめんなさい、その、今まで感じたことの無いような、強い……敵意?ううん、これはもう怨念、皆気をつけて!多分広間で待ち構えてるのは、相当強敵みたい」
早瀬さんの言葉に緊張感が高まる、このパーティーでの初のボス戦、本当であれば道中の敵で徐々に連携を確かめるつもりだったが、まさか初日から当たるとはついてない。
「警戒して進もう」
1歩1歩と近づくにつれ、早瀬さんじゃ無くても分かるほどのプレッシャーが伝わってくる。
そうしてたどり着いた広間の前には、朱色に彩られた古びた門が佇む。
所々金具が錆て塗装も剥がれているがそれでも尚存在感を放つ。
この巨大な門を潜った先が死地であると心の隙に訴えかけてくる。
きっと最終警告だ。
だが引き返した所で道は無い。
重い空気の中、ゆっくりと門を潜る
「早瀬さん、敵は?」
広間の中央まで来たが敵が見当たらない。
「おかしい、もう居るはずなのに」
早瀬さんの言葉に皆周囲を警戒するがやはり居ない。
つまり、上か!?
考えたことは皆同じ、シンクロするかのごとく上を見上げる。
しかし、その暗闇の中にも気配は無い。
「お前ら!!壁際まで走れ!!」
「は?どうした千國!」
「良いから走れ!!下から来るぞ!!」
千國の声とともに皆一気に走り始める。
その途端、物凄い振動とともに巨大な何かが地面から生えてくる。
「あれは!」
読んで頂きありがとうございます。
h@#/マЯやんk!という源志くんの叫び声は、
膝枕やんけ!と叫んでいます。
いやぁ、初々しいですね!




