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第12話 最高峯の学び舎

 お腹が空いた。


 小さな穴の中で、二足獣から剥ぎ取った皮を食みながら空腹を紛らわす。


 ただそれにも限界が来ていた、噛みすぎてもう味もへったくれも無い。


 この空腹を満たすには、危険を承知で狩りに出なければならない。


 幸い前回の狩りで運良く癒しの水を手に入れることが出来た、もしもの時はここに戻ればなんとかなるだろう。


 穴からそっと顔を出し、辺りを見渡す。


 やはりここへ引っ越したのは正解だった、近くに獣の臭いはない、するのは精々石造りの壁に生えた黴の臭いだけだ。


 少しでも危険を回避する為に、薄暗い道を選びながら今日の獲物を探す。


 足音を殺し、耳を澄ます。


『*@&☆#≦∞⊆≈ζο』

『‰=>∈ξю*":@#☆**&#』

『#。*&@ЩбЯ∞∬⊂*#*』


 静寂を切裂く様に響き渡る鳴き声に、思わず身を屈める。


 二足獣の集団だ、奴らは独特の鳴き声を発しながら歩くので直ぐに分かる。


 上手くすればご馳走にありつけるが、複数匹いる場合は隠れた方が懸命だ。


 できるだけ暗い壁際で伏せて、奴らが通り過ぎるのを待つ。


 聞き耳を立て、神経を尖らせ、遠ざかったのを確認し、また探索を再開する。


 しばらくしてまた二足獣の気配を察知する、今度はどうやら一匹のようだ。


 目を凝らしながら徐々に距離を詰めていく。


 それはまるで獲物を狩る肉食獣のように静かに、闇の中で瞳を光らせる。


挿絵(By みてみん)




 △ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼



 東京都心のビル群の中、急に視界が開けたかと思うと初々しい若者達が立派な門の中へと吸い込まれていく。


 いやまぁ、俺も目的を同じくする若者ですけどね。


 東京冒険者大学。


 一流の冒険者を目指し数多くの学生がこの門をくぐる為に努力をし、選ばれた者達だけが今日この日この門を潜る事を許される。


「それにしてもデカ過ぎるだろ」


 巨大な校舎と見るからに広大な土地、ついそんな感想を呟いてしまう。


 自分の通っていた高校も、他と比べればかなり大きい方だったが、流石にスケールが違いすぎる。


 これが日本で唯一の国立冒険者育成機関か。


 俺は冒険者証を取り出す、概要によるとまずは大講堂で入学の式典があるらしい。


 人の流れに身を任せつつ、案内に従って中央に聳え立つ大講堂へと歩みを進める。


 中へ入るとロビーが広がっており、いくつも設置されたホログラムによって案内板が表示されている。


 これ程の光景を作れるのも、目の前に超巨大ダンジョンがあり潤沢な資源が使える、この大学だからこそだろう。


  そう言えば冒険者証も凄いことになっている。


 元々冒険者証はこの大学で開発されたものらしく、一般冒険者に普及しているものは機能縮小版となっている。


 この大学に入学するとロックされた機能の一部が使えるようになる、それもこの大学に入るメリットの1つと言える。


 その機能の内の一つが学内サーバーへのアクセスだ、それを介して学園側からも入学の概要が送られてきている。


 冒険者証を確認しながら指示された席に座る。


 まだ開始まで時間がある、しばらくここで待機する事になりそうだ。

 辺りを見ると各々上手く時間を潰している。


 そう言えばここに来る間にも、家族と写真を撮ったり同じ高校から入学したであろう友人と駄弁っている人達が結構いた。

 道すがら熱心に入学生に話しかけていたジャージ姿の人達は、この大学の在学生だろう。


 ちなみに俺の親には師匠から連絡が行っているらしく、入学式に参加する気満々だったとの事だ。

 多分もう会場に入っている事だろう。


 連絡は来ていたが、小っ恥ずかしくて会う気になれ無かったので無視する事にした。


 手持ち無沙汰な俺は冒険者証を弄りながら、追加された機能を色々と触って時間を潰すことにした。

 親に会わないとなれば、別に一緒に入学する友人も居ないからな。


 そうこうしていると開会の時間になる。


 式は粛々と進められていく。


 入学生を歓迎する奏楽が終わると、開式。


 総長の式辞。


 冒険者学部長の式辞。


 来賓の祝辞と続き……。


『入学生総代による宣誓を行います。入学生総代 漆原(うるしはら) (さえ)さん』


「はい」


 最前列中央の生徒が返事をし立ち上がる。


 分かってはいたがやはり会場がざわつく。


 俺も直接見るのは初めてだ。


 東冒大の総代は慣例として入学生の中で最も冒険者ランキングの高い人が行う事になっている。


 つまり今年は現最強の冒険者、冒険者ランキング()1()() が選ばれるのは必然だ。


 入学生の中からも感嘆の声が聞こえてくる。


 しかし彼女が壇上に上がりマイクの前に立つと、途端会場は静寂に包まれる。


「入学生代表としてご挨拶申し上げます。

 桜の花が咲き乱れる季節を迎え、暖かな春の日差し感じるこの良き日に、

 東京冒険者大学入学式に出席できることを、私たちは大変光栄に思っております。

 私たちは一人一人がここに至るまでに長く険しい試練を乗り越え、

 日本最高峯の東京冒険者大学において研鑽を重ねる機会を得る事が出来ました。

 私たちはこれからより多くの試練を乗り超える為、ダンジョン探索における最先端技術を学び取り入れ、

 研鑽を積み重ねる事により更なる社会の発展に寄与すると共に、

 まだ攻略されていないダンジョンへの挑戦と、未知とされている様々な事象の解明に取り組んでまいります。

 総長先生を初めとする諸先生方、そして本日まで私たちを信じ応援してくださった家族や友人の皆様に、東京冒険者大学で学びの機会を与えてくださった事に深く感謝を申し上げます。

 充実した大学生活とそれぞれの夢を叶える為に、私たち自ら挑戦をし続ける事を誓って、

 新入生の挨拶とさせていただきます」


 凛とした立ち姿、澄み切った声、目に焼き付き、耳に残り、心に刻まれる。


 今になって実感が湧いてくる、俺は東京冒険者大学に入学するのだと。


 あれが俺の目指すべき最上級冒険者の姿か。


 今から楽しみだ。

読んで頂きありがとうございます。


という事で新章スタートです!大学生活とダンジョン攻略!もう自分が楽しみ過ぎてヤバいです。


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hologram 発音を聴くとほるぐらむには聴こえます。 フォログラムには聴こえないかな。
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