ドグラ・マグラ の様な
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
所々で姿を現すこの作家。
前に出て来たのは、幻想奇譚の水族館。
タチウオの話の回でした。
他にも出てきましたが覚えてません。
私には気に入りの喫茶店が何軒かある。そのうちの一つ、最も昭和に溢た古風な店内に初めて訪れた時のこと。異様な彼に出会った。
髪は白髪、ふんわりとしている。それが後ろはタラり、タラりと踝まで。前髪に至っては目が隠れる程に長い。そうして何より目を引くのは、今どき珍しい書生服であったことだろう。
彼が私に気が付く。口角がにいっと上がって、その病的なまでに白い肌で、くいっと手招きをした。どうやら私が座る席は今まさに決定されたらしい。
戸惑いながらも前の椅子に腰掛けると、何枚かの原稿用紙と一冊の文庫本。どうやら姿に違わず物書きであるらしかった。
「あの……」
「お嬢さん。此処は本の街で、その上、喫茶店天国だ。意図せずとも何がしかの文学が合致した世界があると、僕は思うんだよ」
「はぁ」
さり気なく原稿用紙に目を向けると、まっさらだった。どうやら仕事をしに来たけれど、やる気が起きず、話相手を探しているようだった。
彼は私の話には一切耳を傾けず、ただ気ままに口を動かす。
「この場所に来るとねぇ、是が非でも夢Qの『ドグラ・マグラ』が読みたくて仕方がなくなる。冒頭の文を知っているかい? ブゥゥーン……。なんだよ。まるで蝿の羽音の様な……。ふふふふ」
昭和の隠れ家をなぞった様なこの内装。くすんで汚れた壁。玉の露出した照明。そして……換気扇のブゥゥンという唸り声。
ドグラ・マグラという本は、読んだことは無いが、どのような本かは聞いた事がある。一度読めば狂気の沙汰。気が触れると……。
思わず息を飲んだ。現実と空想の境目が曖昧になって、本の世界に閉じ込められた気持ちになる。
「今度、店主にお願いをしてみようかなぁ。此処に振り子時計を置くつもりはないか? とね。そうすればきっと、僕らは逃れられない」
「私は……!!」
閉じ込められたくはない。と叫びそうになった時、一人の店員が物静かに佇んでいた。
「お嬢さん、チーズケーキはお好き?」
「……え……はい」
「珈琲は?」
「好き……です」
「では、ブレンドとチーズケーキを。僕のオススメね」
そうして揶揄う様に笑われた。いや、から揶揄われている。その事に気が付いたら、腹の底からふつふつと怒りが湧き上がって来た。何故、初対面の相手にこうも揶揄われなくてはならないのか。失礼ではないのか。
「お嬢さん、勿論今日は僕の奢りだ。沢山話し相手になってくれたしね。だが我儘をもう一つ述べさせて欲しい。ドグラ・マグラを読んでみて欲しい。僕の心情がよく理解出来るから」
そう言って持っていた文庫本を渡す。ぱらりと開くと野口が三枚、金貨が一枚。
困惑したまま顔を見ると、また不思議の国の猫のように口角を上げる。
「約束ね。僕のお古で良いなら差し上げるけど、君みたいな、お嬢さんは新品のが良いだろう?」
私の言いたい事は、全て白髪隠れ目の書生が述べたので特にはありません。
因みにこの書生、女難持ち。
故に振り回せる時には思い切り振り回すような奴。
あの街に訪れると、是が非でもドグラ・マグラを読みたくなります。
読んだ事はありませんが、冒頭文を思い浮かべます。
ほんのりと薄暗い雰囲気とか、換気扇のブゥゥンとした音とか。
振り子時計だけが欠けていて、唯一そこだけが現実であると示しているようです。
ドグラ・マグラ読了の方々は、
『褒めてるの?』と仰られそうですが、
物語の没入感を探して街を彷徨う人間なので、
『これ以上なく褒めてます』
伝われぇ!! (・ω・ ) 私の文才じゃ無理だけど(・ω・ )