第43話 最凶へ至る道
「良し、これで転移陣のアクティベート完了、魔石も落ちたし今日は順調だな。漆原さんのおかげだよ、ありがとう」
何はともあれリビングアーマーも倒せて15階層突破だ。
「どういたしまして、光魔法が効いて良かったよ」
実際その通りだ、あの固い鎧相手にまともに戦っていれば長期戦は免れなかった。
「多分だけどリビングアーマーの本体は鎧じゃなくて霧の方だったんだ」
「だからレベルが下がっても鎧は硬いままだったのね」
やはり俺のスキルは強いが万能じゃないって事だ。
レベルを下げれたとしても元々の性質は変わらない。
硬いやつは硬いし早いやつは早い、大きい奴は大きいままだ。
「ああ言うタイプのモンスターにも勝てるようにもっと強くならないとな」
色んな経験を積んで鍛えて、どんな性質のモンスターも倒せるようになるんだ。
「やっぱり源志くんは凄いね」
「ただ必死なだけだよ。さぁ、探索を再開しよう」
16階層への階段を降りていく。
ここからは最下層、モンスターのレベルも跳ね上がる。
流石にこれまでのような油断は禁物だ。
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カチリッとスイッチが駆動する音がする。
「良しこれで大丈夫だ」
「源志くんって器用だね、罠解除スキルが無いのに解除できちゃうなんて」
16階層以降、モンスターもだが面倒な罠も増えてきた。
「ほら、最初のころ授業で罠のギミックを理解することで罠解除は理論上可能って言ってただろ?」
「確かに言ってたけど、あれはスキルはそういう理論的な事を飛ばした埒外の技術だって言う説明の中で言ってただけだったよね」
「俺はレベルが上がらないからスキルなんてのは夢のまた夢だ。けど知識や技術で補えるなら身に付けない手は無い」
正直胡貴と仲良くなるまでは実際に解除できるほどの知識は身につかなかった。
やっぱり天才ってのはいるもので、胡貴と話しているうちに単純な罠の機構くらいなら想像出来る程の知識が身についていた。
「源志くんは本当に凄いね」
「ありがとう、けど今回はたまたま解除出来ただけで、本職ほどの成功率もないしそもそも罠を見つけられないこともあるから、過信はしないでくれよ?」
「ええ、分かったわ」
そこからも警戒しながら、確実に20階層へ向けて進んでいく。
16階層以降の漆原さんの活躍には目を見張るものがあった。
本領発揮と言うかなんというか、渋谷ダンジョンの下層を攻略しているだけの実力を遺憾無く発揮している。
やはり昨日は俺の実力を測ろうと手を抜いていたのかもしれない。
何より。
「漆原さん、後ろは任せた!」
「ええ!」
前方の敵に集中して戦い難なくモンスターを撃破する。
もちろんその間に漆原さんも後ろのモンスターをしっかり撃破してくれる。
分かっていたつもりだが、パーティを組むだけでここまで探索が楽になるとは。
逆に言えば漆原さんがパーティを組んで全力で挑んでも探索が難航している場所に、俺はこれからソロで挑もうとしている。
その無謀さを改めて理解させられる。
「……ソロの限界か」
現実は甘くない。
渋谷ダンジョンと鎌倉ダンジョン、同じ16階層でも難易度は全く別物だ。
「どうかした?」
俺のボヤキが聞こえてしまったようで、漆原さんが心配そうに声をかけてくれる。
「ああいや、なんでもないよ」
仲間が必要だ。
それも俺のスキルに関して知っていて、そのうえで信頼出来る仲間が。
幸い2人程心当たりがいる、今度大学で声をかけてみよう。
次に進むべき道が見えて、より一層足取りが軽くなる。
それを後押しするかのように18階層からモンスターとほとんど合わなくなった。
まるであの悪夢の前の静けさを彷彿させる程に。
「漆原さん、気づいてる?」
「ええ、17階層と比べて間違いなくモンスターが少ない」
やはり気になっていたのは俺だけじゃないようだ。
今回も近くで他のパーティの戦闘音は聞こえない。
このダンジョンは他のダンジョンと違って、リスポーン時間やリスポーン場所は決まっている、もし他のパーティが通った後ならすぐ近くで戦闘音が絶対に聞こえるはず。
何かがおかしい。
その不安を感じながら、慎重にダンジョンを進んでいく。
そしてその不安を後押しするかのような光景が19階層に広がっていた。
「なにこれ、まるで化け物が暴れたあと見たい」
漆原さんすら驚愕する程の光景。
そこら中の壁にヒビが入り、中にはモンスターがめり込んだ痕の様なものまで残っている。
「微かに地面が揺れてる、多分下の階からだ」
よく見ると崩れ落ちた壁の欠片が揺れている。
「とにかくいつでも引き返す準備だけして進みましょう。もし何かダンジョンに異変が起きてるなら、少しでも情報を手に入れて起きたいの、付き合ってくれる?」
「あぁ、もちろんだ」
不安そうな漆原さんの顔を見て、俺は強く頷く。
どうせ引き返しても漆原さんはギルドから正式に調査を依頼されることになる。
それがトップランカーの運命だ。
と言うか忘れそうになるが俺も今はもうトップランカー、どうせ依頼されるなら今2人で調査した方が早い。
「行こう」
「ありがとう源志くん」
驚くことに瓦礫を辿っていくだけで迷うことなく20階層に、更にはボス部屋まで到達してしまった。
……まるで誘われているかのように。
そして部屋からは一際大きな破壊音が響く。
どれだけ大きなモンスターが暴れているんだ。
「それじゃあ開けるぞ」
「ええ」
ゆっくりと扉を開け、2人で中を覗き込む。
物凄い衝撃音が木霊する。
俺は夢でも見てるのだろうか。
「何でこの人がここにいるんだ?」
まさかダンジョンに入る前は、こんな光景を見るなんて思ってもいなかった。
そこに居たのは……
師匠だった。
「お母さん!」
俺が目を見開いていると、隣からもっと驚くべき言葉が聞こえてくる。
「え?お母さん?」
なんだ?どういうことだ?
「ん?その声は冴か、久しぶりだな。それにそこにいるのは源志じゃねぇか。なんだお前ら、デートならもっとマシなとこに行けよ」
読んで頂きありがとうございます。
久しぶりの師匠の登場、しかもお母さんですって、先生を間違えてお母さんと呼んじゃうアレですかね(すっとぼけ)




