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第30話 最強の苦悩

東京のド真ん中、無数の高層ビルが建ち並ぶそこに、権威を示すかのように聳え立つ一際高いビル。


エレベーターへ乗り込むと勝手に最上階行きへと切り替わる。


窓の外の景色が物凄い勢いで広がっていき、道行く人々が蟻のように小さくなっていく。


ものの数秒で最上階に到達する。


これがいつも現実味がなくてあまり好きじゃ無い。


これだけの高さをあれだけの速度で登って、何の違和感もないと言うのは逆に違和感がある。


エレベーターが開いた先にあるのは、見慣れた玄関。


私は迷うこと無く、その扉を開けて中へと入る。


「お帰りなさいませ、冴様」


スーツ姿の綺麗な女性がこちらに向かって深々と頭を下げて出迎えてくれる。


「ただいま間島さん、いつもご苦労さま」


間島さんは私が物心つく前から家のお手伝いさんとして働いてくれており、お祖母様の秘書も兼任している凄い人だ。


「いえ、滅相もございません」


あまりにも綺麗な微笑みを向けられ、女の私でもちょっとドキッとしてしまう。


う〜ん、美魔女が過ぎる、今度若さの秘訣を聞いてみよう。


おっといけない、いつまでも見とれてる訳には行かない。


「お祖母様は書斎ですか?」


今日私がここへ来たのは、お祖母様に呼ばれたからだ。


「はい、いつも通り、首を長くしてお待ちですよ」


お祖母様が首を長くして待つと言うのは、どうも想像出来ないが、間島さん曰くいつもそうらしい。


「奥様、冴様がご到着なされました」


書斎の扉をノックし、間島さんが中へ声をかける。


「入りなさい」


しばらくして中から声が聞こえてくる。


中へはいると、お祖母様はいつも通り書類に目を通しており、こちらに目を向けることは無い。


これで首を長くしていると言われても、信じられるわけが無い。


「ご機嫌麗しゅうございます、お祖母様」


いつも通り挨拶をし礼を示す。


書斎の空気感のせいなのか、正直息が詰まる。


「今日呼んだのは他でもありません、貴女にギルド長として仕事を頼むためです」


やはりか、私は何となく安堵する、寧ろ仕事以外だと言われた方が動揺してしまう。


「最近巷を騒がせる厄介者が居るのは知っていますね?」


厄介者、思い当たる節があるとすれば2つ。


1つは最近台頭してきた密売組織、団体名は確かガルムだったか、かなり悪どいやり方をしているが、大分面倒なバックが着いているようで冒険者ギルドも手を拱いている。


そんな危険な奴らにお祖母様が私を関わらせる訳が無い。


だとするともう1つの方。


厄災(ロキ)と呼ばれ始めている彼のことでしょうか?」


レベル上限1ながら、東御ダンジョンの完全攻略者であり、渋谷ダンジョン15階層到達者。


脅威の速度でランキングを上げ、今や1桁まで上り詰めている。


「彼?」


初めて書類から顔を上げこちらを睨む。


「あ、いえ、同じ大学ですし、何度か廊下ですれ違ったものですから、何せ最早有名人ですし」


あれ?なんか変に言い訳臭くなっているような、別にやましい事は何も無い……。


って、やましい事って何、いやていうか本当にほとんど話した事すら無いのに何を言い訳がましく狼狽えているの私。


「まぁいいでしょう、知っているなら話が早そうですね。その男の事を調べなさい」


お祖母様の真剣な声に、私は現実に引き戻される。


「調べると言っても、先日実際に実力は示していますし、特に叩いて出る埃もないと思いますが」


私の疑問にお祖母様はため息を漏らす。


「良いですか?あれはレベル上限1、つまりそのままの意味でレベル1という事です。それが15階層まで潜り、剰えランキングに名を刻んでいる、何も無い訳がないでしょう」


それはそうだ、何も無い訳は無い。


けれど、何かあったとして、きっとそれは彼の実力の賜物でしかないと私は思う。


「わかりました、私が責任を持って調べます」


ならばこそ、彼の潔白を私が証明してみせよう。


「あの男が本当の意味でこの世界の厄災になりうるのか、しっかりと見極めて来なさい」



△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼



こうして私は彼の監視に着くことにした。


大学内……は流石に私が目立ちすぎて身動きが取れない。


彼を追いかけ回してはあらぬ噂が立ちかねない。


幸いな事に履修している講義が被ているため、休みの間隔も同じ、彼がダンジョンに潜るのに合わせて、私も潜ることが出来る。


そうして分かった事が少しだけある。


確かに彼は強い、しかし、残念ながらこの階層の敵を倒せるほどとは思えない。


最初は手につけているガントレットの性能が良いのかとも思ったが、メンテナンスの為か定期的に使わずに潜る日がある。


その時も同じ様に戦えているのを見ると、その線は薄い。


そうして観察を続けしばらく経ち、その日は訪れた。


彼が撃ち漏らした敵が、私の方に逃げてきたのだ。


その敵は、あまりにも遅すぎた。


彼との戦いを遠目で観察していたから、今まで少し違和感はあったが気付けなかった。


しかしそのモンスターを倒し私は確信した、彼の戦っているモンスターは、この階層にいるにしては弱過ぎる。


つまり、何かをやっている事は間違いない。


これは彼に話を聞く必要がありそうだ。


どうせ姿を現してしまったのだ、私は開き直って堂々と彼の方へと歩み出す。


「あなたを拘束します、抵抗しない方が身のためです」


敵を倒し剣を抜いたままそう言い放つ。


その途端、彼は踵を返して一目散に逃げ始めた。


逃げる、ということは、やはり何かしらやましい事があるのだろうか。


私は全速力で追いかけた、追いかけてしまった。


剣を持った人が追いかけて来れば逃げる、そんな当たり前な事に気付けずに。


結果、大衆の前で恥を晒し、彼に違約金まで払わせることになってしまった。


ギルドの更衣室で着替えながら項垂れる、私は彼の優しさに救われたんだ、この後どんな顔して話し合いをすれば良いのだろうか。


「ああもう、私のバカ……」

読んで頂きありがとうございます。


さぁ第3章幕開けです。

遂に遂に漆原様のメイン回だぞ!

やったー!

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