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第29話 最強へと近づく

等々力(とどろき)くんも真面目だね、こんなことに付き合う必要ないのに」


控え室で早瀬(はやせ)さんが不満そうに頬をふくらませている。


大学から俺に試験官をやる様にとお達示があった日から。


『こんな半強制的なやり方納得できない、私文句言ってくる。』


と言って何度も大学に抗議してくれていたのだ。


「怒ってくれてありがと早瀬さん、でも実際正規の方法でランキングを上げたかと言われると怪しいとこあるしさ」


通常なら殆ど値のつかないレベル1の魔石を、胡貴(こたか)に通常の魔石の価格の3倍の値段で買い取って貰っている上、俺は基本一人で探索している。


いくら運が悪くてドロップしづらいとは言え、そのマイナスを埋めるには余りある。


「別に不正してる訳じゃねぇ。源志(げんし)は俺からの依頼をこなして正当な報酬を貰ってるだけなんだからな。例えそれがコネだと騒がれたところで堂々としてりゃいいんだよ」


今回の件に納得していない人のもう1人、胡貴まで珍しく部屋から出て来て控え室に来ていた。。


「胡貴もありがと、こんなに心配してくれる2人の友人に囲まれて俺は幸せ者だよ」


俺は冗談目かしく笑うと、2人は満更でも無さそうに笑いかけてくれる。


「んじゃ行ってくるわ」


俺は控え室の扉へと歩き出す。


「源志、魔導ガントレットの整備は一応済ませてあるぜ、本当に使わないのか?」


胡貴がガントレットの入ったケースを差し出してくる。


気を利かせて整備を間に合わせてくれたのだ。


「今回、武器や防具は使えねぇよ、それで実力を見せてもどうせイチャモンがつくからな」


俺の空笑いに2人が心配そうな顔をする。


今回の話は俺の不正を押さえるのが目的と言っても過言では無い。


つまり何も装備せずに実力を示せば、手っ取り早く疑いを晴らせる。


「これじゃまるで、誰の試験か分からないよ」


早瀬さんが唇を噛んで悔しがる。


全く、本当に、いい奴らだな。



△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼



「来たぞ、インチキ野郎だ!」

「レベル上限1の雑魚なんだろ?」

「噂じゃギルド以外に法外な値段で魔石を売ってるとか」

「俺はダンジョン内で人を殺したって聞いたぜ!」

「ダンジョン内で会うと必ず不幸が起こるんだって、まるで厄災よね」


入学試験は冒険者のスカウトの場としても開かれている。


大学の在学生なら誰でも、ギルドに登録している冒険者なら、ある程度のお金を出せば観戦できる。


平時ならこの予備の入試枠には好き者しか見にこないのだが、話題が二つも重なれば満員にもなる。


「予想はしてたが、ブーイングの嵐だな。それに比べて」


受験生が入場してくるのに合わせて、会場がいっそう盛り上がる。


「来たぞ、モンスター化のスキル持ち!」

「しかも鬼化だろ?」

「ヤバいだろ!日本の鬼と言えば、ものによっちゃドラゴンレベルだぞ!」

「めちゃくちゃ強そうなんだけど!」

「インチキ野郎をぶっ潰せ!」


「大人気だな、千國(せんごく)


あの後しっかり手続きをしたようだ。


鬼化のスキルが発覚してからと言うもの、冒険者の中ですっかり時の人となっている。


「おい、どうしたんだよ?」


しかしその千國はさっきから俺の前に立ち尽くし微動だにせず目を瞑ったままでいる。


「まぁ、良いか。さっ、皆お待ちかねだ、試験を始めようか」


俺はいつでも対処できるように構える。


すると千國がゆっくりと動き出し、高らかと手を挙げる。


「俺はこの試験を辞退する」


…………。


は?


今なんて言った?


「俺なりのケジメだ、お前が試験官なら、俺は今回の試験を辞退する。あれから色々調べたが、この大学に入学する術はまだまだある」


確かにそうだ、優秀な冒険者に環境を用意するのがこの大学の目的。


だからこそ強い冒険者からの推薦で入れてしまったりと以外にも入学する術は用意されている。


「いやいや、待て待て。ここで辞退されると俺が困るんだが」


このままだと俺のきっちりバトって知名度回復作戦が、というか、むしろこれだと悪化するんじゃ。


会場がざわつき出す。


「どうなってんだこれ?」

「もしかして弱みでも握られてるのか?」

「ありそう!自分より優れた奴は排除するのかよ!」

「汚ぇ真似しやがって!」

「このクソハゲ野郎!」


おい今ハゲって言ったやつどいつだ、クソ人が多すぎて特定できねぇ!


じゃねぇ、やっぱりこうなったか。


「おい待て!どうしてそうなる、俺は別に弱みを握られてるわけじゃ……いや、そうとも言うのか?」


おいそこで言い淀むな!真面目バカ!


くっそ確かにこいつが余りいい組織に属していなかったのを俺は知っているわけだが、別にそれ使ってどうこうはしてねぇだろ!


「やっぱり!」

「最低だあいつ!」

「最低で最弱のインチキ野郎だ!」


ああ、もういいや。


パンッ!っと思いっきり手を叩く。


「はいはい、落ち着け。今回試験官を任されてるのは俺だ、とりあえず、今の辞退は却下な?」


俺の言葉に会場中がキョトンとしている。


「おい、等々力。却下ってどういう事だ」


俺は特大のため息を着く。


「お前な、そもそも鬼化なんて言う最上級スキル持ちを落とす、なんて選択肢があるわけねぇだろ。ここにいる時点でこの戦闘の結果がどうだろうと、お前は合格なんだよ。つまりこんなもん茶番だ茶番」


ぶっちゃけ本当にこれだ、いくら大学が試験官を俺にしたとは言っても、最終的な合否を出すのはどうせ大学だ。


俺が何しようが、こいつが合格すると言う未来は変わりようがない。


「だからちゃんと鬼化して俺と戦え。現時点でお前が俺に勝つ可能性は万に一つもねぇからよ。安心してボコられろ」


俺は掛かって来いと手招きをする。


「テメェはよ、マジでムカつく奴だな」


悪態を着く千國の口元には笑みが見える。


「先輩が胸を貸してやるよ、なんてな」


俺の言葉を聞き、千國の身体が真っ赤に変化し、額から角が生える。


一撃喰らえば確実に死ぬ拳、俺はそれをひらりと躱す。


「前回戦った時も思ったが、お前の戦いは直線的すぎる」


「ほざけ!」


指摘されてフェイントも織り交ぜてくる。


しかし。


「本当にさ、そういう所が素直なんだよな、お前は」


素人のやる目に見えたフェイント何てのは、ただの隙でしかない。


俺はしっかりと息を吐き切り、そして新鮮な空気を身体に取り込む。


魔導ガントレットを制御する中で、俺は魔力という今まで無かったものを制御する感覚を覚えることが出来た。


その副次的効果とも言うべきか、目に見えないものの制御というものに、少しだけ馴れることが出来た。


いつもより身体が軽いのが分かる程度にはだが。


「これで使えるようになっただなんで言ったら師匠にまたボコられるかな」


本当に、師匠は化け物だよな。


「何笑ってやがる!」


避けられ続けて焦った千國の攻撃が雑な大振りになる。


そして衝撃音が会場中に響く。


「いっ!てぇ〜〜!うわっ、腕バキバキに折れてる!ッゥーーー」


カウンター一閃。


今できる俺の最大の攻撃。


目の前で千國は大の字に伸びている。


しかしその代償が、これか。


「俺もまだまだだなぁぁ」



△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼



「マジかよ、勝っちまった」

「いやいや、ありえないだろ!どうせインチキだ」

「あの千國ってやつもグルなんだろ」

「なんだよ、クソ茶番じゃねぇか、しょうもない」


会場が騒がしい。


嫌気が差してくる。


今の戦いを見てそんな言葉が出てくるなんて、冒険者って言うのがこんな人たちばかりだとは思いたくない。


「漆原様が、険しい顔をなさってるわ」

「それほど今の戦いが気に食わなかったのよ!」


自分の名前を使われてついそちらの方を睨んでしまう。


「「ひっ!」」


おっと、いけない。


等々力源志。


最近あの人のこととなるとどうも感情的になってしまう。


どうしちゃったんだろう私。


深呼吸をしてとりあえず落ち着きを取り戻す。


それよりもだ。


「最後の一撃……あれって、天明流?」

読んで頂きありがとうございます。


これにて第2章完結になります!

源志くんはちゃんと強くなっている!

そして遂に第3章!

ワクワクが今から止まらないぞ。

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