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第31話 最近の視線

 最近、妙な視線を感じることが多くなった。


 だいぶ悪目立ちしてるからな、そんな事もあるよな。


 なんて思っていたのだが、ダンジョン15階層まで来てもその視線を感じる気がする。


「いやいや、まさかな」


 流石に気にし過ぎだろう、別に悪い事をしてランキングを上げた訳じゃ無い。


 胡貴(こたか)の言う通り、堂々としていればいいんだよな。


 気の所為だと割り切って探索を進めることにした。


 この時もう少し慎重になっていれば、この後慌てずに対処出来たのだろうか。




 敵は猿鬼3体、普通に相手をすれば苦戦するが、レベルを下げてしまえば、楽に勝てる相手だ。


 1体ずつ確実に仕留める。


 2体目の首をナイフで抉り、最後の1体を睨む。


 首を抉った猿鬼が光の粒子になって消えたその瞬間、最後の猿鬼が踵を返して逃げ出す。


 は?


 ダンジョンのモンスターは人を見るや何故か襲いかかってくる。


 モンスターが逃げると言う事は基本的にはありえない。


 だから失念していた、東御ダンジョンで散々手こずらされたフレイムウルフの事を。


 スキルでレベルを下げられたモンスターは、謎に逃走することがあると言うことを。


 さらに悪いことは重なるもので、猿鬼が逃げていくさきを見て、ギョッとする。


 そこには人が立っていた。


「っ!」


 危ない!そう叫ぼうとした瞬間。


 猿鬼の身体が宙に浮き、その背中から剣が生えてくる。


 一瞬だった。


 目にも止まらぬ早さで猿鬼は貫かれ絶命し、光の粒子となって消えてゆく。


 ここまで差があるか……。


 人類最速の剣士 漆原 冴(うるしはら さえ)の剣撃を目の当たりにし、その高みを理解する。


「なんでこんなとこにいるんだ?」


 当然の疑問が口から零れる。


 20階層を突破している彼女が、15階層に居る理由などあるとは思えない。


 しかしその理由を考える余地は与えられなかった。


「あなたを拘束します、抵抗しない方が身のためです」


 猿鬼を穿いたその剣が、こちらに向けられる。


 どういう事だ?


 別に俺は拘束されるような事はしてないぞ。


「待て待て、拘束なんてされる言われは無いぞ」


 俺は取り敢えず両手を上げて無害アピールをしてみる。


「今の状況で言い訳は出来ないと思いますが?」


 今の状況?


 俺は少し思い浮かべる。


 俺、逃げる猿鬼、漆原さん。


 もしかして、俺が猿鬼を嗾けたとでも思ってるのか。


「誤解だ、別に俺は猿鬼に何かしたわけじゃ」


 いや、何かはしてるわ、レベル下げてるもんな。


 しかしどうしたものか、剣を向けてきている位だ、相当頭にきているのだろう。


 今説明しても聞いてくれるかどうか。


 ならどうする、逃げるか?


 人類最速相手に鬼ごっことか無謀だろ。


 普通なら。


 俺は漆原さんに手を翳し、スキルを発動……っ!


「何かしようとしても無駄です、私は貴方より速い」


 目にも止まらぬ速さで、首元に剣を突きつけられる。


 しかし、切っ先は僅かに遠い。


 それはスキルがギリギリ間に合ったことを意味する。


「さっきの事は悪いと思ってる、すまなかったなっ!」


 俺は取り敢えず謝罪の言葉を口にしてから、全力で逃走を測った。


 下手すれば首を落とされかねない、それ程の迫力にビビったとも言う。


「なっ!待ちなさい!……って早!」


 後ろからそんな声が聞こえてくる、取り敢えず転移陣まで全力ダッシュだ、毎朝ランニングしてる俺の体力を舐めるなよ。


「ちょっとこら!罪を認めて投降しなさい!と言うか、とりあえず止まりなさいったら!」


 何か叫びながら、息を切らして追いかけてくる。

 ランキング1位がこのザマとは情けない。

 いや、他の奴には比べれば大分マシだろうか。

 何せ今のあいつはレベル1なのだから。


 転移陣まではそこそこ走る事になったが、まさか着いてこられるとは思っても見なかった。


 だが、流石に転移陣さえ通ってしまえば、漆原さんも剣を抜いたままではいられないだろう。


 その後、熱が冷めるまで待って話しかければ何とかなる筈だ。


「この!絶対に捕まえてやる!」


 そんな声が聞こえてくると同時に、足音も近づいてくる。

 勝負を仕掛けて来たという事は限界は近いのだろう。

 しかし、この勝負はやはり俺の勝ちのようだ。

 俺は20分間走り続けて、やっと目的の曲がり角へとたどり着いた。

 勝ちを確信し角を曲がった瞬間、気が抜けたのだろうか、足がもつれる。


 最強の冒険者は伊達では無いようで、一瞬の隙を見逃さず、漆原が全力でタックルをかましてくる。


 俺は体勢を崩し、そのまま倒れ込むと、馬乗りに抑え込まれてしまう。

 そして、俺たち2人は光に包まれる。


「さぁ、話を聞かせて貰えるかしら?」


 漆原は俺の首に剣を突き立てる。



 ▲ ▽ ▲ ▽▲ ▽ ▲ ▽▲ ▽ ▲ ▽▲ ▽ ▲ ▽▲ ▽ ▲ ▽



 そんなこんなでギルド職員の介入もあり、騒動は収まった。


 が、これからが問題だ。


 俺は黄昏れるのも程々に、着替えを済ませ漆原さんが来るのも待っていた。


 丁度10分が過ぎた頃、私服に着替えた漆原さんが姿を現す。


「お待たせしました、それでは行きましょうか」


 さっきの騒動のせいで随分と注目を集めてしまった。


 2人でいると物凄い視線を感じる。


「ああ、そんじゃ行くか」


 ギルドから出てしばらく歩く。


 その道中も随分と視線を集めることになってしまった。


「ねぇ、あれ漆原さんじゃない?サイン貰えないかな?」

「わ!本当だ!本物?」

「綺麗〜!」

「て言うか、一緒に歩いてるのって誰?」

「さあ、知らない人じゃない?」

「あいつ、なんで横歩いてるの」


 冒険者ランキング1位の超有名人と歩くとどうなるかという所まで頭が回っていなかった。


 これはまた、アンチが増えそうだ。


 しかし、急激にランキングを上げたせいか、一般人からすると俺はまだまだ、ただの人なんだな。




 大通りから外れた場所、喧騒は少し収まり、人の流れも疎らになる。


 そこにあるこじんまりとした喫茶店。


 光亮(こうすけ)さんに紹介してもらった、今や俺のお気に入り店。


 喫茶店でありながら一見さんお断り、落ち着いた雰囲気で珈琲も美味い。


 訳有りさん用の個室まで用意してくれている内緒話にうってつけの場所だ。


「どうぞ、お入りくださいお嬢様?」


 俺は冗談めかしく扉を開けて中へ促す。


「いい所ですね」


 残念ながら俺の渾身のボケはスルーされたようだった。

読んで頂きありがとうございます!


遂に1話の場面にたどり着いたぞ。

それにしても何とも噛み合わない2人ですな。

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