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第25話 最低の冒険者

「やっと見つけたぜ、手間取らせやがって」


 ガラの悪い大柄な男が巨大なバトルアックスを肩に担ぎながら、追い詰めた白い虎の女の子へ下卑た笑みを浮かべている。


「まさかあんな巣穴に隠れてるなんてね、見つけるのに苦労したわ、黴臭くてかなわない」


 ダンジョンに似合わない煌びやかな紺色のドレスを纏った女は手に持った扇子で鼻を覆う。


「それにしても可愛い子ですねぇ、売る前に少しくらい楽しんでも良いんでしょうか?」


 ローブを纏っているのは魔法使いだろうか、ニヤニヤと笑いながら品定めをしている。


「良いわけないでしょこのロリコン。大切な売り物なんだから」


 女が魔法使いの頭を扇子で叩く。


 売り物、まさか人身売買か。


 人身になるのか?


 賊は4人、先頭に大男、中盤に女と魔法使い。

 そして最後尾で3人のやり取りをつまらなそうに見ている男の姿には見覚えがあった。


 同じ高校に通い、卒業式の日も絡んできた男、千國 琥翔(せんごく たいが)だ。


 ガラは悪いが悪いことはしないと思っていたのだが買いかぶりだったか。


 どうだっていいか、俺には関係の無い事だ。


 ダンジョン内で生き残りたければ見ざる聞かざる言わざるが鉄則。


 可哀想だが助けてやる義理もない。


 俺はその場から気付かれない様に離れることにした。


「ギャャ……」


 苦しそうな声が聞こえてくる。


 振り向くと大男が女の子の首を掴みあげている。


 見ざる聞かざる言わざる……。


 分かってる。


 だけどここでこれを見逃して、俺は胸を張って最上級冒険者を名乗れるだろうか。


 俺は掌の魔石を見つめる。


 義理は……あるかもな。


「何やってやがる、お前ら!」


 俺は叫んだ。


 本当に、何やってんだか。


「あ?ブハッ!おいおい、マジでいんのかよこんなやつ」


 こちらに振り向いた大男が吹き出すように笑う。


「笑っちゃ可哀想よ、ダンジョンの鉄則も知らない坊やだもの」


 ピシャリと扇子を閉じながら女は鼻で笑ってみせる。


「ああ言う死にたがりはどこにでもいるものですよ」


 魔法使いが臨戦態勢を取る、戦闘は避けられないだろう。


「ハッハッハッ!嘘だろおい……。ダンジョン内でテメェと会うとわな。しかも俺の前に立ち塞がるかよ」


 千國は心底愉快そうに笑うと直ぐに怒りを顕にする。


 コロコロと表情を変えて忙しいやつだな、なんて煽ったらもっとキレるんだろうな。


「おい新入り、知り合いか?なら丁度いい、お前この馬鹿ぶち殺せ」


 完全にやる気みたいだ。

 こっちも手加減出来る程強くは無い、最初から飛ばしていくか。


 俺は手を翳し相手のレベルを下げる。


「レベル上限1のゴミが一丁前に構えやがって、ムカつくんだよそう言うところが!」


 両手剣を振り上げ斬りかかってくる。


 が、遅い。


 ヒラリと攻撃をかわしガントレットでぶん殴る。


 相手が舐めてるうちに速攻で勝負をつけにいく。


 隙だらけだったおかげで全員レベル1に出来たとは言え相手の人数が多いのは変わりない。


「ッ!クソが!」


 威嚇のように吐き捨てる千國の顬に上段蹴りをぶちかます。


 力なく崩れ落ちる様子に大男は頭を抱える。


「おいおい、こんなひょろっちぃガキにやられてんなよなぁ、たく使えねぇ」


 大男は掴んでいた女の子を投げ捨てると、バトルアックスを抱えたままこちらに歩み寄ってくる。


 体格を見れば分かるが、この人は元々相当鍛えているんだろう。


 レベル1になっているにも関わらず平然としているのがいい証拠だ。


「獅子は兎を狩るのにも全力を尽くすってな、おい、俺を強化しろ」


 コキコキと首を鳴らしながら大男が指示を出す。


「仕方ないですね、その代わりあの女の子と遊ばせて貰いますからね」


 魔法使いが杖を振りかざし詠唱を始める


「チッ、商品価値が無くならねぇ程度になら許してやるよ」


 それを聞いて嬉しそうに魔法使いは笑みを浮かべる、しかしその表情は一瞬にして曇ることになる。


「なっ、詠唱が浮かんで来ない?」


 焦ったように魔法使いは何度も杖を振りかざす。


「おい!何してやがんだ、遊んでんじゃねぇぞ!」


 痺れを切らした大男が俺から視線を外す。


 その隙を見逃す俺では無い。


 顔面目掛けてジャブを放つ。


 咄嗟に応戦しようとバトルアックスを振り下ろして来るがそんな攻撃当たるわけが無い。


 振り下ろす隙間も無いほど近接し大男の脇腹に深々と拳を突き立てる。


 どれだけ鍛えていようとも、レベルを下げられ防御力が低下している状態での久々に感じる鈍痛だ、堪らず顎が下がる。


 すかさずそこへアッパーカットを叩き込む。


「こんな事してただで済むと思っているの?」


 女が苦虫を噛み潰したような顔でこちらを睨んでくる。


「さぁな、ただ目の前で苦しんでる女の子を放って逃げられるほど、俺は人間出来ちゃいないだけさ」


 俺は女の鼻っ柱にナイフを突きつける。


「女の子?これが?これはただのモンスターよ!バッカじゃないの?それで他の冒険者を襲って刃物を突き立ててるわけ?」


 呆れ果てた様子でこっちを馬鹿にしてくる。


 モンスター。


 そうなのかもしれない。


「最低、あなた私たちより余っ程最低の冒険者よ」


 嘲笑うような視線、俺を動揺させて隙でも伺っているのだろうだろうか。


「最低な冒険者か。そうなってでも俺はその子を助けるよ、今そう決めた」


 これは多分俺のエゴだ。

 それを押し通す以上その程度の侮蔑は受け入れる。


「……ザコが、粋がんなよ……?」


 最初にぶっ飛ばした千國が壁を支えに立ち上がっている。


「漫画の主人公見てぇでカッコ良いなぁ、胸糞悪ぃ。何が苦しんでる女の子を放って逃げれないだ。何がその子を助けるだ。最弱の癖によ。レベル上限1の癖によ。俺の前に立ち塞がんなよ!!」


 千國が壁を思いっきりぶん殴るとそこに大穴が空く。


 その皮膚は異形の如く赤くなり、目は血走り、額を割りながら2本の角が生えてくる。


「お前、死んだぞ」

読んで頂きありがとうございます。

千國が何かやばい事になりましたね。


良かったら、

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