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第28話 最良の選択

「おい、それは遊ぶもんじゃねぇって!だぁもう、源志(げんし)も止めろ!」


拳大の金属の玉を転がされ、それを追いかける胡貴(こたか)を見て俺は微笑ましく思う。


(そら)、こっちへおいで」


名前を呼ばれて女の子がピタリと動きを止める。


一度助けてしまった手前、傷だけ直してさようならという訳にもいかず、俺はこの子を保護することにした。


まぁ、ダンジョンの外に出た途端、沢山の人に驚いて暴れだしたり、偶然そこに居合わせた光亮(こうすけ)さんに世話になったり、部屋に連れてきたなり胡貴に襲いかかったり、部屋の隅にずっと隠れていたりと色々あったが。


今では胡貴にイタズラして元気に遊べるほどにまでなってくれた。


一先ず安心と言った所だが、さてこれからどうしたものかと考えあぐねている。


「空、あんまり胡貴を虐めちゃダメだぞ?」


とりあえず、名前が無いと不便なので、少し安直かとも思ったが、瞳の色から空と名付けた。


「ギャャ!」


言葉が分かっているのかは分からないが、相槌を打つように鳴いて近寄ってくる。


うん、可愛い。


「あ?誰が虐められてるって?」


胡貴が不機嫌そうな声でこちらを睨んでくる。


なんだここ可愛いの宝庫かよ。


「で、実際どうすんだそいつの事。大学もダンジョン攻略もあんだ、今はお前がいない間俺が面倒見てるが、お前が居なくなった途端中々なもんだぞ?お前を母親かなんかと勘違いしてるんじゃないのか?」


そうだよな。


ダンジョンは兎も角、大学には連れて行けない。


偶然胡貴がほとんどこの部屋で過ごしてるおかげで預けて居られているが、こいつにだってやることはある。


「母親か、多分そうなんだろうな。この右手の魔石はこいつの親のものだろうから、勘違いしていてもおかしくない」


俺は自分の右手を空へと近づける。


すると嬉しそうにその手に頬擦りをしてくる。


「ここまで懐いてるのに引き剥がすのも酷だよな。暫くは俺が世話はしてやるが、ちゃんと考えとけよ」


胡貴は金属の玉を拾い上げながら、そんな提案をしてくれる。


なんだかんだ情が湧いているのだろう。


「所でその玉は何なんだ?」


ここ最近ずっとあれを弄っているので、実は俺も気になってはいた。


「ああ、これか?ちょっと源志の力で起動させてみろよ」


胡貴が手に持った玉をこちらに投げて寄越す。


しかし残念ながらそんなパスが通る訳もなく。


「あっ、こら空、返しなさい」


見事にインターセプトされ暫く追いかけっこが始まる。


畜生楽しいなおい。


「で、起動すれば良いんだったか?」


右手で持つと機械の中に魔石が埋め込まれていることが感覚でわかる。


しかし、どうも力が抑制されているようだ。


「魔石の制御機構が完成したのか?」


「残念ながら、制御までは至ってねぇよ。お前が気付いたって事は抑えるのには成功した見たいだが、起動するには源志の力が必要だ」


それでも随分な進歩だ。


魔導ガントレットは制御も含めて俺がやっているが、これが中々に難しい。


「じゃあ行くぞ?ブート」


俺の声と共に機械に魔力が流れ込む。


起動すると玉が回転し始め、掌から離れて浮き始める。


「おお、ドローン的なやつか?」


球体型のドローン、どうやって飛んでるのかは分からんが、胡貴流のとんでも理論なんだろう。


「その通り、しかも世界初、ダンジョン内からの通信機能付きだ。……多分」


「マジかよ」


俺は純粋に驚いた。


ダンジョン内には電波が届かない。


閉鎖空間なのだから当然といえば当然だ。


5年程前にどっかの大企業が、通信設備をダンジョン内に設置するプロジェクトに挑んでいたが、残念ながら失敗に終わった。


理由は簡単、モンスターの闊歩しているダンジョン内でアンテナの整備なんてやってられないからだ。


年に1回とかならまだ可能性があるのだが、残念ながらダンジョン内に放置された物は1時間程度で消えてしまう。


1時間に1回誰かが管理しに来なければ行けない。


危険なダンジョン内だ、そんなもん無理に決まっている。


ダンジョン内で通信が出来るようになる。


それは間違いなくダンジョン探索の常識を変える事になるだろう。


「大天狗の魔石の力を利用したんだよ、心を読む力の拡大解釈で何とかならないかと思って作ってみた」


なるほど、よく分からんが凄いことだけは分かった。


そして残念ながら量産も厳しいだろう。


大天狗は東御ダンジョン固有のボスモンスター。


その性質上1日1回しか入手チャンスが無く、俺の運では1つ落ちただけでも奇跡。


渋谷ダンジョン攻略と並列での攻略も距離的に厳しい。


「これで源志がダンジョンに行ってても空と連絡が取れるだろ?」


照れ隠しにフードを深く被り直しながらそんなことを言ってくる。


「胡貴お前、なんだかんだ言って空の事大好きかよ」


「あ?別にお前が居ないと暴れて大変だからだよ、自分の為であって全然空の為とかじゃねぇから」


急に早口でまくし立ててくる。


因みに空は浮いてる玉を捕まえようと飛び跳ねている。


どうやら気に入ってくれた見たいだ、俺が大学に行っている間の暇つぶしとしても使えそうだ。


「ちなみに、これはなんて名前なんだ?」


分かりきってはいるが一応聞いてみる。


「魔導ドローンだが?」


ですよね、知ってました。


「何だよその目は、こう言うのは無難な方が良いんだよ。それよりも!明日の準備は大丈夫なのか?」


明日、か。


面倒な事に明日の再入学試験の試験官を務めるようにと大学から打診があった。


どうも俺の実力を疑う冒険者ギルドからの要請だとかいう話だ。


「胡貴に買い取ってもらってるおかげで、俺の順位はうなぎ登り、不正を疑う声も大きくなり過ぎて、ある程度公式の場で力を見極めたいって事なんだろうが」


ここらで一発うるさい奴らを黙らせるのも一興か。


……なんて思ってた時期が私にもありました。

読んで頂きありがとうございます。

空ちゃん元気になって良かったね!


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