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第33話 最早ちょっとヤバい人

「私の早とちりで、ごめんなさい」


「頭を上げてください。俺も急に逃げたりしたし、起こるべくして起こった勘違いだったって事で」


ここが個室で良かった。


最強の冒険者に頭を下げさせた所なんて誰かに見られたら、ますます俺の悪い噂が増えてしまう。


「そう言えば、どうして急に逃げたんですか?」


どうしてってそりゃ。


「ダンジョン内で剣を向けられて、お前を拘束するなんて言われたら、誰だって逃げると思うんだけど」


至極当たり前の事だ、ダンジョン内で拘束されるとか、死んでもおかしくない。


「それは、そうね」


いや、納得するんかい。


「はははっ」


思わず笑えてくる。


「ちょっと、笑わなくてもいいでしょ」


「ごめん、何か漆原さんも人間なんだなと思ったらつい」


「何にそれ、私だってちゃんと人間だよ」


漆原さんでも頬を膨らませたりするんだな。


「才色兼備の完璧超人、そんなイメージだったからさ」


「それは、そうあれって育てられたから」


おっと、何かもしかして地雷踏んだか?


顔を伏せて明らかに落ち込んでいるような。


最強は最強なりに、苦労はあるよな。


「と言うか、イメージで言うなら等々力くんも大概だと思うけど」


「え?」


急に名前を呼ばれて少し驚く。


俺なんて眼中に無いと思っていたが、だとすると、もしかしてあそこに漆原さんが居たのは偶然じゃないのか?


「目付きはちょっと悪いけど、真面目そうってイメージなのに、ギルドじゃあんな大嘘を平気でつくんだから」


「あれはなんて言うか、兄貴分に冒険者としてやっていくなら、ああいう駆け引きも出来た方がいいと叩き込まれたんですよ」


お前は真面目が過ぎるって口酸っぱく言われてたお陰で、さっきはそれなりに上手く立ち回れたと自分でも思う。


「あ、敬語に戻った。同い年なんだから敬語はやめない?どうせ今は私たちしかいないわけだし」


う、笑顔が眩しい。


と言うかよく考えたらこの状況、ファンクラブの奴らに見られたら殺されるだろ。


いや違う、今はそんな事よりもだ。


「違ったらすいません」


「もう、だから敬語は良いって」


「最近俺を見張っていたのは、漆原さんですか?」


空気が固まる。


……?


漆原さんの様子が何か変だ。


まるで、凄く大事な事を忘れていたかの様な、そんな表情。


「えっとその……」


いやもう、それは答えだろ。


まて、まさか自分が俺を監視してた事を忘れてたとかじゃないよな。


「待って、少しだけ考えさせて」


えぇ……。


この小一時間で俺の中の漆原さん像が、ガラガラと音を立ててグズれて行く。


「ギルドからの依頼で、貴方が不正していないか調べていたの」


マジか、マジかこの人マジか。


それ多分、本人に話しちゃ駄目なやつだわ。


「はぁぁぁぁ……」


でかいため息が出てしまった。


と言うか力が抜けた。


「ど、どうしたの?」


机に突っ伏した俺を見て、漆原さんが慌てている。


「良いか、ダンジョンで不正ってそもそも何だ?人を殺して魔石を奪ってるとか?それともモンスターの密売か?違法な薬を使っているとかか?どんな容疑をかけて探っていたかは知らないが、容疑者にお前を調べてると言っちゃ駄目だろ」


ギルドからの依頼だと言うならそれこそもっと慎重になるべきだ。


接触するにしても証拠をしっかり集めてからでなければ隠されてしまうかもしれない。


そもそも、ダンジョン内での不正なんてあって無い様なものだ。


警戒すべきは寧ろダンジョンの外だろう。


漆原さんは相変わらずワタワタしているし。


この人、犯罪調査には向いてないな。


「確かに、ちょっと軽率過ぎたわ。教えてくれてありがと」


ぐっ、素直だ。


何か逆に心配になってくる。


よくこれで今まで人に騙さらずに生きてきたな。


まぁ、最強の冒険者をどうこうしようなんていう奴もまず居ないだろうけど。


「でも、態々教えてくれるって事は、やっぱり等々力くんは悪いことしてないって事でしょ?」


やっぱりって、元々疑って無かったのか?


うーん、何か微妙に心の距離感も近いような気がするし、何か俺への信頼度が高すぎないか?


俺なんかしたっけ。


まぁ良いか、そんな事より。


「それでギルドにはなんて報告するつもりなんだ?直接本人に聞いたけどやってないって言ってました、なんて報告するつもりじゃないよな」


「そのつもりだけど」


何だろう。


頭は良いはずだよな。


東冒大にいる時点で、頭は良いはずなんだよ。


ああ、でも推薦組はそうとも限らないか?


「駄目に決まってるだろ。本人が言ってましたで、はいそうですかとは普通ならないからな?」


はっと何かに気づいたかのような顔でこっちを見てくる。


そして何か知らんけど頭抱えてる。


親しみやすさを通り越して、最早ちょっとヤバいとすら感じてるよ今。


いやいや、逆に考えるんだ、それだけピュアで良い子という事だ。


くっ、もう訳が分からない。


講義で発言とかしてる時は、もっとしっかりしてるイメージなんだけどな。


「それなら、こう言うのはどうでしょう!」


俺も一緒になって頭を抱えてしまっていたが、どうやらその間にあちらは回復していたらしい。


さも名案を思いついたとばかりにいい笑顔をしている。


多分それは名案じゃない迷案だよ。


1回落ち着いて冷静さを取り戻すために、後日話し合いの場を設けた方が良いと思うんだ。


「一緒に適当なダンジョンを完全攻略すれば、実力の証明になると思わない?」


思わない。


けどまぁ。


「うん、じゃあ、それで」

読んで頂きありがとうございます。


等々力くんが絡むとポンコツ可愛くなる優等生ってどうですか?


良いと思います。

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