第26話 最強クラスのスキル
「人間の肉体には、どこまで行っても限界がある。鍛えて鍛えて鍛えて武芸を極めたとしても、レベルが上がってある程度の肉体改造が行われたとしても、ベースは人間。どこまで行っても肉体の強度以上の事は出来ない」
師匠の言葉に俺は目を細める。
いやいや、攻撃を食らってる俺なら分かる、師匠の攻撃なら竜だってぶっ飛ばすだろ。
どう考えたって肉体の限界超えてるようにしか思えないんだが……。
「んだその目は、致命的に才能の無いお前に言っても信じねぇだろうが、きっちり修行を積めば誰だって私位にはなれる」
絶対嘘だ。
という目で見ていたら、師匠にめっちゃ怖い顔で睨まれて目を逸らす。
そんな俺に呆れたように溜息をつき話を続ける。
「だが極稀にその肉体の限界を大きく跳ね上げる固有スキルに目覚める奴がいる」
それを聞いてピンと来る。
なるほど、それが固有スキルだと言われれば納得の行く強さな訳だ。
俺の固有スキルも大概異常な力だしな。
肉体の限界を超えるスキル、最も有名なのはドイツの英雄。
「ジークフリードですね」
その名の通りドラゴンの血を浴びた英雄の様に無敵の肉体であらゆる攻撃を弾くらしい。
「そうだ、日本でもそう言ったスキルは確認されている。その殆どが何らかのモンスターの力を得るものだ。ジークフリートのスキルも指図め竜化と言った所だろうな」
竜化、竜に化ける、か。
もしそのスキルが読んで字のごとくであれば、人間の肉体強度なんて優に超えているだろう。
「それで、どうして急にそんな話を?」
モンスターの力を得る固有スキル、確かに強力だが俺の固有スキルだって、そこまで考えてハッと気づく。
「気付いたか?固有スキルの殆どは最初の経験値を獲た時に覚醒する。つまりレベル1にしても使えるのさ。お前の固有スキルは言わば他人の努力を否定し自分の土俵に引きずり下ろす力。そもそもスタートラインの違うモンスター化の固有スキル持ちとは相性が悪いのさ」
確かに、レベル1にしたらどんな奴でも倒せるなんて驕れるほど俺は強くない。
ましてモンスター化なんて冗談じゃない。
「そういう奴にあったら逃げろって事ですね」
俺は師匠の言いたいことを理解しドヤ顔で返す。
「そんな奴でもぶっ飛ばせるようにきっちり鍛えてやるから安心しろって話だバカ、最終的にお前にも竜をぶん殴って倒せるようになってもらうからな」
「やっぱり竜ぶっ飛ばせるのかよ師匠!」
「やっぱりって何だ?どうせそんなくだらねぇ事考えてんだろと思ってたが、今日の修行は厳しくなりそうだな?」
「畜生!カマかけやがったなババァ!」
「いい度胸じゃねぇかガキ、その逃げ腰の根性から叩き直してやるよ」
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「鬼化か……?」
千國の変貌した姿を見て嫌な汗が流れる。
赤い皮膚に額から伸びた2本の角、血管が浮きでるほど隆起した筋肉。
もしもあれが赤鬼ならば相当やばい。
モンスターは基本的にその土地や国の伝承に載っとった強さがあると言われている。
日本のダンジョンにおいて赤鬼とは竜に匹敵する程の最強種だ。
「死ねクソが!」
一瞬にして間合いを詰められる。
早い、が、見切れないほどでは無い。
空気を震わせる程の一撃を何とか避ける。
スピードは師匠より無いが明らかにパワーが師匠以上、当たれば死ぬ。
「千國、そんだけの力があるお前が何でそんなところにいるんだよ」
鬼の力、その力で冒険者を目指せばジークフリードに匹敵する冒険者になれたはずだ。
「黙って死ねよクソザコ野郎!」
怒りに任せた大振り、当たるはずは無いが当たれば即死、そんなプレッシャーがジワジワと体力を削って来るのを感じる。
戦いづらい、目の前にいるのが知り合いってだけでこうも違うのか。
俺もまだまだだな。
「これも修行だ」
俺は頭を切替える。
敵はまだ3人、魔法使いはここまで来てまだ何もしてこないことを考えると固有スキルは無い、無視でいい。
隙を伺ってた女……。
いつの間にか倒れた大男と共に居なくなっている、この状況で不確定要素?冗談じゃない。
それからあの女の子、壁に投げつけられてからピクリとも動かない。
肉体的な傷は回復させればいいから意外と扱いは雑なのか?
死ぬ程のダメージではないだろうがもし俺をすぐ倒して回復するつもりだった場合、それなりのダメージを負っている可能性はある。
人質にされたら面倒だな。
「余所見してんじゃねぇよ!」
横凪の蹴り、ちょこまかと動く俺の動きを止めたくて無理やり当てに来る。
それに合わせ近づき、立ち位置を入れ替えながら投げ飛ばし女の子の方へ駆け寄る。
途中で魔法使いに邪魔されるかとも思ったが俺とすれ違うと一目散に逃げていった。
「良かった、息はあるか」
かなり弱っているが息はしている。見た感じダメージによる物よりも飢えによる衰弱が激しそうだ。
「ああ、本当に頭に来るぜ、だが態々自分から逃げ場を無くしてくれるなんてよ」
攻撃の勢いそのままに壁に吹っ飛んで行った千國が立ち上がる。
あいつの言う通りここは女の子が追い詰められていただけあって袋小路になっている。
だがそもそも俺に逃げる選択肢は無い。
この子の無事が確認できた今なら思う存分戦える。
俺は右手のガントレットを胸の前で構える。
「ブート」
ガントレットが淡く光り起動する。
「リリース」
駆動音と共に上面のカバーが開きそこに魔石をセット。
「ロード!」
魔石の力がガントレットに流れ込む感覚、この感覚に慣れるまでそれなりに大変だったが訓練を重ねるのは俺の得意分野だ。
「テメェ、この期に及んで何玩具で遊んでやがる。本当にイラつくぜ!」
ブチ切れた様子の千國が殴りかかってくる。
「玩具かどうか試してみろよ、アクティベーション"猿鬼"!!」
読んで頂きありがとうございます。
胡貴くんとの友情の結晶がついに火を吹くぜ!
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