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第37話 最カワモンスター

「ああクソッ、殺りづらい」


6階層に出てくるモンスターはレッドスライムとホーンラビット。


レッドスライムは良い、スライムと比べて少し凶暴性が増しており、攻撃力はあるが動きは直線的。


2、3度飛び跳ねる動きの後、突撃してくるのに合わせて攻撃すれば、そこまで苦もなく倒せる。


問題はホーンラビットだ。


「ごめん、私もちょっと無理かも」


漆原さんも弱音を吐く。


俺たちの前にいるホーンラビットが、何度か後脚で音を立て、低姿勢になり真っ赤な瞳でこちらを睨んでくる。


「か、可愛すぎる」


ホーンラビットの威嚇行動をみて、漆原さんが目を輝かせている。


そう、可愛いのだ。


くりくりの真っ赤な目、もふもふのぬいぐるみの様なフォルム、ちょこんと突き出る角。


日本のダンジョンは基本的にそこまで可愛いモンスターはいない。


寧ろちょっとキモかったり怖かったりする方が多い。


だからこそ、モンスターと戦っているという感覚が強いのだが。


「ああ、本当に殺りづらい」


こちらが戸惑っているうちに、ホーンラビットが飛びかかって来る。


実際、その鋭い角で突かれれば、そこそこのダメージがある。


とは言え。


「捉えられない速さでは無いんだよな」


ひらりと交わしながらホーンラビットの首根っこを掴む。


しばらくじたばた暴れるが、逃れられないとわかると大人しくなる。


そしてその真っ赤な瞳でこちらに何かを訴えかけてくる。


「うっ、そんな目で見るなよ」


漆原さんも何かこっちを見てあわあわしている。


いやまぁ分かるよ、俺だって殺したくは無い。


でもこいつ、離すと絶対襲いかかってくるからな。


「漆原さん、物は相談なんだが、8階層まで一気に降りないか?そこまで下がればホーンラビットは出てこない」


「うん、そうしよ」


即答だった。


「そうと決まれば、ちょっとごめんな?」


ホーンラビットを持ったまま大きく振りかぶる。


「もしかして等々力くん」


「しょうが無いだろ、殺すよりはマシだ、その辺に離しても絶対追いかけてくるし、投げたら走るぞ」


「分かったわよ」


物凄く考えた後、漆原さんは渋々といった感じて了承してくれる。


意を決してホーンラビットを思いっきり遠くへ投げ飛ばす。


「逃げろ!」



△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼



「はぁはぁはぁ、何とか逃げ切った」


途中何度かホーンラビットに気付かれたが、何とか殺さずに8階層まで辿り着くことが出来た。


「ふふふ、あははは」


息が整うのもそこそこに、漆原さんが笑い出す。


「どうした?」


「何だか可笑しくって、散々ダンジョンに潜って戦ってきたのに、こんな風にモンスターから逃げる日が来るなんて」


確かに、漆原さん程にもなればモンスターから逃げるなんてこと中々無いだろう。


「今、私ほどにもなると逃げることなんて無いんだろーな、とか思ったでしょ」


「え、あ、ああ。そりゃ、最強の冒険者ともなればそうなのかなと。もしかして違うのか?」


「違うよ、いくら強くたって引き時を謝れば命に関わる。特に渋谷ダンジョンはそういう場所、やられそうになっては逃げて対策を立てる、その繰り返し」


そうか、そうだよな。


渋谷ダンジョンは確かに漆原さんが現れたことで、止まっていた探索が少しずつ進み始めた。


けれど今もなおダンジョンクリアはされていない。


漆原さんクラスの人達がパーティを組んで挑んでも、なお逃げ帰らなければ行けない場所なんだ。


俺も早くそんな場所でどこまでやれるか試してみたい。。


「でも、ホーンラビットへの対策は思いつかないかも」


「あれは可愛すぎるよな」


ひと通り笑いあってから探索を再開する。


8階層の敵はコボルト。


ある程度の知能を持ち、弓による遠距離攻撃も使ってくる。


中層だけあってそれなりには強いが、レベル1にしてしまえば苦戦はしない。


どころか。


「はあああっ!」


6対のコボルトが一瞬にして光の粒子になって消えていく。


漆原さんの一撃をくらえば、レベル1のコボルトなんてひとたまりもない。


「うーん!気持ちいい、ここまでの無双感って言うのかな、中々味わえるものじゃないわ」


確かに、ある程度知能を持ち纏まって行動してくるのは大体中層以降、普通に戦えば無双感と言うより、少し面倒だと言う印象が残るかもしれない。


「あの漆原さん?」


「何?」


「さっきも言ったけど、俺の実力を確かめるって目的があるの、忘れてない?」


「………」


ああこれ、楽しくなって忘れてたな。


「ほら、等々力くんの固有スキルの凄さはわかったし、実力も納得だし、後はもうこのダンジョンの完全攻略の実績さえあれば、もういいかなって」


苦しい言い訳をしているのは分かっているのだろう、さっきから目を合わせようとしない。


「良いなら良いけどさ」


そもそもこのダンジョン攻略に、果たして意味があるのか俺にはもう分からない。


漆原さんが俺に接触してしまった時点で、俺の調査と言うのは殆ど意味を成していない。


それなら、漆原さんが満足する様に流れを身を任せるのが利口というものだろう。


「良いの、さっ、この調子で10階層まで一気に行こう!」


「おー」


なるようになるだろ。

読んで頂きありがとうございます。


たまには倒されないホーンラビットがいても良いと思う。

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