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第39話 最暗に包まれる

「フンッ!っとと、こいつッ!」


 勢いよく振ったナイフが空を斬る。


 レッサーデーモンが仕掛けてきたフェイントにまんまと騙され、ナイフを振り切ってしまう。


 クソっ、体が流れる。


 攻撃が来る!


 避ける?無理だ。


等々力(とどろき)くん!頭下げて!」


 漆原(うるしはら)さんの声に反応し、反射的に頭を下げる。


 その頭上を風切り音が通ると、振り下ろされる爪の先端を、寸分違わず切っ先が捕える。


『ギャウァァァァアア!!』


 レッサーデーモンが悲鳴をあげながら空中に逃げる。


「助かったよ漆原さん」


「気を付けて、アイツかなりずる賢いみたいだから」


「そうみたいだな」


 それにしても、指を抑えながら随分と恨めしそうな目でこちらを睨んでいるところを見ると、さっきの攻撃は随分痛かったようだ。


 いやまぁ、痛いよな、あれは、想像しただけで鳥肌が立つ。


 いかんいかん、戦いに集中だ。


 フェイントがある以上は無闇に振り払えない。

 さてどうするか、受け止めて弾くか、それとも。


 サブナイフを取り出し、二本のナイフを構える。


 動きは制限されるが、俺には心強いアタッカーがいる。


「漆原さん、攻撃は任せる」


「ええ」


 短い相槌を聞いてレッサーデーモンの動きに注視する。


 呼吸を整える。


 今度は確実に隙を作る。


 レッサーデーモンがまた下卑た笑みを見せて突っ込んでくる。


 鋭い爪を振りかざすが、これはフェイント。


 左手のナイフが空を斬る。


 ニヤリと笑うレッサーデーモンからもう片手の爪が飛んでくる。


 それを振り払う為に振った右手のナイフも空を斬る。


 これもフェイント。


 俺はまた無防備な状態でレッサーデーモンと対峙する。


 だが今度は漆原さんからの声は無い。


 俺を信じてくれている。


 なら信頼には答えるさ。


 駆け引きは、俺の得意分野だからな!


 勢いよく飛び上がり、宙返りをしながらレッサーデーモンの顎先に蹴りを叩き込む。


 サマーソルトキック、攻撃力はさ程だが、奇襲にはなる。


「漆原さん!」


旭日昇天(きょくじつしょうてん)ッ!!!」


 仰け反ったレッサーデーモンの胴体に、鋭い剣先が突き刺さり、さっきとは比べ物にならないほどの速度で後方へ吹き飛んでいく。


「やったか!」


 あっ、やべ、これやってないフラグだ。


「ごめんなさい、決めきれなかった」


 壁にぶち当たりフラフラの状態だが、レッサーデーモンが立ち上がる。


「STRも下がってるんだ、仕方ないさ」


「決め切るわ!」


 物凄い勢いで漆原さんが走り出す。


「待って漆原さん、まだ駄目だ!」


 って早ッ!


 俺が静止する頃にはレッサーデーモンの目の前まで到達している。


 この距離は不味い、俺のスキルが漆原さんに届かない。


『ギャウギャロッギェェッ!』


 レッサーデーモンの鳴き声と共に、辺りが暗闇に閉ざされる。


 闇が直ぐに晴れないということは、漆原さんの攻撃は避けられたのだろう。


 どうする、なんて考えている暇もない。


 まずは漆原さんと合流しないと。


 そう思った瞬間、微かな羽音と共にレッサーデーモンの爪が横切る。


「ッ!」


 腕に痛みが走る。


 斬撃には耐性の高いスーツのおかげで何とかなったが、どこから攻撃が来るか分からなければ下手に動けない。


 どうする、この暗闇はどれくらい続くんだ。


 漆原さんは。


 遠くの方から剣で攻撃を弾く音が聞こえてくる。


 どうやらこの状況でも漆原さんはどうにか対処出来ているようだが、金属音が鳴る度に移動している。


 押されてるのか?

 声をかけるべきか?


 いや、もし音で敵の位置を把握していた場合、俺の声でかき消されて危険かもしれない。


「きゃあっ!」


 悲鳴が聞こえ咄嗟に身体が動く。


「漆原さん!」


「等々力くん!」


 は?


 おかしい、どうして漆原さんの声が後ろの方から聞こえるんだ?


 まさか!


 そう思った瞬間、顔に爪が突き立てられる。


「ぐぁああアアアッッ!!」


 皮膚が抉り取られ、焼けるような痛みが走る。


 目に血が入り視界は完全に闇に包まれる。


「等々力くん!!」


「ぐぁあ!」


 全く別の方向から、俺の声が聞こえてくる。


 あいつ、声真似とか、味な真似しやがる。


 真似出来るのは悲鳴位か?

 何にしろレッサーデーモンがそんなことできるなんて聞いたことがない。


 て事は、ユニークかよ。


「ユニーク個体!特性声真似!」


 短く、端的に敵の情報を伝える。


 漆原さんならこれで最適解を導き出すはず。


 直に闇魔法も晴れる。


 だが状況はあまり良くない。


 漆原さんがいくら強くても、レッサーデーモンに必ず勝てるとは限らない。


 俺のやるべき最優先事項は、漆原さんのレベルを元に戻すこと。


 それが出来なくても、せめてレッサーデーモンのレベルを下げたい。


 どちらにしろ、この傷で俺の視界がどこまで奪われているか次第で出方が変わる。


「等々力くん!その傷!」


 遠くの方から漆原さんの声が聞こえる。


 視界の黒が微かに赤みを帯びる。


 どうやら視界は完全に潰れているようだ。


「すまない、視界を奪われた!」


「等々力くん、私のレベルを戻して!」


「駄目だ!距離が遠すぎる!」


「分かった、そっちに行くから!じっとしてて!」


 剣で何度も爪を弾く音がする。


 畜生、守るって言ったのに、この体たらく。


「もう!邪魔しないで!等々力くん!等々力くん!!」


 漆原さんの必死な声が聞こえる。


 俺は!


「漆原さん!」

読んで頂きありがとうございます。


視界を奪われた源志くん、頑張れ漆原さん!

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