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第49話 最適化はまだ先で

(そら)ちゃん久しぶり」


 早瀬さんは前に何度か空に会っているのだが……。


「グゥァァァ……」


 何故かめちゃくちゃ威嚇する。


「やっぱり早瀬さんには凄い勢いで威嚇するんだよな、どうしてだろ」


「怖がらせるような事しちゃったのかな?」


 どうだろうか?確かにパニックになって暴れたり、隠れて出てこなくなったりということはあっても、あまり威嚇する様なことは無いんだけどな。


「おい、テメェら、ちょっとは真面目に探索しやがれ」


 先頭を歩く千國(せんごく)が振り向いてガンを飛ばしてくる。


 こういう救済処置的な時だけ微妙に真面目になる奴っているよな。


「そうは言っても、1階層なんて千國1人で十分過ぎるだろ?実際やること無くて暇だし」


 そう、期限まで1週間あるとは言え、折角時間かけて厳島まで来たのだから観光もしたい。


 という事で初日からガンガン飛ばしていこうという話になり、千國も面倒ごとはさっさと済ませたいと率先して進んでくれている。


 正直1階層に千國の相手になるモンスターはおらず、持ち前のフィジカルで罠もガンガン突破してしまいやることが無い。


「チッ、んな事なら前になんて出るんじゃなかったぜ」


 文句を言いながらも千國はきっちり敵を倒して前へと進んでいく。


「……等々力(とどろき)くん、本当にこの人数で、しかも1週間で厳島ダンジョンを攻略できるのかな?」


「と、言いますと?」


「だって厳島ダンジョンと言えば、完全攻略こそされているものの、その難易度から挑む人がほとんど居ない事で有名なダンジョンの1つだよ?」


 確かに厳島ダンジョンは難関として有名なダンジョンの1つだ。


 全5階層と階層自体は多くないが、1つの階層がそれなりに広く、モンスターも罠も多く存在する。


 しかも1階層事に強さは増していき、4階層はかなり凶悪だとか。


 その代わり各階に転移陣が置かれているという中々に親切設計。


 そんなダンジョンがどうして難関とされ完全攻略者が殆ど居ないかと言うと。


「皆が強いのは知ってるけど、5階層のボスがこんな即席パーティで倒せるとは私には思えない」


 そう、問題は5階層。


 かなり広いボス部屋のみが存在し、そこには3体のボスが待ち構えている。


 ここを完全攻略した人達のほとんどがクラン単位で攻略に挑んだ。

 7人、いや、あの教員と師匠は戦わないだろうから5人か。

 そんな少人数で勝ったという前例は無い。


 普通に戦えば間違いなく厳しい戦いになる。


「まぁ、何とかなるだろ」


 最悪師匠が居るから死ぬことは無いだろうしな。


 だから早瀬さん?そんな睨まなくても。



 その後も順調に進んでいき、進んで……。


「ぜぇ、はぁ、ぜェゼェ……お前ら……早すぎ」


 進まねぇ……。


胡貴(こたか)お前、いくら何でも体力無さすぎだろ。歩いてるだけだぞ?」


 俺らが早すぎるのではなく胡貴が遅すぎる。


 まさかここまで体力が無いやつだとは思わなかった。


「仕方ねぇだろ、荷物が重いんだよ」


 いやまぁ、確かにめちゃくちゃでかくて重そうなカバンを背負ってはいるが。


「重い荷物なんて預けてこいよ、つか何が入ってんだ?」


「ふっ、良く聞いてくれたな。折角だ、お披露目と行こうか。」


 鈍い音を立てて荷物を床に置く。


 いやいや、どんだけ重いもんが入ってんだよ。


源志(げんし)、魔導ドローンを起動してくれ」


 そう言って胡貴が魔導ドローンを投げ渡してくる。


 が、もちろんそんなパスが通る訳もなく。


「あっ、こら空、返しなさい」


 見事にインターセプトされ暫く追いかけっこが始まる。


 全く可愛いな畜生。


「で、起動すればいいんだったか?」


 なんか前にもこんなことあったな。


「ブート」


 ドローンが起動すると空中で待機し始める。


「それじゃあ行くぜ?ドローンに文字が浮かび上がったらそれを読んでくれ。魔導アーム、リンクオーダー!」


 胡貴の声とともに鞄の中からガコンッと何かが開く音がする。


 そして魔導ドローンの前方にモニターが浮かび上がり、そこにこう書いてある。


「アクセプト」


 すると魔導ドローンが光り輝き、それと同時に鞄から空気が噴射する音が響く。


 そして音とともに機械が飛び出したかと思うと、魔導ドローンの左右に浮遊し始める。


 それはさながら人間の腕のような、なるほど魔導アームか。


「どうだ凄いだろ!外部パーツとして魔導ドローンにアームを接続し動かすことが出来るんだぜ!」


 おお、何かこう、演出も相まって凄くかっこよく見える。


 まぁただ、中心に球体、左右に人間大の腕が浮いているのは何と言うかちょっと不気味ではある。


「凄いな!何に使えるんだ?」


 もしかするとこれで戦えたりするんだろうか。


「俺の技術力で人間の腕と手を再現した、何と物を持ち運べる!」


「おお!じゃあその重い荷物を持たせられる訳か、それならもっと早く出せよな!」


 最初から胡貴の荷物を持たせておけば、もっと早く進めただろ。


「おいおい、魔導ドローンの欠点を忘れてるぜ?」


 ん?欠点、何だったか。


 確か前は通信機能を使ってそれで。


 魔導ドローンが赤く点滅し始めて……。


「胡貴、まさか……」


「ああ、そのまさかだ」


 ドローンは両腕と共にゆっくりと地面に着地し、そのまま動かなくなる。


「………………」

「………………」


 しばらく沈黙が走る。


「ガラクタじゃねぇかよ」


 千國の無慈悲な一言が、静かなダンジョン内で反響した。

読んで頂きありがとうございます。


個人的には胡貴くん書いてる時がとても楽しい。

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